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海外競馬ニュース
2022年08月04日  - No.28 - 3

オーナービュー会議:安全対策の実践(アメリカ)[開催・運営]


 サラブレッド・オーナービュー全米馬主会議(Thoroughbred OwnerView National Owners Conference サラトガ競馬場)の初日(7月25日)には、獣医師と競馬界の役員が過去20年のあいだに達成された"馬と騎手の安全性の進歩"について話し合った。そして、地方および全国レベルでさらなる改善を目指すことになった。

 米国ジョッキークラブのコミュニケーション担当理事であるシャノン・ルース氏が司会を務めたパネルディスカッション「安全対策の実施」では、はじめにHISA(競馬の公正確保と安全に関する統括機関)の競馬安全担当理事であるアン・マクガヴァン氏が、HISAの安全要件とルールの内容を概説した。

 その内容には、(1)獣医師リストに掲載する馬の統一基準と掲載取消請求ルール、(2)競走前検査・競走後検査の強化、(3)普遍的な馬場管理基準、(4)騎手・誘導馬の騎手・発走委員・馬場管理作業者など幅広い競馬関係者への継続的な教育などが含まれる。

 遠隔会議システムで参加したスーザン・ストーヴァー博士は、HISAが馬の怪我を減らすのにどのように貢献するかについて語った。カリフォルニア大学デーヴィス校の外科学・放射線科学の教授であるストーヴァー博士は、HISAの競馬場安全性常任委員会の議長を務め、予後不良事故の85~90%は既存の怪我と関係があることを指摘し、「致命傷を発症しやすくさせる軽微な怪我を発見できれば、予後不良事故を85〜90%の割合で防止する可能性があります」と語った。

 またストーヴァー博士は、調教師との協力を強化し、調教中やレース前後に馬の状態を観察し、馬場状態を測定することで、それは実現できると述べ、「理想的な馬場を見つけるように試みています。そうすれば馬の肢をいたわるような管理ができるでしょう」。

 グレン・コザック氏はNYRA(ニューヨーク競馬協会)の運営・投資計画担当上級副理事長としての任期のほとんどを、調教コース・ポニー用コース・ダートコース・芝コースなどNYRAの12種類の馬場の管理と記録管理を向上させることに費やしてきた。

 そして、「13年前にここに来たとき、メモ帳に記録を残していました。気温・天気・風速を書き留めていたのです。現在ここサラトガには2つの気象観測施設があり、15分ごとに風を観測しています。気温や蒸発量も記録しています。馬のために環境をモニターし、馬場管理に反映させることができるのです」と語った。

 スチュアート・ブラウン博士は2年前にキーンランド競馬場に雇用され、馬の安全性担当副理事長となった。同博士によると、キーンランドは"監視と介入に関する綿密なプログラム"を構築したという。そのプログラムには調教師との契約や、ジョッキークラブの"事故馬データベース(Equine Injury Database:EID)"の活用が含まれる。EIDは怪我のリスクファクターの潜在的兆候としてさまざまな疫学的要因を特定してきた。

 キーンランドはこのプログラムの下、本馬場に9台、調教用の人工馬場に4台のカメラを設置した。

 ブラウン博士は「これまでになかった角度や視点から馬を見られるようになりました」と述べた。

 ジェイミー・へイドン氏はグレイソン-ジョッキークラブ研究財団の理事長として、競走馬福祉・安全サミット(Welfare and Safety of the Racehorse Summit)を統括してきた。そして2006年の開始以来のプログラムの成果を詳細に述べた。その成果にはEID、騎手健康情報システム、馬場管理指導者のための年に一度の野外研修日、そして脳震盪管理のためのプロトコルが含まれる。

 ヘイドン氏は「HISAの勧告は、競走馬福祉・安全サミットからもたらされたものに根差しています」と語った。

 HISAの安全要件については競馬産業の一部から非難の声が上がっているが、コザック氏はNYRAの所有競馬場での移行は"スムーズなものだった"と述べ、「いくら取り組んでもこれで終わりということはありませんが、HISAの安全要件はこれまで私たちが行ってきたことをベースにしています」と付け加えた。

By Teresa Genaro

[bloodhorse.com 2022年7月25日「OwnerView Conference: Safety Practices」]

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