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2021年02月25日  - No.7 - 1

ミシュリフがシャーラタンを下してサウジカップ優勝(サウジアラビア)[その他]


 サウジカップデー(2月20日 リヤド・キングアブドゥルアジーズ競馬場)において、米国の有力馬3頭は2着に甘んじ、日本馬は2勝を達成した。そしてメインレースのサウジカップでは、英国人トレーナーと21歳の赤毛のアイルランド人ジョッキーの努力のおかげで優勝トロフィーは地元にとどまった。

 おそらく気候も味方したのだろう。総賞金2,000万ドル(約21億円)のサウジカップにおいて、サウジアラビアのファイサル殿下所有のミシュリフは終盤で1番人気のシャーラタンに圧力をかけ続けて消耗させ、1馬身差の勝利を収めた。

 優勝馬の陣営は、サウジアラビアジョッキークラブの国際化への取組みにふさわしく国際色豊かである。ミシュリフは英国のニューマーケットを拠点とするジョン・ゴスデン調教師に管理され、鞍上はアイルランドのカラ競馬場を拠点とするデヴィッド・イーガン騎手が務めた。

 キングアブドゥルアジーズ競馬場の気候もサウジらしからぬものだった。気温は肌寒く、ビッグレースの数時間前には珍しく雨が降った。ゴスデン調教師がニューマーケットの厳しい冬の気候の中で仕上げたミシュリフにとっては、この気候は気持ちを落ち着かせるのに役立ったかもしれない。

 英国のゴスデン調教師は競走後のリモートインタビューに、「こちらはとても雪深かったので、それがおそらく勝利の秘訣です」と微笑みながら答えた。

 レースのコンディションがどれほど有利に働いたとしても、ミシュリフは目前の課題に取り組む心構えができていた。昨年のサウジダービーではひどい発走になってしまったにもかかわらず、優勝した日本馬フルフラットに2¼馬身差の2着を確保していた。その後、欧州においてとりわけ注目された仏ダービー(G1 ジョッケークリュブ賞 シャンティイ)での優勝を含む3連勝を達成した。

 しかし10月の重い芝で施行された英チャンピオンS(G1 アスコット)で精彩を欠く8着となってからは出走していなかった。

 サウジカップ(1800m)は主に、2頭の米国馬がペースを作った。2頭は他馬よりも先行して向こう正面を進み、コーナーに差し掛かって行った。驚くべきところがあるとすれば、マイク・スミス騎手がマリブS(G1)優勝馬シャーラタンを5連勝を狙うニックスゴーと一緒に先頭に立たせたことだろう。

 一方ミシュリフは外側の枠から鮮やかに発走し、3番手を確保した。

 最後の直線の半ばで、ニックスゴーが脚をなくしていることは明らかだったが、シャーラタンはスミス騎手を背にどんどん進んで行った。そのときイーガン騎手がミシュリフをその外側に出るように促した。2頭は最後の100ヤードで競り合ったが、ミシュリフが抜け出して1馬身差の勝利を決めた。地元調教馬グレートスコット(Great Scot)はシャーラタンよりも6½馬身後ろの3着に入線した。

 ニックスゴーが勢いを失い4着となったことは、韓国の馬主とエクリプス賞の最優秀調教師に選ばれたブラッド・コックス調教師をがっかりさせた。それでも、他の米国馬の戦いぶりは不名誉なものではなかった。14頭立てのレースでスリーピーアイトッドは5着、タシトゥスは7着に入った。

 イーガン騎手はこう語った。「ミシュリフはうまく発走しました。おそらくこれまでで一番良かったでしょう。最初の50ヤードは圧力をかけていきました。実は彼の走りっぷりに驚いていました。スミス騎手のシャーラタンの後ろにつけました。ただついて行くだけで良かったのです」。

 「コーナーを回ってカーブの頂点に差し掛かったあたりで、不安のようなものを感じました。全体のスピードが上がってきて、うまくミシュリフをスムーズなペースに戻せるか心配だったのです。しかし直線に入ってからは、ミシュリフは他馬を撃退するだろうと確信を持っていました」。

 ミシュリフの勝ち時計は1分49秒59となった。

 スミス騎手はナイターではシャーラタンの武器であるスピードが持続しないのではないかと心配していた。

 昨年に続きサウジカップで2着となったスミス騎手はこう語った。「シャーラタンは最近レースを軽く1回走っただけだったので、今日の馬場がどのように作用しているかを見ていて"彼のスピードは持続しないのではないか"と少し心配していました。約8ヵ月のブランクを経て走ったそのレースは7ハロン(約1400m)でした。彼は本当に消耗してしまいました。休み明けに2戦していれば勝っていただろうと思います」。

 カリフォルニアでサウジカップを見ていたボブ・バファート調教師は、シャーラタンのレースぶりを誇らしく思っていると述べた。

 「最後の直線に向けてコーナーを回っているときに、2頭は序盤をすごく速く走ってきたと分かっていました。シャーラタンはスピードのある馬ですが、あのような長い直線ではねぇ。米国にあのような長い直線の競馬場がなくて良かったです」。

 この長い直線は、現地にいたわずかな観客に喜ばしい地元勝利をもたらした。

 イーガン騎手はこう語った。「ミシュリフが昨シーズンに活躍したことで、サウジに戻ってくることはしっかり話し合われていたと思います。欧州であれほど素晴らしいシーズンを送ったのですから。それにファイサル殿下はサウジを拠点としています。今回のレースへの参加は迷う事ではなかったでしょう」。

 ニューマーケットからズームに参加したゴスデン調教師は、ファイサル殿下がサウジカップでミシュリフを再びサウジに連れて来ることに熱心だったという話を認め、そしてミシュリフはどこでも出走できる権利を手に入れていると述べた。

 「このクラスの馬でバファート調教師と対戦するときはいつも、勝利を上げられた際の感激はひとしおです」。

 それでも、ゴスデン調教師はミシュリフの今シーズンの計画についてのコメントを控えた。その計画には、ドバイワールドカップ(G1 3月27日)への遠征が含まれているかもしれない。

 ゴスデン調教師は1¼マイル(約2000m)以上のレースにミシュリフを出走させる見込みについてこう語った。「彼は持ちこたえると思います。実際、彼は最終的に2頭を撃退しました。なぜなら速いペースについていき、最後まで追跡できたからです。激しく走った9ハロン(約1800m)のレースでした」。

 「全員で決定を下すことになりそうです。レース後のミシュリフの状態を見て、計画を練り、ファイサル殿下とあらゆることについて話し合い、一歩を踏み出します」。

 イーガン騎手はこう語った。「ミシュリフは、米国・日本・UAEなど世界中から集まったトップクラスの馬と対戦しました。優秀な馬である上に、心身ともに成熟した馬であることを証明しました」。

 アイルランド産のミシュリフは、父はG1・2勝馬メイクビリーヴ、祖父はマクフィ(父ドバウィ)である。母は、ファイサル殿下が所有し通算成績9戦1勝のコントラディクト(Contradict 父レイヴンズパス)である。

 シャーラタンは昨年、アーカンソーダービー(G1)で1位入線したものの失格となっているが、わずか4戦目のこのレースで初めての敗北を喫した。サウジダービーでコワン(Cowan)、ネオムターフカップでチャンネルメーカーが2着となっており、シャーラタンも同じ2着に甘んじた。

 サウジカップデーは日本勢にとって素晴らしいものとなった。サウジダービーではピンクカメハメハが最後に追い上げてきたコワンを退けて番狂わせを演じた。また、リヤドダートスプリントでは日本馬がワンツーフィニッシュを決めた。2年連続で最後の直線で他馬を大きく引き離して先頭に立っていたマテラスカイを、追い込んできたコパノキッキングがゴール直前でとらえたのだ。

 サウジカップデーは新型コロナウイルス感染防止対策のため、限られた観客数で実施された。米国のジョン・ベラスケス騎手とウンベルト・リスポリ騎手がリヤドに渡航することができず、感染予防措置は騎乗予定も狂わせた。

 一方、ホリー・ドイル騎手がトゥルーセルフ(True Self)でネオムターフカップを制したことで、サウジアラビアジョッキークラブが提唱する"女性の地位向上"を促進した。

By Bob Kieckhefer

(1ドル=約105円)

[bloodhorse.com 2021年2月20日「Mishriff Upsets Charlatan in Saudi Cup」]

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