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海外競馬ニュース
2021年08月26日  - No.31 - 3

ストロナックグループ、馬の貨物船輸送を禁止(アメリカ)[開催・運営]


 ストロナックグループ(TSG)の一部門、ファーストレーシング(1/ST Racing)の役員は、「TSGの施設から出発する馬の貨物船輸送を禁止します」と8月17日に発表した。TSGは、ガルフストリームパーク、ゴールデンゲートフィールズ、ローレルパーク、ピムリコ、サンタアニタパークなどの競馬場やさまざまな施設を所有している。

 調教師・馬主・関係者に向けてSNSに投稿された公開書簡の中で、ファーストレーシングのCOOエイダン・バトラー氏は「馬の貨物船輸送に関わる調教師や馬主はもはや、TSGの調教施設や競馬施設では歓迎されません」と述べている。

 今回の措置は、カリブ海のプエルトリコ島に近いガルフストリームパークで出走する馬に最も大きな影響を与える。近年、フロリダ州やそれ以外の州の格下馬はプエルトリコに拠点を移すために、転厩したり売却されている。その際に利用される貨物船輸送は、低コストだが高リスクである。馬を船で輸送して下船させるまでには2日間、場合によってはそれ以上の時間を費やす。一方、飛行機での輸送は2〜3時間しか掛からない。

 狭い空間に入れられ海上を長時間かけて輸送されると、馬は命を落とすこともある。あるいはよくあることだが、到着時に脱水症状を起こす。

 バトラー氏はこう語った。「もとよりいくつかの報道がありました。少し調べてみたのですが、周囲も私も"まったく人道的な扱いをされていない"というように考えております。実に非人道的です。馬を扱う方法とは言えません。そのため、かなり簡単に議論はまとまりましたが、すべての関係者全員からフィードバックを得て、彼らに説明を行い、質問があればそれを聞くのに時間を掛けたいと思いました。TSGが関わる地域では、誰もが全面的に支持してくれました。私たちはこのことに強い思い入れを持っているということです」。

 バトラー氏は、2つの輸送方法のコスト差は約1,200ドル(約13万2,000円)であると述べた。本誌(ブラッドホース誌)は以前、その差が1,500ドル(約16万5,000円)に達すると報じたことがある。

 バトラー氏はこう指摘した。「正しい方法とそうではない方法があります。業界として、馬が競走生活を終えたときには慎重にならないといけません。ほとんどの競馬場は、馬のためにできるかぎり安全な状況を確保するために万全に取り組んでいます。しかしこのようなことが起こると、すべてを胡散臭いものにしてしまいます」。

 バトラー氏の公開書簡によると、馬を輸送する調教師や馬主は、管理馬・所有馬が人道的な方法で安全に輸送されるように相当な注意を払う責任がある。そして馬の貨物船輸送を避けない場合は、それに関係する馬主と調教師の馬をあらゆるファーストレーシングの施設から直ちに排除することになる。

 「カリフォルニア州、フロリダ州、メリーランド州のTSGが関わる地域のホースマングループと連絡を取り、この問題について全面的な支持を得ました」。

 バトラー氏は、TSGの傘下にない競馬場も貨物船輸送の実施を禁止し始めているか、検討していると考えており、「願わくは、あらゆる地域の人々にこの動きに加わってほしいです。貨物船輸送の必要性はありません」と述べた。

 TSGの規制は内規により実施される。バトラー氏はTSGの措置は動物の福祉を念頭においたものであり、現在の馬の頭数を維持するために考えられたものではないと述べた。

By Byron King

(1ドル=約110円)

[bloodhorse.com 2021年8月17日「The Stronach Group Institutes Cargo Ship Transport Ban」]


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