ニックスゴー、ペガサスワールドカップを制覇(アメリカ)[その他]
ブラッド・コックス調教師が、総賞金294万2,000ドル(約3億891万円)のペガサスワールドカップ(G1)で目にしたことを簡潔に表現するには、「立派!」という言葉しかいらなかった。
創設間もないペガサスワールドカップ(ガルフストリーム競馬場)は、アロゲートやガンランナーのような馬のおかげでそれに相応しい素晴らしい瞬間を享受してきた。1月23日に開催された第5回ペガサスワールドカップでは、KRA(韓国馬事会)が所有する控えめなメリーランド州生まれのニックスゴー(牡5歳)が先行逃げ切りでまばゆいばかりの2¾馬身差の勝利を決め、その輝かしい優勝馬リストに名を連ねた。コックス調教師は誇らしそうに感情を爆発させた。
「偉大な馬は立派なことを実現するものですが、今日彼は本当に素晴らしいことを成し遂げました。彼のことを本当に誇りに思っています」。
コックス調教師の得意げな様子は、ニックスゴーが昨年転厩してきて以来、どのようにして勝てない馬から負け知らずの馬に変身したのかを考えると理解できる。
ニックスゴー(父ペインター)はベン・コールブルック調教師に管理されて2歳でG1を制したが、3歳シーズンは8戦0勝だった。しかしコックス厩舎に転厩してからは4戦4勝である。直近の2戦でBCダートマイル(G1)とペガサスワールドカップを制したことで、圧巻の復活劇を遂げた。
コックス調教師は、「活躍すると思っていてステークス競走で勝つ馬はいました。だけどこういう馬は初めてです。どうしてあんなことが起こったのか説明できれば良いのですが、彼がここに来る前に何が起きていたのか分かりません。2歳シーズンに活躍していましたし、ここに来たときは素晴らしい馬に見えました」と語った。
KRAを代表するジュン・パク(Jun Park)氏によれば、ニックスゴーはこれからもいくつかのレースに出走する。同馬は、ブリーダーズカップとペガサスワールドカップの両方を制した4頭目の馬となった。
パク氏は、「見事なパフォーマンスでした。コックス厩舎のチームが全力で彼を仕上げてくれたことに感謝しています。誰もが素晴らしい仕事をしました。ここにいることを光栄に思います。ニックスゴーはこれからも競走を続けます」と語った。
ニックスゴーの次の目標は、2月20日にリヤド・キングアブドゥルアジーズ競馬場で開催される総賞金2,000万ドル(約21億円)のサウジカップ(1800m)になるかもしれない。
ペガサスワールドカップの優勝により、サウジカップへの出走権を自動的に獲得したが、コックス調教師はシャーラタン(ボブ・バファート厩舎)と競うことになる国際的な頂上決戦までに、多くのことがうまくいかなければならないと心得ている。
コックス調教師は、「サウジカップを検討するでしょう。やることは多いですが、私たちは最後には彼が答えを出してくれると思っています。五分五分の状態だと思います」と述べた。
もう1つの選択肢は、3月27日に開催される総賞金1,200万ドル(約12億6,000万円)のドバイワールドカップ(G1 2000m)である。ペガサスワールドカップはニックスゴー(母コスモズバディ 母父アウトフランカー)にとって初めての1700m超のレースだったが、コックス調教師は同馬が2000mの距離でその速度を持たせられる血統に属していると信じている。
コックス調教師はこう語った。「彼はもっと長い距離を走れます。彼の父ペインターとその父オーサムアゲインは、2000mを得意とする血統です。実際、ニックスゴーにとって1つのコーナーがある1800mよりも2つのコーナーがある2000mのほうが合っているのではないかと考えています。コーナーで優れた走りを見せるからです」。
ニックスゴーは、競走当日のラシックス使用を禁止したペガサスワールドカップにおいて、先頭を走り続けて終始圧巻のパフォーマンスを見せた。そしてBCダートマイルでの強さを再び見せつけるように、挑んでくるジーザスチーム(Jesus' Team)を突き放した。
ジョエル・ロザリオ騎手は12頭がいっせいに発走したとき、ニックスゴーをすぐに先頭に立たせた。単勝2.2倍のニックスゴーは800mを46秒16で通過した後、単勝42倍のラストジャッジメント(Last Judgment)よりも1½馬身先行していた。
そのすぐ後ろにはインディペンデンスホール(Independence Hall)と単勝6倍の3番人気馬タックス(Tax)がいた。
ニックスゴーが先頭に立ち続けて1200mを1分9秒91で通過したとき、ラストジャッジメントとタックスが後退し始め、ジーザスチームが5番手から上がってきてインディペンデンスホールと並んだ。先行馬群の後ろから盛り返しをはかったのだ。
しかし、ニックスゴーを脅かすことにはならなかった。
ロザリオ騎手は残り200mの地点でニックスゴーを後続から3馬身も引き離して先頭に立たせ、スピードの出やすい馬場において1800mを1分47秒89で走り切った。
ロザリオ騎手は、「コックス調教師の手腕によるものです。チャンスをくれたKRAとニックスゴーに騎乗させてくれたコックス調教師に感謝します。彼は特別な馬です。ご覧のとおり、彼は速く進みましたが、どんどん速くなっていきました」と語った。
単勝12倍でイラッド・オルティス騎手が騎乗したジーザスチーム(牡4歳 父タピチャー)は2着となり、その首差で3着となったのは単勝28倍で人気のなかったインディペンデンスホール(牡4歳 父コンスティチューション マイケル・マッカーシー厩舎)だった。
ジーザスチームを管理するホセ・ダンヘロ調教師はこう語った。「ジーザスチームをとても誇りに思います。偉大な馬です。今日はニックスゴーが再び先頭に立ってしまったので、彼には勝機がありませんでした。それでも彼はビッグレースで絶対に勝てるだろうと思っています。彼のことを誇りに思っています」。
インディペンデンスホールの6¼馬身後ろの4着にはスリーピーアイズトッド(Sleepy Eyes Todd)、さらに¾馬身後ろの5着には単勝5倍の2番人気に推されていたG1馬コードオブオナーが入線した。コードオブオナーは10番ゲートから発走し、最後の直線で従来の強く伸びるような走りっぷりを発揮し損ねた。
ニックスゴーは通算成績を18戦6勝とし、生涯獲得賞金は308万8,995ドル(約3億2,434万円)に上った。
アンジー・ムーア氏に生産された同馬は、母コスモズバディの7頭の仔の中で唯一ステークス競走を制している。コスモズバディにはこれから出走する仔が3頭おり、それはビリーブユアアイズ(Believe Your Eyes 牡4歳 父オーブ)、コスミカリティ(Cosmicality 牡3歳 父ブロークンビュー)、まだ名前のない1歳牝駒(父ジャスティファイ)である。また現在はゴーストザッパーの仔を受胎していると伝えられている。
ニックスゴーは2017年キーンランド9月1歳セールにおいてウッズエッジファームにより上場され、KRAにより8万7,000ドル(約914万円)で落札された。同馬の将来の種牡馬生活については、コックス調教師はペガサスワールドカップを優勝するほど成功した馬にどの種馬場からも声が掛からないことだけが不可解だと考えている。
コックス調教師はこう付言した。「誰もニックスゴーの種牡馬契約を結んでいないのが信じられません。彼は2歳でG1を制し、古馬となった4歳と5歳でもG1優勝を果たしています。ブリーダーズカップとペガサスワールドカップを制しているのです。ラシックスなしでコーナーが2つあるG1レースを制覇しました。人々は何を望んでいるのでしょうか?」
もしペガサスワールドカップの後も電話が鳴らないのであれば、それこそが"偉大な"ミステリーとなるだろう。By Bob Ehalt
(1ドル=約105円)
[bloodhorse.com 2021年1月23日「Knicks Go Rolls to Victory in Pegasus World Cup」]