馬からの高濃度のヒ素検出は海藻が原因か?(イギリス)[その他]
リチャード・ハノン調教師は5月24日(火)、管理馬オーパープルレインから高濃度のヒ素が検出されたことについて、制裁を受けるのは不当であると懲戒委員会を説得しようとした。この馬は2019年タタソールズS(G3 ニューマーケット)で6頭立ての6着だった。8時間にわたる審問の中心は"海藻"だった。BHA(英国競馬統括機構)はハノン厩舎で行われてきた"1日3回すべての馬に海藻を与える"という長年の習慣が閾値を越えるヒ素検出の背景にあったと主張している。
その習慣は今では中止されているが、海藻が原因となったのかどうかについて科学的反論があった。ハノン調教師が専門家証人として呼んだ獣医師のデヴィッド・レンドル氏が「あのような結果が出たことは明らかですが、どういう経緯なのか分かりません。また海藻だけでは、どう説明できるのか分かりません」と述べたのだ。
ハノン調教師は閾値を越えるリスクがあることを警告されていたとBHAは述べた。というのも、当時BHAの馬健康担当理事だったデヴィッド・サイクス氏が、ハノン厩舎(ウィルトシャー)からの数頭の出走馬が競走当日の検査でヒ素濃度が上昇していたことを電話で知らせていたからだ。彼らは、その原因が飼葉として与えている海藻にあるかもしれないと話していた。
ハノン調教師は審査員団に証言する際に、そのときの会話を"他愛もないおしゃべり"として振り返り、「海藻を飼葉に入れてからすでに40年ほどが経っていたので、メニューを変える理由はないと考えたのです」と語った。
そしてサイクス氏に言われたことを思い出しながら、「1頭は閾値ぎりぎりでしたが、最終的に閾値を越えなかったのです」と述べた。
「三代にわたって調教師をやっていますが、管理馬から閾値を越えるような禁止薬物が検出されたことはありません。30年間で一度もないのに、なぜうろたえなければならないのでしょう?すべての馬が閾値を下回っており注意深く管理していけば良いと、サイクス氏は明言しました。私たちはそうすることを心がけてきました。1頭だって閾値を越えてしまうなどと考える理由がなかったのです」。
審査員団ではBHAが2019年1月にヒ素検査を始めたばかりだったことが説明されたが、サイクス氏はそれ以前にはそのような検査を実施する技術がなかったことを示唆した。ハノン厩舎で海藻の使用を中止した時期については証拠が曖昧だが、少なくとも2019年11月には量が減らされていたようだ。以来、検査でハノン厩舎の馬から高濃度のヒ素は検出されなくなったという。
BHAはそれを高濃度のヒ素が検出されていた原因が海藻にあることを示す強力な証拠として見なしている。そしてハノン調教師はサイクス氏の介入に直ちに対応すべきだったと主張する。しかしレンドル氏は、この問題は多くの要素から生じたものであり海藻だけが原因ではないかもしれないと述べている。
「BHAの主張する意味はよく分かりますが、必ずしも同意するものではありません。時間的な関連性と状況証拠はあります。しかしそれだけでは証明できません。私の見解では科学的な厳密さに欠けます」。
審問は24日(火)に終了する予定だったが、科学的証拠が不十分であるとする反論により長引くことになった。今後、最終的な裁定を下す日程を決定しなければならない。
By Chris Cook
[Racing Post 2022年5月24日「BHA wrong to blame me for arsenic test as seaweed puzzles experts - Hannon」]