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2022年04月07日  - No.13 - 3

いじめ行為を行った騎手、不服申し立てにより騎乗停止期間が短縮(イギリス)[その他]


 ロビー・ダン騎手はブライオニー・フロスト騎手に対していじめとハラスメント行為を行っていたことで、18ヵ月間の騎乗停止処分を科されていた。上訴委員会は彼の行動を"非難すべき、恥ずべきもの"と評したにもかかわらず、騎乗停止期間を10ヵ月間に短縮した。

 昨年12月、ダン騎手には有罪が言い渡された。彼は2020年2月から9月にかけて、インターネット上・コース上・検量室でフロスト騎手に対して一連のいじめやハラスメント行為を行い、2020年9月3日にサウスウェル競馬場でのレース後に「お前をフェンス(障害)の脇にぶち込んでやる」と断言したときにはそれらの行為は限度を超えていた。

 競馬の高潔さ・適正な実施・高い評価を害する行為について有罪と裁定されたことに対する不服申し立ては大筋で棄却された。しかし議長のアンソニー・ボスウッド弁護士は、 "懲戒委員会が制裁の軽減項目を正当に評価しなかった"と上訴委員会は考えていると述べた。軽減項目には、2020年7月にストラトフォード競馬場でダン騎手がフロスト騎手と口論したあとにバンガー競馬場で試みた謝罪が含まれる。ダン騎手はその口論で相手に"あばずれ(f****** slut)"と言ったとされている。

 また上訴委員会は、ダン騎手は懲戒委員会で取りざたされたように複数のルールに違反したのではなく、ルール(J)19条の1つだけに違反したことで有罪と裁定されたと指摘した。そして、12月に科された処分は"厳しいもの"だったと述べた。

 ボスウッド弁護士はこう語った。「ダン氏の行動は非難すべきであり恥ずべきものであると考えており、今後そのような行動を取る騎手は重大な制裁を受けることを覚悟しなければならないという点は明確にしたいと願っています」。

 「ただダン氏がキャリアの晩期において、これまで相当数の騎乗を失いこれからも失うことを考えると、最初の制裁は厳しいものだと考えます」。

 「また、懲戒委員会が制裁の軽減項目を十分に評価しなかった可能性があるとも考えます。ストラトフォード競馬場でのレースのあとにブライオニー・フロスト氏に謝罪しようとしたことや、フロスト氏の父親と話したリチャード・ジョンソン騎手に便宜を図ってもらい、ケンプトン競馬場で"仲直りに向けた話合い"に参加しようとしていたことが挙げられます」。

 「私たちは騎乗停止期間を10ヵ月間に短縮することに決定しました。その結果、ダン氏への制裁は2022年10月9日に終了します。詰まるところ10ヵ月間の騎乗停止処分を適用することになります」。

 BHA(英国競馬統括機構)がこの決定への反対意見を述べるあいだ、ボスウッド弁護士はBHAの代表であるルイス・ウェストン氏に対し、当初の18ヵ月間の騎乗停止処分(執行猶予3ヵ月間)について質問し、「とても厳しいとは思いませんか?18ヵ月間ですよ」と述べた。

 ボスウッド弁護士は、ダン騎手が調査期間中の自身の行動をほとんど後悔しなかった、もしくは全く後悔しなかったというBHAの見解についても疑問を呈した。そしてダン騎手のバンガー競馬場での謝罪の試みと、ケンプトン競馬場で和解することを望んだが実現しなかったことを引き合いに出した。

 同弁護士はこう語った。「犯していないと言っている罪に関して、後悔や改悛の念を示さないことは理不尽でしょうか?彼はバンガーで謝罪しようとしましたが、その謝罪は受け入れられませんでした。フロスト氏が謝罪を受け入れなかったことを批判しているのではありません。ただ彼は謝罪を試みたのですから、制裁を軽減することを考えられるように思います」。

 ダン騎手を担当するロビン・マシュー弁護士は、2020年2月~9月に2人の騎手の周りにいた騎手やバレットの証言を懲戒委員会が十分に重視しないため、最初の裁定は誤りを犯しているという点を公にしようとしてきた。

 「ここにいるのは、懲戒委員会が判断したような危害を及ぼす脅威があったのかどうかを自らの知識と経験を通じて完全に判断できる人々です」。

 「危害を受ける真の脅威がなければならないのです。私たちがこの案件に見出すような、傷つけられ動揺した上での怒りや憤りではないのです。バレットたちは彼らの様子を見ていて、サウスウェルでは動揺や怒りは収まるだろうと考えていたのだと、私は思います。"検量室の文化"という文脈を排除するのはまったく間違っています」。

 BHAの代表であるウェストン氏は、"女性蔑視の言葉づかい"が競馬の評判をどれほど害してきたかを説明し、ダン騎手の弁護団が"フロスト騎手はすぐに感情に流される"との主張を最初の審問以来繰り返し同騎手も "被害者叩き"に与してきたと強調した。

 そしてこう語った。「この件でフロスト氏が何らかの形で非難されるべきであると上訴した者が言うのは間違っています。彼女がすぐに感情に流される女性だと言うことには、何の根拠もありません。いじめの被害者がどう反応すべきかは、いじめを行う者が決めることではありません」。

 「上訴した者は、適用すべき制裁は自己規制によるものだと言いたいのでしょうが、BHAの見解ではそれは決して正しいことではないと考えます。現在の行動基準を採用することに問題があるなどというのは全く間違っています。そのような代替案は現在の行動基準からかけ離れたものです」。

 騎乗停止期間の短縮により、ダン騎手は今年の10月9日からレースでの騎乗を再開できるようになった。12月に言い渡された制裁では、騎乗再開は2023年3月9日とされていた。

 BHAは審問終了後の声明でこう述べている。「この制裁の軽減は、ダン氏に対して掛けられた嫌疑の深刻さに対する認識を弱めるものでは決してありません。実際、このような性質の行為は競馬界のいかなる職場環境においても容認できないという明確なメッセージを送り続けています」。

 ダン氏、法定代理人、騎手協会(PJA)はいずれも、コメントの求めには応じなかった。

By Peter Scargill

 (関連記事)海外競馬ニュース 2021年No.47「検量室でいじめ行為を行った騎手に18ヵ月間の騎乗停止処分(イギリス)

[Racing Post 2022年3月30日「Robbie Dunne ban for bullying Bryony Frost reduced to ten months on appeal」]

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