TOPページ > 海外競馬ニュース > IHRBのドーピング防止体制が高い評価を受ける(アイルランド)[開催・運営]
海外競馬ニュース
2021年11月18日  - No.43 - 3

IHRBのドーピング防止体制が高い評価を受ける(アイルランド)[開催・運営]


 アイルランド競馬監理委員会(IHRB)は、国民議会の農業委員会の"競馬のドーピング防止と規制プロセス"に関する報告書について検討することを約束している。しかし11月9日に発表されたこの報告書では、IHRBのドーピング防止体制はかなり高い評価を受けていた。

 農業委員会の報告書(全34頁)では、薬物検査・規制の透明性・馬のトレーサビリティを強化するよう勧告されていることが目を引く。

 しかし農業委員会のジャッキー・ケーヒル委員長は、IHRBのドーピング防止の手順は"可能なかぎり高い国際基準である"と主張した。過去一年にわたってIHRBが一部の関係者や解説者から持続的な批判を浴びていたことを考えると、これはIHRBへの頼もしい信任投票となった。

 この報告書は、農業委員会が夏に実施した一連のヒアリングを経て発表された。そのきっかけとなったのは、ジム・ボルジャー調教師が薬物の不正使用を懸念して行ったコメントだった。

 ボルジャー調教師はアイルランド競馬界に"ランス・アームストロング(ドーピングの発覚によって自転車競技からの永久追放処分を受けた元ロードレース選手)"が現れるだろうと述べ、違法ドーピングが競馬界の一番の問題であると指摘していた。

 農業委員会の報告書はこういった見解を支持するものではなかったが、多数の勧告を行っている。

 国の予算から今年940万ユーロ(約12億2,200万円)を受け取ったIHRBは"閉鎖的である"という見方が、ヒアリングのあいだに複数の発言者から示された。

 農業委員会は報告書の中でこの点を重視し、「IHRBのガバナンスにおいて完全な透明性を確実なものとすることを目指し、IHRBを省庁の庇護下にある準政府機関として分類しなおすために法律を変更すべきかどうかを検討する必要がある」と結論づけた。

 このような動きが実現すれば、IHRBの構造は大きく変わることになる。そしてIHRBは、包括的な見直しが行われている情報自由法の適用を受けることが確実になる。

 また、農業委員会は"IHRB理事会の構成を見直し、独立メンバーの不足とジェンダーバランスの欠如を検討すること"を勧告しており、この点においてはすでに対策が講じられていると考えられる。

 11月9日の報告書発表に先立ち、IHRBの検査体制についての独立監査が広く注目された。それはボルジャー調教師のコメントを受けて損なわれた国民の信頼を回復するためだった。この見直しは、ニューサウスウェールズ州(豪州)の元最高獣医責任者であるクレイグ・スアン氏により主導されたと伝えられている。

 報告書のドーピング防止関連の勧告の1つで、農業委員会はすべての1番人気馬と上位5着以内の馬への競走後の毛根検査を要求している。ただし、この措置を実施するには数百万ユーロの費用がかかると思われる。

 また、実験室内検査は独立機関が実施すべきであると勧告し、「新設のナショナルエクワインセンター(National Equine Centre)の研究所が提案されているが、"競馬統括機関の管理下にある"研究所が検査を実施することは認められない」と主張している。

 ケーヒル委員長は次のように述べています。「アイルランド競馬の検査基準が可能なかぎり高い国際基準であることに満足しています。メディアでは多くのコメントが伝えられています。国民の信頼を回復するためには透明性がとても重要であると私たちは考えます。今回の報告書ではそれが明白に示されています」。

 「IHRBが可能なかぎり高い基準で薬物検査を行っていることに疑いの余地はありません」。

 「その現代的な基準を満たすためにはより高い透明性が必要であり、それが私たちの勧告の多くを生み出していると考えます。理事会のメンバーの任命は大臣が行うべきであり、賃金体系やその他すべての内容は一般に公開すべきです」。

 「透明性を高めることが強調されていましたが、アイルランドの検査規制が最高の国際的水準のものではないというような証拠は、どの段階でも見つかりませんでした」。

 ケーヒル委員長はチャーリー・マコナローグ農業・食糧・海洋担当大臣に対して、可能なかぎり速やかに変更を実施するよう求めた。

 報告書によると、"2022年競馬シーズン開幕前のすべての競馬場への監視カメラ設置"を目指していることをIHRBは認めた。

 IHRBのスポークスパーソンは11月9日、本紙(レーシングポスト紙)に対してこう語った。「農業委員会のメンバーが、私たちが出席した2回のセッションに参加し、このような広範囲にわたる報告書をまとめるために時間を割いてくれたことに感謝しています」。

 「私たちは今日の午後に初めてこの報告書を見ました。これからの数日間に詳細に読み、内部で検討する予定です」。

 「報告書をざっと読んだところ、いくつかの指摘された点についてはすでに積極的に対応しています。今後、メンバーの皆様とさらに連携を深めていくことを楽しみにしています」。

 またスポークスパーソンは、「これは以前から議論されていたことであり、理事会は前回の会合で、独立した理事会メンバーを認めるように規約を変更することに原則的に合意しました」と付言した。

 農業委員会のヒアリングでは、アイルランドの馬をめぐるトレーサビリティの欠如も話題になり、牛の個体識別・移動データベース(AIM)のような完全な追跡システムを直ちに導入することが提案された。

 また、馬パスポートの体制を合理化してその管理のための中央データベースを導入することが勧告された。それは誤りやコストを削減するのに有益となるだろう。

By Mark Boylan 

[Racing Post 2021年11月10日「Agricultural Committee approves IHRB anti-doping methods but wants more done」]

上に戻る