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2022年07月14日  - No.25 - 2

ブリーダーズカップ協会、海外からの遠征馬の輸送と検疫に備える(アメリカ)[開催・運営]


 規制や移動の面でわずかに不便はあるものの、キーンランド競馬場(ケンタッキー州レキシントン)を舞台とするブリーダーズカップ開催(11月4日・5日)の輸送と検疫の準備は順調に進んでいる。関係者たちは混乱はないだろうと述べている。

  "アーリントン競馬場の閉場がシカゴを経由した輸送や検疫に影響を及ぼすのではないか"と考える人もいた。またHISA(競馬の公正確保と安全に関する統括機関)が発布した新しい安全ルールが7月に施行されたことをうけ、海外からの遠征馬をニューヨークへ初めて輸送するのにあたり、当初いくらか混乱があった。

 しかしブリーダーズカップ協会(BCL)の役員によると、海外からの遠征馬のほとんどは直接ケンタッキー州に空輸され、ルイビル・モハメドアリ国際空港に着陸して、キーンランド競馬場内の臨時検疫施設に直行するという。

 アーリントン地区を担当するIRT(国際馬匹輸送商社)の社長であるマット・ハウグ氏は、「IRTは近くに新しい施設が設置されるまでそこで業務を継続し、サービスを中断することはありません」と述べている。アーリントンを経由するブリーダーズカップ出走馬は、日本からの遠征馬だけになりそうだという。

 また、7月9日のベルモントダービー招待S(芝G1)とベルモントオークス招待S(芝G1)の数日前にHISAに関する懸念があったが、すぐに対処されたとも伝えられている。

 BCLの副社長兼最高競走責任者であるドラ・デルガド氏はこう語った。「海外からの遠征馬がブリーダーズカップ開催に参戦するにあたり、何よりも複雑で費用と時間がかかるのが輸送と検疫です。BCLは通常、こうした問題の大半に対応するために手はずを整えています」。

 「BCLはどの開催場でも6つの輸送経路に対応するために臨時検疫施設を設置しています。それゆえ、遠征馬は検疫後すぐに調教に励むことができます。馬を最高の状態に保つためには、実際に馬を競馬場に連れていき、そこで検疫を済ませて滞在させ、すぐに調教ができる状態にしておくことが一番だと、私たちはずっと前から確信しておりました」。

 「キーンランドでは、ライスロードにある3つの厩舎棟をUSDA(米国農務省)仕様に改造します」。

 デルガド氏は、「施設に対するUSDAの要件があるので、簡単な作業にはなりません」と付け加える。その要件の中には、地下水汚染を防ぐために検疫中の馬をコンクリートの上にとどめておくべきであるという"強い希望"があるのだ。

 デルガド氏によると、どの開催場もそのような要件に基づいて厩舎棟を建て替えることを望まなかったので、BCLは通常の敷き藁の下に防水バリアを設置するという妥協案を交渉したという。ライスロードの厩舎棟には、ハエや鳥など潜在的な病気の媒介動物によるクロスコンタミネーション(交差汚染)を防ぐために二重遮蔽やエアロックも取り付けられる予定である。

 デルガド氏は、欧州からの遠征馬のほとんどはルイビルに着陸して、すぐに馬運車でレキシントンに向かうだろうと述べた。

 「フランス・アイルランド・英国からの遠征馬を乗せるために、とにかく欧州からチャーター便を出してもらうようにしています。なぜなら、個々に輸送を予約してもらうと15の検疫班が必要になってしまうからです。なるべく皆に揃ってもらうようにしてもらわないといけません」。

 「通常、バリードイル(クールモアの調教拠点)の馬は専用の飛行機で輸送されます。ゴドルフィンもそうです。日本馬はそれに慣れているということが主な理由で、おそらくシカゴ経由で移動することになるでしょうね。シカゴから移動してくるときには、すでに検疫を終えています」。

 IRTのハウグ氏によると、BCLが手配するようなチャーター便を除いて、国際的な馬輸送はこの数年難しくなっているという。同氏は今年の日本からの遠征馬には対応できるが、スケジュールは流動的だと考えている。

 「どのようなルートが利用可能か、またキーンランドにどれだけ近づけられるかにかかっています。シカゴは日本の関係者にとってとても重要な場所なのです」。

 「以前にも増して難しくなっています。なぜなら航空便はとても高額であり、これほど需要が高まると、行き先を替えるために他の路線を通常のルートから外して確保するのはとても困難なのです」。

 ハウグ氏によると、チャーチルダウンズ競馬場(ケンタッキー州ルイビル)の検疫施設はUSDAから常設施設として認められており、キーンランドに移動する前の馬に検疫を受けさせるのに使用できるかもしれないという。

 チャーチルダウンズ競馬場の役員は、ブリーダーズカップへの出走馬の受け入れや、同競馬場で開催される"アーリントンミリオンデー(8月13日)"への海外馬参戦の可能性について質問に答えなかった。

 HISAのルールは各州の競馬統括機関のルールに上乗せされるものであるため、規制のハードルはさらに複雑になっている。その中で問題となっているのはHISAの登録であり、通常それは州の免許と連動している。ニューヨーク州に遠征してくる欧州の競馬関係者には免許が付与されていないため、HISAの関係者はベルモントパークで馬を出走させることや馬に騎乗することの許可を彼らに与えるタイミングを遅らせることとなったと伝えられている。

By Bob Kieckhefer

[bloodhorse.com 2022年7月11日「Breeders' Cup Makes Plans for Travel, Quarantine, HISA」]


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