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海外競馬ニュース
2022年07月28日  - No.27 - 2

パイルドライヴァー、キングジョージで強豪たちを唖然とさせる勝利(イギリス)[その他]


7月23日(土)キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(G1 アスコット)

 パイルドライヴァー(ウィリアム・ミュア&クリス・グラシック厩舎)に勝算を見いだしていた人はほとんどいなかった。しかしミュア調教師は、この厩舎の人気者がキングジョージ6世&クイーンエリザベスSで勝つと2週間前に予言していたぐらい自信満々だった。

 パイルドライヴァー(牡5歳)は、愛ダービー(G1)、英インターナショナルS(G1)、凱旋門賞(G1)の優勝馬を含む強豪ぞろいのメンバーの中で単勝19倍の伏兵だった。しかしこれらのメンバーは、彼が2¾馬身差で勝利したときに手も足も出なかった。

 パイルドライヴァーは、昨年の凱旋門賞(ロンシャン)と同様にまたしても人気薄になっていたトルカータータッソを2着にしりぞけた。世代間の戦いとなった6頭立てのこのレースで3歳のウエストオーバーとエミリーアップジョンは5着と6着に終わった。

 優勝馬を連れて戻ってくるミュア調教師はこう語った。「この馬が勝つことは2週間前から分かっていました。調教で7ハロン(約1400m)を得意とする馬を相手に力強い走りを見せていたのです。7馬身ほど後ろを走っていたものの、追いついてぐんぐん引き離していったのです」。

 「叫びたいと思ったことなどありませんが、今日は叫んでしまいましたね。どんなメンバーかは気にしていませんでした。愛ダービーでウエストオーバーが素晴らしかったとか、エミリーアップジョンがすごいとか言われていたのは知っていますが、私たちの馬がとても優秀であることも分かっていたのです」。

 パイルドライヴァーは関係者に素晴らしい道のりを歩かせることになった。当歳のときにセリで最低価格の1万ギニー(約173万円)に到達しなかったこの馬は、ロイヤルアスコット開催で活躍し、2020年グレートヴォルティジャーS(G2)で優勝した。そして、昨年のコロネーションカップ(G1)を制しミュア調教師とグラシック調教師に初めてG1勝利をもたらした。

 それ以来、パイルドライヴァーは香港・サウジアラビア・ドバイへ彼らを連れて行ったが、今回のアスコットではP・J・マクドナルド騎手を背に新たな高みに達した。マクドナルド騎手はフランキー・デットーリ騎手がエミリーアップジョンに騎乗したことで、戦線離脱中のマーティン・ドワイヤー騎手の代役を務めることになっていた。

 「ドワイヤー騎手はパイルドライヴァー(単勝51倍)をデビュー戦(ソールズベリー)で勝利に導きました。オーナーたちには"パイルドライヴァーを走らせるときはドワイヤー騎手を乗せましょう"と言い、そうしてきました。その後、ニューベリーのレースで騎乗させたのですが、古くからの友人マット・チャップマンが、調子が良くなかったと言うのです。それでもパイルドライヴァーを大外のゲートだったにもかかわらず何とか4着に入れました」。

 「その後、彼はP・J・マクドナルド騎手を背にアセンダントS(L)で勝利しました。今回のキングジョージでも勝ったので、マクドナルド騎手とのコンビだと勝率100%です。しかし、どのように騎乗すれば良いのかP・Jに正確に伝えてくれたドワイヤー騎手には気の毒に思っています」。

 「それ以降、素晴らしい道のりを歩んできました。パイルドライヴァーについて信頼を失ったことはありません。最高峰のレースの1つを制したばかりですしね」。

 ミュア調教師にとってこの勝利はどのような意味を持つのだろうか。「開業して間もない頃は、アスコットのある5ハロン(約1000m)のレースで優勝して、駐車場ではしゃいでパーティーをしていました」。

 「パイルドライヴァーがキングエドワード7世S(G2)を制したとき、あまりにも長いあいだ駐車場にいたので、パイルドライヴァーを調教するために毎朝厩舎に帰らなければならなかったぐらいです。お酒を飲みませんし、これからも飲むつもりはありませんが、今回も大きなパーティーが開かれるでしょうね。決定的瞬間だったのですから」。

 たしかにマクドナルド騎手にとっては大きな出来事だった。このG1競走が近づくにつれて騎乗予定騎手が目まぐるしく変わったことで大きな恩恵を受けたのである。多くの騎手が騎乗馬を獲得したいと思う中で、パイルドライヴァーはマクドナルド騎手に託されたのだ。

 ドワイヤー騎手は調教で不慮の事故に遭い、膝の靭帯を損傷して手術を受け、その後は騎乗していない。こうしてドワイヤー騎手の扉は閉ざされてしまった一方で、マクドナルド騎手の扉は開かれたのである。マクドナルド騎手は負傷した仲間にすぐに賛辞を送った。

 「マーティンには気の毒に思います。このような馬を手に入れるのはとても難しく、彼がどんなにつらい思いをしているかは分かっています。彼はとても紳士で私をサポートしてくれています。この1週間、彼にはとても助けてもらいました。彼が戻ってきたときのために、パイルドライヴァーを良い状態にしておくつもりです」。

 「毎日一生懸命働いてきましたが、こんな日が来るとは思っていませんでした。運が良かったのです。仲間が不運な目に遭って代役を務めることになりましたが、この機会に感謝しています」。

 「彼はスムーズにレースを進め、最後の直線に向いたときには、よほどのことがなければ負かされないことが分かっていました」。

 「信じられませんでした。最後の1ハロンは"ほかの馬はどこにいるんだ?"と考えていたぐらいです。早くゴールに到達するように願っていて、先頭をよれながらも走り続けているうちに入線できたのはありがたかったです」。

 「今日電話でマーティンがどれほど自信満々だったか信じられないことと思います。私たちにはゲームプランがあって、すべてがうまくいったのです」。

 マクドナルド騎手にとってこれはG1・5勝目である。スコティッシュグランドナショナルでも優勝経験があるという珍しい経歴の持ち主だ。彼は「G1を勝つのはこれで最後になるかもしれません。一瞬一瞬を大切に楽しみたいですね」と付言した。

 馬主の1人ロジャー・デヴリン氏は、「こうなればパイルドライヴァーが凱旋門賞に行くことを考えざるをえませんね」と示唆した。ベットフェア社によると、凱旋門賞でのパイルドライヴァーのオッズは67倍から17倍に引き下げられている。

By Jonathan Harding

(1ポンド=約165円)

[Racing Post 2022年7月23日「'I knew he was going to win' - Pyledriver stuns fancied rivals in King George」]

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