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2021年09月16日  - No.34 - 3

ハリケーンレーン、英セントレジャーSでライバルたちを撃退(イギリス)[その他]


 トップレベルで勝つことが実際以上にたやすく見えるのは、テニスのエマ・ラドゥカヌ選手だけではない。英セントレジャーS(G1)において、ハリケーンレーンはクラシック競走ではめったに見られないスタイルでふたたびライバルたちを撃退した。同馬はパリ大賞(G1 7月14日 ロンシャン)で6馬身差の勝利を決めている。

 チャーリー・アップルビー調教師とゴドルフィン創設者のモハメド殿下にとって唯一の頭痛の種は、ハリケーンレーンを英ダービー馬アダイヤーとともに凱旋門賞(G1 10月3日 ロンシャン)に出走させるかどうかということだ。

 また調教師は、2万人以上のヨークシャー人が大きな歓声をあげたときに生じた耳鳴りも治さなければならないだろう。カズー社が2019年にスポンサーになってから初めて有観客で開催された英セントレジャーSのゲートは、すさまじい音を立てながら開いた。

 単勝1.7倍の1番人気馬を支持した観客たちは1¾マイル(約2800m)のレース中、大声で叫び続けた。ウィリアム・ビュイック騎手はハリケーンレーンをスタート直後から中団の位置につけ、馬は完璧な位置取りでゆうゆうと走り、ゴールに向けて勢いづいていった。

 ハリケーンレーンは残り¼マイル(約400m)で先頭に立ち、モジョスターに2¾馬身差をつけて楽勝した。モジョスターは英ダービーでは3着のハリケーンレーンに先着して2着だったが、愛ダービーではハリケーンレーンの5着に終わっていた。

 アップルビー調教師はレース後にこう語った。「このようにG1やクラシックを気楽に見られるのは珍しいことです。しかし今回は、ウィリアムがどういう位置取りをして馬をどのように走らせるかについてずっと安心していられるレースの1つでした」。

 「ウィリアムが言ったように、最終コーナーを回ったときに目の前にはすべてがあり、必要なスペースもたっぷりありました。あとは、ギアを入れるように馬に合図を送るタイミングだけでした。1¾マイル(約2800m)を走れる馬にしては、ギアチェンジがうまくできます。現在、そのような能力が彼を抜きん出た存在にしているのです」。

 アップルビー調教師はすぐにニューマーケットの厩舎のチームとこの功績を分かち合い、こう続けた。「ハリケーンレーンについて大好きなのは、パドックでベテランのボクサーのようにクールに周回するところです。彼は全力を発揮するときがいつであるかを知っています。調教での彼はまさにそんな感じなのです」。

 自らにとっての英セントレジャー3勝目を挙げたビュイック騎手はこう語った。「素晴らしいパフォーマンスでした。ジョッキーにとって夢のような馬ですね。この距離では大事なことですが、レース中にどの位置につけさせても良く、リラックスしています。過去2戦で感心したのは、終盤での加速のしかたです。本当にそこでレースを終わらせてくれるのです」。

 アップルビー調教師は英セントレジャーS初制覇を果たした。ただ1¾マイル(約2800m)という距離は流行の先端とは言えず、常にミドルディスタンスのトップホースの第一の目標レースになるとは限らない。

 それでも調教師はこう強調した。「クラシックですからね。セントレジャーに挑戦することを迷う人々もいるでしょう。しかし伝統と歴史には勝てませんし、このレースにはそれが染みわたっているのです」。

 ビュイック騎手はこう語った。「またセントレジャーで勝利を挙げられたのは素晴らしいことです。このような馬にめぐり会えたのなら、大切にしなければなりません。チャーリーとモハメド殿下は、この馬がパリ大賞を制した後にセントレジャーに向かうことを強く決意していました。今日は思いどおりの結果が収められたというわけです。多くの人々が舞台裏で熱心に働いており、このような素晴らしい馬に乗れることをとても光栄に思います」。

 伝説のニジンスキーを含め、セントレジャーを制したあとに凱旋門賞で優勝した馬はいない。しかしそれはアップルビー調教師に挑戦することを思いとどまらせない。

 「パリ大賞の後、私たちは凱旋門賞への挑戦を検討する可能性について話合いました。セントレジャーと凱旋門賞のダブル制覇が達成されたことがないことは知っていますが、それは達成できないという意味ではありません。それを固く信じています。一呼吸おいて、レース後の彼の様子を見てから計画を立て始めるでしょう」。

 「アダイヤーは調教を2回ほど休み、今週末のレースにも出られませんでした。でも今朝は快調な状態に戻っていてとても元気そうに見えました。現時点ではアダイヤーが凱旋門賞の主役候補であり、私たちはハリケーンレーンを加えることも視野に入れつつあると言えるでしょう。このような話をするのは楽しいものですね!」。

 ビュイック騎手はもし2頭が凱旋門賞に出走した場合にどちらの牡馬に乗るかについて話さなかった。また、アップルビー調教師もどちらが頂点に立つのかについて推測しなかった。

 調教師は、「最高に見ごたえのあるレースになりそうですね!このような戦績をもつ2頭からどうやって1頭を選ぶことができるでしょうか?パリにどちらか1頭を連れて行けるだけでも素晴らしいのですが、2頭とも連れて行けるなら最高ですね」と付言した。

By David Carr

[Racing Post 2021年9月11日「Hurricane Lane blows Classic rivals away with stunning St Leger display」]


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