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2021年07月01日  - No.24 - 1

ハリケーンレーン、英国調教馬として6年ぶりに愛ダービー優勝(アイルランド)[その他]


 カラ競馬場は6月26日、全神経が刺激されるようなレースの舞台となった。ハリケーンレーンがチャーリー・アップルビー調教師とウィリアム・ビュイック騎手に愛ダービー(G1)優勝をもたらし、極度の感動がこもった一撃を与えたのだ。

 道中逃げ続けたローンイーグルには残り2ハロン(約400m)の地点でもまだ離されていたが、広大な直線で外側から勢いよく攻め込んできた青い弾丸に、目は釘付けになっていた。そして運良くこの場に立ち会うことのできた千人の観客からは、1完歩進むごとに緊迫した声が上がっていた。

 ハリケーンレーンとローンイーグルは決勝線をわずか首差で駆け抜け、これら2頭から7馬身引き離されてワーズワースが3着で入線した。英ダービー(G1)をアダイヤーで制して金メダルを獲得していたアップルビー調教師に、ハリケーンレーンは記念すべき英愛ダービー制覇を達成させた。

 しかし、この日はハリケーンレーンにとって審判の日でもあった。3週間前の英ダービーで同厩舎馬アダイヤーの3着に終わった同馬は、今回その実力を見事に発揮した。

 世界中の高額賞金レースの数々を優勝する才能により、瞬く間に有名になったアップルビー調教師は、愛ダービー初制覇を達成した。同調教師は1993年より後でみると、2度目の愛ダービー優勝を英国にもたらした。1度目は2015年にジャックホッブス(ジョン・ゴスデン厩舎)がゴドルフィンブルーを背負って収めた大差の勝利であり、そのときに手綱を取っていたのもビュイック騎手だった。

 しかし、ハリケーンレーンにとってこのレースは楽なものではなかった。彼は頭を下げてローンイーグルのリードをじりじりと縮め、アップルビー調教師が冬を迎えるにあたり同馬に備わっていると感じていた将来の見込みをすべて見せつけたのだ。

 アップルビー調教師は「ありがたいことに、色々な夢を思い描かせてくれるような冬を過ごしました」と、総賞金100万ユーロ(約1億3,000万円)の愛ダービーではなく、スクラッチカードでちょっとした大金を手に入れたばかりの男のような感情で語った。

 「優秀な3歳馬がいることを分かったうえで冬を迎えました。期待を募らせてきましたが、それらの馬にがっかりさせられるようなことはありませんでした。素晴らしいシーズンになっています。私を支えてくれるチームがいなければこのようなことはできなかったでしょう。だから、みんなにとって喜ばしい勝利です」。

 ビュイック騎手も喜んでいた。道中はずっと、今季の他の多くのレースなどと同様にフランキー・デットーリ騎手が勝利を勝ち取るように思われた。しかし、ビュイック騎手がハリケーンレーンに疑いをもつことはなかった。

 ビュイック騎手はこう語った。「フランキーは逃げて勢いよく進み続けました。しかしハリケーンレーンがギアを入れた瞬間、これはいけると思いました」。

 「わずか首差の勝利でしたが、残り1ハロンを切ったときにはいつでも突き抜けられると思っていました。彼はとても誠実な馬だし、チャーリーや厩舎のチームのおかげで、英ダービーに出走した馬の中で最も上積みがありました」。

 「とてもいい勝ち方をしましたね。彼はギアを入れた途端、素晴らしい末脚を見せ、長く先頭に立っていた馬を圧倒しました」。

 アップルビー調教師とそのチームには数ハロンのあいだ粘り抜くことができるかという不安があったかもしれないが、レース後の報告で調教師はそれを適切に説明した。

 同調教師はレース展開についてこう語った。「ハリケーンレーンは坂を下ってきたときに、少しプレッシャーを感じているように見えましたが、上がり勾配の直線を走ってきたときには、ゴールまで力強く駆け抜けてくれるだろうと私たちは確信していました」。

 「レース半ばの展開には十分満足してきました。坂を下りるときに手綱を緩めたときでさえも、以前同じような光景を見たことがあるなと思いました。ダンテS(G2)で勝ったときも、手綱は緩められていましたからね」。

 「正直言って、フランキーが勝利を奪い取ったと思っていました。彼の馬は脇腹を蹴られてやる気を出していましたからね。彼をとらえるのは難しいと思っていました。勝利を確信していたわけではありませんが、ハリケーンレーンが最後までしっかりと走ってくれることはわかっていました」。

 ハリケーンレーンはまさに英セントレジャーS(G1)向きの馬のようだと言われたとき、アップルビー調教師はこう語った。「確かに彼はそうですね。とても勝ちたい素晴らしいレースです。アダイヤーはキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(G1)に向かうことになっています。今後彼がどれだけ成長していくかおそらくじっくり様子を見るでしょう」。

 「アダイヤーをキングジョージに出走させるのは、彼が凱旋門賞(G1)向きの馬であるかどうかを見極めるうえで、古馬と対戦させて力試しをさせたいからです。そこでうまくいかなければ、ふたたび3歳戦を検討して英セントレジャーSに出走させる可能性もあります」。

 「100%夢のような話ですが、何よりもモハメド殿下とゴドルフィンのチームにとって素晴らしいことです。これらの馬の調教を任せてくださったことに、私は感謝するだけです。私を後ろから支えてくれているチームはとても優秀です。ここにいる私が"全部一人でやっている"と言いたいところですが、そうではありません」。

By Brian Sheerin

(1ユーロ=約130円)

[Racing Post 2021年6月26日「'I thought Frankie had stolen it' - Hurricane Lane triumphs in epic Irish Derby」]

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