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2022年08月04日  - No.28 - 4

オーナービュー会議:重要なテーマはコミュニケーション(アメリカ)[開催・運営]


 米国ジョッキークラブとサラブレッド馬主・生産者協会(TOBA)の共催による第8回サラブレッド・オーナービュー全米馬主会議(Thoroughbred OwnerView National Owners Conference)の2日目に、"パートナーシップを通じて馬主になること"と"馬主と調教師の関係"についてのパネルディスカッションの中で"コミュニケーション"が重要なテーマとして浮上した。

 サラトガ競馬場で開催されたオーナービュー会議の2日目(7月26日)は2つの"次世代"パネルディスカッション、「家族・親戚に倣って競馬ビジネスに参入した人たち」「20代の騎手」で幕を開けた。そしてサラブレッド・アフターケア同盟(Thoroughbred Aftercare Alliance)の運営コンサルタントであるステイシー・クラーク・ロジャース氏の基調講演のあと、馬主や調教師がそれぞれのビジネスプラン・実践・成功について語り、会議は幕を閉じた。

 サラブレッドを所有するレン・グリーン氏は、ニュージャージーを拠点とする金融サービス会社、グリーングループ(The Green Group)を創設している。馬主が有利な税制を利用する方法についての執筆やプレゼンを行ってきた彼は、堅実なビジネスプランの必要性を強調した。

 「競走馬を購買するということは、何かで明らかに成功した経験があるということです。それについて何も知らずに始めたわけではないでしょう?ゲームプランがなければなりません。ビジネスに意欲的に取り組み、柔軟性のある計画を立てたいものです」。

 ローズカレッジ経済学部の教授であるマーシャル・グラム氏はクレイ・サンダース氏とともに、具体的な目標を掲げてテンストライクレーシング(Ten Strike Racing)を発足させた。オークローンパーク競馬場のレースで優勝するという目標だ。

 グラム氏は、「自分の得意分野を見つけなければなりませんね。私は馬券師ですがダートの長距離戦を得意としています。だからダート馬を狙うのです。馬券を通じて馬主として最も大事なことを学びました。レースで賭けることこそが最高の学習方法なのです」と語った。

 フィリップ・シェルトン氏はテイラーメイドファームのパートナーシップ部門メダリオンレーシング(Medallion Racing)を運営しており、将来繁殖牝馬になって価値を生み出すことを考えてもっぱら牝馬を購買している。

 パネリストたちは全員、馬主やパートナーシップ部門の運営者に対してパートナーとちゃんとコミュニケーションをはかるように促した。テイスト・オブ・ヴィクトリー・ステーブル(Taste of Victory Stables)の共同オーナーで相談役のラス・サピエンツァ氏は、握手取引でビジネスを進めることに注意を喚起した。

 「3万ドル(約405万円)の小切手を切ろうとするときに握手だけで本当に大丈夫なのでしょうか?」とサピエンツァ氏は誇張して尋ね、「書面で残すようにお願いしてください。私たちはパートナーが資本投資のすべての段階について読めるように文書を送っています」と述べた。

 パネリストたちは財務的なリスクを共有して新規馬主に情報を提供するうえでのパートナーシップの重要性も強調した。

 サピエンツァ氏は、「このゲームは財務的および感情的なリスクなど、多くのリスクが伴います。パートナーシップを通じて馬主になることで、慎重に振る舞いそのようなリスクにうまく対応することを可能にします」と語った。

 オーナービュー会議はデヴィッド・ドンク調教師とバフ・ブラッドリー元調教師が参加したパネルディスカッションで幕を閉じた。彼らはエージェント(馬購買仲介者)のマレット・ファレル氏、パートナーシップ部門を運営するミシェル・ボリセノック氏およびマイケル・デヴリン氏と議論した。

" 所有馬をどの厩舎に預託するかを決めるときに調教師の統計は重要な役割を果たすのか"と聞かれ、ファレル氏は「調教師を評価するうえで統計を見ることは良い手段となりえますが、私たちは皆、馬を進化させる調教師というものを知っています。馬主はそれを認識する必要があります。そのような調教師は各馬のために個別プログラムをつくっているわけですので、統計は各馬の能力を最大限に発揮させるということほどには重要ではないのです」 と述べた。

 ボリセノック氏は、女性がサラブレッド産業について知識を深められるようにブラウンロード・レーシング(Brown Road Racing)を発足させた。彼女は「私たちにとって重要なのは経験です。勝つことはそれほど重要ではありません。知識をもたらしてくれる調教師を求めています。そしてそれを通じて生まれる情熱が最終的にウィナーズサークルに行き着くことにつながるのです」と語った。

 デヴリン氏はカラステーブル(Curragh Stables)の創設者兼経営者であり、同ステーブルにとって調教師の統計は重要であると言う。

 そして「調教師の統計は素晴らしいツールです。それに私たちは調教師の賞金の配分比率を公開してほしいです」と語った。

 ドンク調教師は、馬主は調教師を探すときに自分たちの目標を踏まえるべきだと言う。

 「所有したいのは2歳馬でしょうか?それともクレーミング競走出走馬でしょうか?どの程度のリスクを負うことができるのでしょうか?サラトガ競馬場で一番のプレッシャーと言えるのは、多くの人がウィナーズサークルに行きたがることです。中には1勝するためにかなりの金額を費やす人もいます。競馬を通じてもう少し経済的に物事を考えたり、正しい判断ができるようにならないものでしょうか?」

 ドンク調教師もブラッドリー元調教師も、馬主と調教師の関係における直接触れることができない価値を重要視していた。

 ブラッドリー氏はこう語った。「厩舎に行ってみてください。雰囲気はどのようなものか?世話をしている人はどのような待遇を受けているか?馬は馬房の前にいるのか?ぶらぶらと歩いて厩舎がどう運営されているのかを見るのです」。

 「調教師がどのように働いているのか見てください。調教師は楽しんでいるのか?やっていることに満足しているのか?毎朝4時20分に目覚ましが鳴り、5時半に厩舎に行くのが、私にとって一日で最高の瞬間なのです」。

 クラーク・ロジャース氏は基調講演で、80年代初頭から現在までのサラブレッドのアフターケアの進歩を辿り、引退競走馬がショーリング、矯正施設の職業プログラム、ホースセラピー・プログラムなどでセカンドキャリアを見つけられているという例を挙げた。

By Teresa Genaro

(1ドル=約135円)

[bloodhorse.com 2022年7月26日「Communication a Key Theme as OwnerView Conference Ends」]


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