マーフィー騎手、クロノジェネシスの長期休養明けを問題視せず(フランス)[その他]
オイシン・マーフィー騎手は競馬ファンに対して、凱旋門賞(G1 10月3日)でクロノジェネシスを見逃さないようにアドバイスした。そして、前哨戦をスキップして馬をフレッシュな状態に保つという考え抜かれたプランを説明した。
クロノジェネシスの前走から凱旋門賞までのあいだは98日となり、優勝馬となれば現代の最長記録となる。
日本ですでに人気があり英国でリーディングに2回輝いているマーフィー騎手は、日本に初勝利をもたらすことを目指して凱旋門賞に挑むクロノジェネシスに騎乗するのを待ちきれないでいる。
マーフィー騎手にとって、これが凱旋門賞初騎乗となる。一方、日本でG1・4勝を挙げているクロノジェネシスは欧州で初出走を果たすことになる。同馬は9月25日にパスカル・バリー調教師のシャンティイの厩舎に到着した。
これまで凱旋賞に挑戦した日本馬の大半とはちがい、欧州馬がブリーダーズカップやドバイに現地での前哨戦なしで遠征するように、クロノジェネシスはあえて遅れてフランスに到着した。
2004年凱旋門賞優勝馬バゴの娘であるクロノジェネシスは6月27日に宝塚記念(G1 阪神)に出走してから競馬場に姿を現していない。しかしマーフィー騎手は、それは馬券購入者がクロノジェネシスを支持することを思いとどませるものではないと述べた。同馬にとってはレースとレースの間に十分な回復時間を取ることが好ましいとはっきりわかっている。
マーフィー騎手はこう語った。「前哨戦を使わないほうが良いと思っていました。レース間隔が短すぎると感じます。よく考え抜かれたプランなんです。子どもの頃から凱旋門賞を見てきました。かなりチャンスのある馬に乗ることは素晴らしいことです。ミドルディスタンスでは彼女は日本の最強馬です」。
「しばらく前から立てられていたプランです。彼女が良い状態で凱旋門賞に臨めることを願っています。彼女はすでにフランスに到着していて、水曜日の朝に乗る予定です。とても楽しみにしています」。
クロノジェネシスの主戦である北村友一騎手が重傷を負ったことをうけ、春にマーフィー騎手は斉藤崇史調教師と馬主サンデーレーシングから騎乗依頼を受けた。
9月中旬に開催された一連の凱旋門賞トライアルで決定的な優勝候補が浮上しなかったことで、その直後のクロノジェネシスのオッズは15倍となった。その後、彼女の参戦が大きく意識されるようになり、そのオッズは徐々に下がっていった。また、マーフィー騎手が水曜日にシャンティイに向かえば、大きな関心を集めることは必至である。
この夏に欧州の主要なミドルディスタンスレースのほとんどで騎乗したマーフィー騎手は、彼女の課題の大きさを評価するのに誰よりもふさわしい立場にいる。
「彼女が日本で走ったレースを徹底的に研究しましたが、とても乗りやすい牝馬のようです。絶妙なポジションを取ることができ、素晴らしいダッシュ力があります。彼女にはあまり弱点がないようです」。
マーフィー騎手は人気を集めるライバルたちについてこう語った。「もちろんアダイヤーをとても評価しています。キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(G1)では最初の½マイル(約800m)でかなり掛かっていたのにあのような勝ち方をしたのですから、すごい奮闘ぶりでした」。
「タルナワはまさに名牝で素晴らしい成績を収めています。それにクリストフ・スミヨン騎手とのコンビでは負けなしです。スノーフォールは3歳牝馬なので斤量がかなり有利です」。
「とてもタフなレースです。強豪馬がそろっていますし、ファンもきっと楽しめるレースです。日本を代表して騎乗できることをとても誇りに思っています」。
マーフィー騎手は2019年ナッソーS(G1 グッドウッド)でディアドラを勝利に導いたことで、日本のファンからの信頼を確固たるものにした。また、2018年と2019年の冬にJRAで短期騎乗した際には、スワーヴリチャードで2019年ジャパンカップ(G1)を制したことで大きな注目を浴びた。
厳格な検疫措置により日本からは一部のサポーターしかパリに行けないにもかかわらず、10月3日の凱旋門賞に対する日本人の関心はこれまでと同様に高いものとなりそうだ。
クロノジェネシスに加えて、フォワ賞(G2)を終始先頭に立って優勝したディープボンドが日本調教馬として出走し、伝説のジョッキー、武豊騎手はエイダン・オブライエン調教師が手掛けるブルームとコンビを組むことになる。
長期休養明けで凱旋門賞を制した名馬
クロノジェネシス陣営は、異例の長期休養明けで凱旋門賞制覇を目指している。
過去50年間で4頭がキングジョージ以来の出走で凱旋門賞を制している。レース間隔は71日。1971年のミルリーフから始まり、1985年のレインボークエスト、1995年のラムタラ、2010年のワークフォースと続く。
2020年に本紙(レーシングポスト紙)が史上最高の凱旋門賞馬に選出した偉大なシーバードは、1965年にサンクルー大賞(G1)で優勝してから凱旋門賞を制覇するまで放牧に出されていたため、89日間も競馬場から遠ざかっていた。
凱旋門賞で2着となった日本馬4頭(延べ)は、いずれも9月にロンシャンの前哨戦を経験している。一方ディープインパクトは2006年凱旋門賞で3位入線したが、その時は98日前に宝塚記念に出走後、直行で凱旋門賞に参戦した。
By Scott Burton