リトゥンタイクーン、リーディングサイアーに輝く(オーストラリア)[生産]
3つの州で14年間の種牡馬生活を送ってきたリトゥンタイクーン(Written Tycoon)は、豪州のリーディングサイアーに初めて輝いた。同馬はこれにより、この座に4年間君臨していたライバルのスニッツェルを引きずり下し、ヴィクトリア州の供用種牡馬として40年以上ぶりにこの快挙を成し遂げた。
新たに戴冠したリトゥンタイクーンの産駒は、今年これまでに行われてきた大規模な買占めの中心になっている。ユーロンスタッド(Yulong Stud)で供用されることになりヴィクトリア州に戻ってきたリトゥンタイクーンは、2020-21年シーズンにステークス勝馬12頭(実頭数)を送り出し、G1馬オルカーク(Ole Kirk)、オデウム(Odeum)、ピッピー(Pippie)をはじめとする産駒の獲得賞金は1,703万5,983豪ドル(約13億6,288万円)に達した。
2020-21年シーズンには、豪州の最多記録となる勝馬208頭を送り出したアイアムインヴィンシブル(ヤラマンパークスタッドで供用)が総合種牡馬ランキングで2位となり、ノットアシングルダウトが3位、4年連続で首位に立っていたスニッツェルが4位となった。
リトゥンタイクーンの首位獲得は、ウッドサイドパークスタッド(Woodside Park Stud ヴィクトリア州)のマーク・ロウスソーン(Mark Rowsthorn)氏にとっても最高の瞬間である。同氏はリトゥンタイクーン(父イグレシア)が総合種牡馬ランキングを這い上がる長い道のりを歩んでいた重要な時期に種牡馬管理者を務めていた。
最近ウッドサイドパークスタッドをエディ・ハーシュ氏に売却する契約を完了したロウスソーン氏は、"リトゥンタイクーンは純然たるチャンピオンです"と断言した。
ロウスソーン氏が見守る中で、リトゥンタイクーンの種付料は1万3,750豪ドル(約110万円)から11万豪ドル(約880万円)に引き上げられていった。その後、2020年にアローフィールドスタッド(NSW州ハンターバレー)において種付料7万7,000豪ドル(約616万円)で供用されるという1年契約が交わされた。
リトゥンタイクーンは、1978-79年シーズンのセンチュリー以来、豪州の総合種牡馬ランキングで首位に立った初めてのヴィクトリア州供用種牡馬となった。
ロウスソーン氏はこう語った。「彼は謙虚なスタートを切ってから、まずは格下の繁殖牝馬に種付けを行いこつこつと地位を築き、今では最高級の繁殖牝馬に種付けを行っています。将来がとても楽しみです。産駒たちは質の高い2歳馬を送り出す遺伝子を引き継いでいるように見えます」。
「リトゥンタイクーンは10年近くウッドサイドで供用され、私たちの種牡馬群の中核を担っていました。彼の生殖能力の高さと息の長さは、その伝説的地位を証明しています」。
「彼がいなくなってとても寂しくなるでしょうが、私たちは生産者として彼との関係を続けていきます」。
2020-21年シーズンの豪州3歳リーディングサイアーでもあるリトゥンタイクーンは、まず最初にエリザパークスタッド(ヴィクトリア州)とクイーンズランド州で短期間供用され、その後種牡馬生活の大半を過ごすことになるウッドサイドパークに移籍した。そして現在19歳の同馬は、ユエシェン・チャン(Yuesheng Zhang 張月勝)氏のユーロンスタッド(ヴィクトリア州ナガンビー)において種付料16万5,000豪ドル(約1,320万円)で供用されており、そのままそこで生涯をまっとうすることになっている。
2007年に種牡馬生活を開始したリトゥンタイクーンは、2013年~2019年にウッドサイドパークスタッドで供用され、昨年の総合種牡馬ランキングでは9位に終わっており、2018-19年シーズンは7位、それよりも前の2シーズンでは8位だった。
総合種牡馬ランキングでのこれまでの最高順位は2015-16年シーズンの3位だった。同シーズンにクイーンズランド州産の産駒キャピタリストがゴールデンスリッパー(G1)を制している。
ロウスソーン氏はこう続けた。「ウッドサイドは初年度から20~30頭の繁殖牝馬をリトゥンタイクーンに送り、私たちは何年もかけて彼があらゆる生産者の注意を引くように最善を尽くしました」。
「リトゥンタイクーンはもちろん彼自身の力で成功したのですが、私たちの管理とサポートがなければ、これほど大きな成功にはならなかったかもしれません」。
ユーロンスタッドの最高業務執行責任者サム・フェアグレイ氏は、絶好調にあるリトゥンタイクーンを同スタッドの種牡馬群に迎えることをとても楽しみにしており、こう語った。
「彼はとても丈夫な種牡馬です。牡駒でも牝駒でも、スプリンターやステイヤーを送り出すことできます。とても多才なのです」。
「マジックミリオンで1歳のリトゥンタイクーン産駒が120万豪ドル(約9,600万円)で落札されたのを見たことがありますし、彼の産駒はメルボルンなどで最高価格馬となったこともあります」。
「彼は種付けする多くの繁殖牝馬の格を上げてきたことで、どれほど素晴らしい種牡馬であるかを示してきました。種牡馬生活を始めたときは優良牝馬群を相手にしていたわけではありません。彼が成功するにつれ牝馬の質も向上し、結果もそれについてきました」。
リトゥンタイクーンの種牡馬の父としての実力は、昨シーズンに、いずれもニューゲートファームで供用されるゴールデンスリッパー優勝馬キャピタリストとウイニングルパートの産駒が活躍したことでしっかり強化された。また今シーズンは、オルカーク(ヴァイナリースタッド)とG2勝馬ダーティワーク(スペンドスリフトオーストラリア)が種牡馬入りしている。
フェアグレイ氏はこう続けた。「今後数年間は、シンジケートで牡駒を購買したいと考えている人々のあいだでリトゥンタイクーンの牡駒は大きな人気を博すでしょう。それに彼は近い将来、優秀なブルードメアサイアー(母父)になるでしょう」。
「現在ここ豪州では、彼はれっきとしたエリート種牡馬の1頭であると認識されていると思います。また、昨シーズンと今シーズンを見ても、豪州の最高級の繁殖牝馬を迎えています。彼を供用できることはとても魅力的です」。
「リダウツチョイスやリトゥンタイクーンといった一流種牡馬を供用した経験から、彼らの性格や個性はとてもよく似ていると言えます」。
「2頭とも落ち着いていて穏やかな性格の馬であり、それを産駒に伝えることができます。そして、それがレースでの成功につながっているのです」。
「リトゥンタイクーンは愛らしいベテランの種牡馬で、素晴らしい気質をしています。彼がこれからの種牡馬生活をここで過ごすことを、私たちは皆、とても光栄に思っています」。
By Tim Rowe of ANZ Bloodstock News
(1豪ドル=約80円)
[Racing Post 2021年7月31日「Written Tycoon crowned champion Australian sire」]