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2022年07月21日  - No.26 - 2

名手ウィリー・カーソン氏、新しい鞭使用ルールについて語る(イギリス)[開催・運営]


 バックハンド(順手)でしか鞭を使わずに輝かしいキャリアを築いたウィリー・カーソン元騎手は、7月12日(火)に発表された鞭使用ルール検討に関する提言を称賛している。

 英ダービーを4勝し、30年以上の騎手生活においてリーディングジョッキーに5度輝いたカーソン氏は自らのライディングスタイルについて、鞭よりも体の重心のかけ方や手綱で馬を奮起させることを重要視してきたと語った。

 これは、鞭使用諮問委員会(Whip Consultation Steering Group)が7月12日(火)にフォアハンド(逆手)での鞭使用を禁止するよう提言したというニュースを受けてのコメントである。この提言は秋に競馬施行規程に取り入れられるようだ。

 カーソン氏はこう語った。「私の場合はライディングスタイルを変える必要はまったくなかったでしょう。30年前まで騎手でしたが、このルールの範囲内で騎乗していたと思います」。

 「馬の全能力を引き出すには鞭ではだめだと気づいて以降は自然な流れでした。いつもバックハンド(順手)で鞭を使っていましたが、それはストライドを伸ばすためでした。馬をより速く走らせるために圧力をかけるものとして使っていたのです」。

 「鞭よりも自らのライディングスタイルを駆使していましたね。体全体を使いながら馬の頭を押さえて、広いストライドを使わせたり、前進させたり、頭を低く下げさせたりするように、できるかぎりのことをやりました」。

 「馬を連打するために鞭を使ったことは一切なかったでしょう。一度も鞭を使わなかったことだって結構ありましたね。だから、新しいルールの範囲内で鞭を使用していたと言えるでしょう」。

 今回の鞭使用の検討では、制裁の1つとして初めて馬の失格を含むなど多くの提言がなされた。ショーン・リーヴィ騎手やミック・フィッツジェラルド騎手などは新しいルールに騎手が適応するには時間がかかると注意喚起したが、カーソン氏と同様に前向きな措置が取られたと考えている。

 鞭使用を検討するうえで、バックハンド(順手)のほうが"過剰な力"で鞭を入れられる可能性が少なく、レース観戦者に対しても目立ちにくいと判断された。

 また、鞭使用が制限回数(平地7回、障害8回)を4回以上超えると騎乗馬は失格となる。カーソン氏はこれも良い決定だと考えている。

 ナシュワン・ダンファームリン・デイジュールなどの名馬に騎乗してきたカーソン氏はこう続けた。「騎手たちにはプレッシャーがかかりますが、何らかの抑止力が必要ですね。彼らが頭の中で1~7回あるいは1~8回をきちんと数えられると思いますし」。

 「基本的に今回出された提言に賛成しています。一時は心配だったのですが、私にとっては常識的なことです。新しい鞭使用ルールは騎手が対応できるような範囲に収まっています。ただ今の基準に比べて度を超すようなものに変更していくことは支持したくありませんね」。

キーレン・ファロン元騎手も騎乗馬の失格という制裁に賛成

 伝説のジョッキー、キーレン・ファロン氏は、フォアハンド(逆手)で鞭を使ったのが安全確保のためなのか馬を奮起させるためなのかを裁決委員がどのように区別するかについて懸念を示した。

 フォアハンド(逆手)で鞭を使ったと見なされた場合、たとえ1回でも騎手には最低でも7日間の騎乗停止処分が科される。しかし報告書では"安全目的"でフォアハンドが使われることもあると明記されており、取締りが複雑になる可能性が示唆されている。

 クラシック競走を16勝したファロン元騎手はこう語った。「バックハンド(順手)しか認められないという新しい鞭使用ルールにより、ライディングスタイルを変えなければならない騎手もいるでしょうね。ぎこちないものになりそうです。早めに慣れることが必要となるでしょう」。

 「馬が鞭で打たれているのを見たい人などいないので、ある意味良いことだと思います。しかし結局のところ、"安全を確保すること"と"馬を奮起させること"のあいだの解釈になります。安全のためなのかそうではないのか、その判断は難しいところです」。

 それでもファロン氏は、馬の失格という制裁は分かりやすいと考えており、今回の検討のこの点についてはカーソン氏と同様に満足している。

 現役時代に2,200勝以上を挙げたファロン氏はこう続けた。「これは良い措置であり、どの騎手も自らの立場を認識するでしょう。鞭の使用回数が制限を超えていながらレース結果がそのままならば、後味の悪いこともあります」。

 「制限回数を4回以上超過すれば負けてしまうことを認識していれば、騎手はそのような違反を犯すことはないでしょう。そういうシンプルで白黒はっきりしたルールが望まれていたのです」。

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By James Stevens

 (関連記事)海外競馬情報 2022年No.7「鞭使用ルール変更で今後はバックハンド(順手)のみを許可(イギリス)

[Racing Post 2022年7月13日「'I was dreading it but it's common sense' - Willie Carson on the new whip rules」]


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