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2021年07月15日  - No.26 - 1

ボリショイバレエ、父ガリレオに捧げるベルモントダービー制覇(アメリカ)[その他]


 クールモアのリーディングサイアー、ガリレオが23歳で死んだことを受け、7月10日には世界中で多数の心からの追悼の言葉が発せられた。

 しかし、ベルモントパーク競馬場でガリレオ産駒の1頭が示した追悼の意ほど深いものはほとんどなかった。

 ボリショイバレエはガリレオが産駒に伝えてきた偉大さを2分強で証明し、父のレガシーに新たな一章を加えた。欧州から遠征してきて、クールモアチーム(スーザン・マグニア氏、マイケル・テイバー氏、デリック・スミス氏、ヴェスターベルク牧場)のために総賞金100万ドル(約1億1,000万円)のベルモントダービー招待S(芝G1)を制したのである。

 クールモアのM・V・マグニア氏は、12回リーディングサイアーに輝いたガリレオを失ったことで言葉につまらせながら、「皆にとって厳しい日です。ガリレオは23年間の生涯を通じて、彼に関わった多くの人々にとって信じられないほど素晴らしい存在であり続けました。起きてしまったことは悲しいことですが、彼に代わる馬が現れることを期待しています」と語った。

 欧州のレジェンドであるオブライエン調教師に手掛けられライアン・ムーア騎手が鞍上を務めたボリショイバレエは、NYRA(ニューヨーク競馬協会)の3歳馬の芝三冠競走の一冠目であるベルモントダービー(約2000m)を1¼馬身差で制したことにより、ガリレオの92頭目のG1優勝産駒として記録された。しかしこの驚異的な数字よりも、G2勝馬トウキョウゴールドを負かして手にしたこの勝利は、クールモアとオブライエン調教師がボリショイバレエ(母アルタアンナ 母父アナバー)に抱いていた信頼をすべて証明した。

 マグニア氏は英ダービー(G1 6月5日 エプソム)の前、「クールモアのような大規模な国際競馬事業体がこのような権威あるレースになぜ1頭の3歳馬しか出走させられないのか」と冷笑家たちが疑いを口にするのを苦々しく思っていた。

 「ダービーに1頭しか出走させないことをこきおろす人はたくさんいましたが、数頭出走させるときにも彼らは文句を言うのです」とマグニア氏は述べる。

 その出走馬1頭とはボリショイバレエのことで、オブライエン調教師はこの1頭を出走させるだけで十分だという信念があった。ダービーの前にG3・2勝を果たしていたこの馬は、陣営からも馬券購入者からも"勝つべき馬"と見なされており、オッズ2.35倍の1番人気でダービーに送り出された。

 マグニア氏は「エイダンはダービーに向けて、この馬に大きな自信を持っていました」と述べた。

 しかし残念ながら重馬場であったうえに右後肢に傷を負ったことが災いとなり、ボリショイバレエは先頭から17馬身後ろの7着に終わった。

 その5週間後、ニューヨークの芝の良馬場と馬が最高の状態に戻ったことにより、オブライエン調教師が英ダービーだけでなくベルモントダービーも出走馬は1頭で十分だと考えた理由は明白なものとなった。

 マグニア氏は「彼は今日、自分に本当に実力があることを証明しました。ライアンも、とても良い馬だと言っていました」と語った。

 ムーア騎手はレース前半にボリショイバレエを7番手に控えさせ、最終コーナーで4頭の外を回って戦いに加わった。残り1ハロンでチェリスト(Cellist)を急襲して引き離して優勝し、競走成績を7戦4勝とした。これにより、クールモアとオブライエン調教師は2016年のドーヴィルでの勝利に続き、2度目のベルモントダービー制覇を達成した。

 ムーア騎手はこう語った。「自らがどれだけ優れているかを見せる間もなく、彼は楽に勝ってしまいました。この馬に満足しています。これまで見た中で最も美しい馬です。本物のアスリートであり、優秀な競走馬です。残り1ハロンの地点でただ何かを待っているように見えましたが、耳の動きを見るとスパートを予感しました。自分が何をすべきかを判断するのにまだ慣れていないようです。まだまだこれからだと思っています。可能性としては、BCターフ(芝G1)に出走するかもしれませんね」。

 ボリショイバレエは、ランシ-バージュ社(Lynch-Bages)とラインストーンブラッドストック社(Rhinestone Bloodstock)によりアイルランドで生産された。アルタアンナの第6仔(全7頭)であり、G2勝馬サザンフランス(Southern France)の全弟にあたる。半妹に1歳牝駒(父ノーネイネヴァー)がおり、この牝駒はアルタアンナの7頭の仔のうち唯一ガリレオ産駒ではない。

 もう1頭の欧州からの遠征馬トウキョウゴールドが2着に入ったことで、7月10日の芝三冠競走はさらに国際色豊かになった。吉田照哉氏が所有し、小林智調教師が管理するトウキョウゴールドは、前走の伊ダービー(G2)を制していた。

 ½マイル(約800m)を51秒34で通過した後、最後方の9番手にいたトウキョウゴールド(父ケンダルジャン)は、最後の直線で力強く盛り返していき、カルメットファームの自家生産馬チェリスト(父ビッグブルーキトゥン ラスティ・アーノルド厩舎)に首差をつけて2着に入った。チェリストは序盤から先頭争いをし、勇敢に粘って3着を確保した。

 トウキョウゴールドに騎乗したジョン・べラスケス騎手はこう語った。「彼は本当によく走りました。レース序盤でもう少し好位につけられれば良かったのですが、ずっと優勝馬のすぐ後ろにいたので、そこにとどまっても良いかと判断しました。彼はかなり器用で、合図を送ると走ってくれました。ボリショイバレエは、我々よりも少しだけ強かっただけです」。

 単勝約2倍の1番人気で臨んだボリショイバレエは、芝コース(良)1¼マイル(約2000m)のこのレースを2分4秒42で走破した。

 またボリショイバレエは、オブライエン調教師とクールモアの関係者に芝の三冠競走での2勝を達成させた。その日すでに行われていた総賞金70万ドル(約7,700万円)のベルモントオークス招待S(芝G1 3歳牝馬限定)をサンタバーバラが制していたのだ。

 家族が経営する世界的な競馬事業が代表的な種牡馬を失ったのと同じ日にニューヨークのレースに立ち会ったマグニア氏はこう語った。「NYRAの活動は見事です。私たちへの対応は、信じられないほど素晴らしいものでした。賞金も高額ですし、馬場状態も上々です。すべてが完璧です。来て良かったと思える場所ですね」。

 ボリショイバレエとサンタバーバラはともに7月11日にアイルランドに帰国する。予想されたことだが、マグニア氏はボリショイバレエがニューヨークにふたたび遠征する可能性を残した。G1馬になったばかりのボリショイバレエの今後の選択肢として、8月7日のサラトガダービー[芝G1 サラトガ 総賞金100万ドル(約1億1,000万円)]と9月18日のジョッキークラブダービー[ベルモントパーク 総賞金100万ドル(約1億1,000万円)]を挙げたのだ。これらは芝の三冠競走の二冠目と三冠目である。

 また同氏は凱旋門賞(G1)も可能性として挙げており、このレースへの挑戦は偉大な故ガリレオの産駒に期待されていることに違いないだろう。
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By Bob Ehalt

(1ドル=約110円)

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