フィレンツェファイア、BCスプリント出走後に日本で種牡馬入り(アメリカ・日本)[生産]
オーナーブリーダーのロン・ロンバルディ氏によると、重賞9勝のフィレンツェファイアは、BCスプリント(G1)に出走後、日本のアロースタッドで種牡馬生活を開始する。
ロンバルディ氏はこう語った。「カリフォルニア・ケンタッキー・フロリダ・ニューヨーク・メリーランドの各州からオファーがありましたが、明らかに日本からのオファーがベストでした。彼が米国を離れるのを目にすると感情が交錯すると思います。私自身も彼のために繁殖牝馬を何頭か集めていましたが、総合的に見ればこの取引は断るには惜しいものでした」。
フィレンツェファイア(牡6歳 父ポセイドンズウォリアー)が5月にランハッピーS(G3 ベルモントパーク)を制して2021年の初戦を勝利で飾った当時、この馬を年末で引退させる計画はなかった。
ミスターアモーレステーブル(Mr. Amore Stable)として競走馬を生産し所有しているロンバルディ氏はこう語った。「正直なところ、あらゆる可能性を残していました。今年はよく活躍した年の1つでしたし、年齢とともに進化しているように見えました。ただ6歳は引退するのに適した時期だと思います。7歳まで現役を続けさせることを考えましたが、ビジネスの観点から見なければなりません。獲得賞金が種付料収入を上回ると思っていたからこそ、今年も走らせたのです」。
「契約書にサインし送信するためにパソコンに入れ、45分間考えてからボタンを押しました。そうして良かったと思っています。彼はあちらで、カリフォルニアクロームやシャンハイボビーと一緒に幸せな生活を送るでしょう。大いに貢献すると思いますよ」。
ロンバルディ氏は契約の一環として3つの生涯種付権を保持しており、いずれはそれを使用すると語っている。そして現時点では、自家生産馬でフィレンツェファイアの全弟ジャストレオ(Just Leo)にいっそう目を向けている。同馬は、7月25日の未勝利戦(モンマスパーク)を11½馬身差で制し、その次に9月19日のスターター・アローワンス競走(モンマスパーク)で5¾馬身差をつけて優勝した。2020年の初めからフィレンツェファイアを管理するケリー・ブリーン調教師が手掛けるジャストレオは、フロリダ産2歳馬のためのステークス競走、総賞金6万ドル(約690万円)のオカラスタッドジュベナイル(10月30日 ガルフストリームパーク)を目指している。
ロンバルディ氏は、フィレンツェファイアの1歳の半弟アンディアモアフィレンツェ(Andiamo a Firenze 父スペイツタウン)と当歳の全弟も所有しており、「何頭か優良馬が控えているので、これからどこまで行けるか見てみましょう」と語った。
同氏は将来有望な繁殖牝馬としてクレーミング競走において1万6,000ドル(約184万円)で手に入れた3着内2回のマイエブリウィッシュ(父ラングフール)からフィレンツェファイアを生産した。この牝馬の2代母ウィズエブリウィッシュ(父リアファン)は、2011年の最優秀繁殖牝馬オートシー(Oatsee)を送り出している。オートシーはプリークネスS(G1)優勝馬シャックルフォード、アラバマS(G1)優勝馬レディジョアン、G3を複数回制したバグダリア(Baghdaria)の母である。
ロンバルディ氏はマイエブリウィッシュを交配させるとき、プレザントエイカーズスタリオンズ(フロリダ州オカラ近郊)で供用されていたG1スプリンターで初年度種牡馬のポセイドンズウォリアーに注目した。同氏によると、この繁殖牝馬と種牡馬のニックス(相性)は良好と報告されていて、6,500ドル(約75万円)の種付料も手頃だった。
フィレンツェファイアはキャリア2戦目のサンフォードS(G3)を制し、ポセイドンズウォリアーにとって初めての重賞勝馬になった。その2戦後のシャンペンS(G1)でも優勝した。現在までに重賞18レースで優勝するか3着内に入っており、270万ドル(約3億1,050万円)以上の賞金を獲得している
ロンバルディ氏はポセイドンズウォリアーの産駒について、「試してみたらこうなりました。もう何頭かいたら良かったのですが」と語った。この種牡馬は、2019年の種付シーズンにダービーダン(ケンタッキー州レキシントン近郊)に移籍し、その後、エクイスター調教・生産センター(ペンシルべニア州)で2年間の予定で供用されている。エージェントのジェイミー・ラモニカ氏によると、ポセイドンズウォリアーの再移籍の契約は保留中であり、まもなく締結されるはずだという。
フィレンツェファイアはそのスピードだけでも魅力的な種牡馬として期待されているが、G1競走で数年にわたって戦い続けてきた能力によりその価値がいっそう高まっているとロンバルディ氏は語った。
ロンバルディ氏はこう語った。「彼は1日も休んだことがなく、毎回姿を現します。彼には大きな心と気概があります。血気盛んであり、それはフォアゴーS(G1)でヤウポンに嚙みついたときにはっきりしました。彼がいなくなるのは寂しいかぎりですね」。
フォアゴーS(8月28日)で残り100mを切ったとき、フィレンツェファイアはヤウポンのチークピースに何度も噛みつきながら、決勝線に向かって競り合った。結果、ヤウポンが頭差で勝利した。
ブリーン調教師はレース後、「彼は4完歩のあいだにヤウポンに2度襲いかかりました。まったくタフな奴です。あんなことをしたのは初めてでした」と語った。
ロンバルディ氏は、フィレンツェファイアはほんのあともう少しで経歴にさらにG1・2勝を加えられたと述べた。今年のフォアゴーS以外にも、2019年ヴォスバーグS(G1)でインペリアルヒントに鼻差で敗れている。
フィレンツェファイアにとって、デルマーで行われる11月6日のBCスプリントがラストランとなる。この最後の一戦に挑むまでに、同馬は今年、重賞2勝(2着3回、着外1回)の成績を挙げている。前走のヴォスバーグS(G2 10月9日)ではフォローイングシー(Following Sea)の2着である。また昨年のBCスプリントでは、ホイットモアに続いたシージーロケット(C Z Rocket)に首差の3着だった。
By Eric Mitchell
(1ドル=約115円)