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2022年06月02日  - No.19 - 2

オブライエン調教師、凱旋門賞での禁止薬物混入問題で訴訟を準備(アイルランド)[その他]


 クールモアと調教拠点バリードイルの関係者10名は5月24日(火)、2020年凱旋門賞ウィークエンドに生じた飼料への禁止薬物混入問題をめぐり飼料供給業者グランビア・フーズ・アイルランド社(以下グランビア社)を訴える手続きを始めた。エイダン&ドナカ・オブライエン両調教師もこの原告団に含まれている。

 グランビア社が所有する飼料会社ゲイン・エクワイン・ニュートリション社(以下ゲイン社)は2020年10月2日(金)、フランスで5頭(いずれもオブライエン親子の管理馬ではない)がジルパテロール(Zilpaterol)の陽性反応を示したことを受け、調教師たちに向けて自社製品を馬に与えないように忠告する声明を出した。

 ジルパテロールは欧州では無認可だが、米国などほかの地域では牛の体重増加を促進するために使用されている。

 オブライエン一家はゲイン社からのこの声明を受け、ただちに飼料供給業者を変更した。そして最終的に、2020年10月4日(日)の凱旋門賞開催日(パリロンシャン)に出走する予定だった11頭を取消とした。その中には凱旋門賞(G1)への出走予定馬4頭が含まれていた。出走取消となった11頭の中にはオブライエン一家の長男ジョセフ氏の管理馬2頭がいたが、彼は原告団に含まれていないようだ。

 エイダン・オブライエン調教師が手掛けていたモーグル、ジャパン、ソヴリン、サーペンタインは総賞金300万ユーロのビッグレースから姿を消した。なお、英ダービー優勝馬サーペンタインは追加登録料7万2,000ユーロ(約972万円)を支払っての挑戦だった。

 オブライエン一家が送り出した出走馬が競馬場でジルパテロールの陽性反応を示したことはなかったが、エイダン・オブライエン調教師が直接フランスの競馬研究所(LCH)に検体を送ったところ、そのすべてからジルパテロールの陽性反応が出た。後に、アイルランド競馬監理委員会(IHRB)やBHA(英国競馬統括機構)が使用するLGC研究所(ニューマーケット)がLCHのような高感度の検査を行っていないことが判明することになる。

 この陽性反応を受けて、オブライエン調教師とその息子たちは2020年凱旋門賞開催日の出走予定馬11頭をすべて取消とした。そして5月24日(火)、クールモアとバリードイルの関係者10名がグランビア社に対して正式な法的手続きを開始した。

 ジルパテロールの混入はゲイン社の原材料の1つである糖蜜に起因しており、それはED&Fリキッドプロダクツ社(以下ED&F社)により供給されていた。それゆえ、グランビア社は3月にED&F社に対して法的措置を取ったと報じられている。

 グランビア社はこの問題で900万ユーロ(約12億1,500万円)の損失を被ったと主張している。アイリッシュタイムズ紙によると、ED&F社に対する訴えをグランビア社が高等法院の商事法廷に提出することに、ED&F社は異議を唱えなかったという。

By Richard Forristal

(1ユーロ=約135円)

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[Racing Post 2022年5月26日「O'Briens and Coolmore sue over 2020 Arc weekend feed contamination drama」]


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