TOPページ > 海外競馬ニュース > ゴールデンゲートフィールズ競馬場で立位PETスキャナーの利用を開始(アメリカ)[獣医・診療]
海外競馬ニュース
2021年06月17日  - No.22 - 4

ゴールデンゲートフィールズ競馬場で立位PETスキャナーの利用を開始(アメリカ)[獣医・診療]


 カリフォルニア大学デービス校のウェブサイトに掲載されたニュースリリースによると、同校の馬用の立位PET(ポジトロン放射断層撮影)スキャナーは現在、ゴールデンゲートフィールズ競馬場で利用されている。

 このスキャナーはロングマイル・ヴェテリナリー・イメージング社(LONGMILE Veterinary Imaging)のMILEPET(マイルペット)と呼ばれるもので、軽い鎮静状態にある馬の脚を撮影することができる。この機器は3月からカリフォルニア大学デービス校の獣医診療所で利用されており、この1ヵ月間、同校の獣医師と技術者のチームによって週に1回ゴールデンゲートの馬診療所に輸送されていた。

 馬用PETの道を切り開いた馬専門の放射線医師マシュー・スプリエット(Mathieu Spriet)博士はこう語った。「ゴールデンゲートフィールズでPETスキャナーを稼働させることで、複数の利益がもたらされます。第一に、南カリフォルニアで競走馬の健康と安全の向上に貢献したのと同じ技術を、北カリフォルニアの競馬界に提供できます。第二に、馬用PETスキャナーを効率的に輸送して複数の施設で共有することで、コストを削減して利用可能性を高められることを明らかにします。そして最後に、多施設共同研究を実施することでより多くの研究機会をもたらすことができます」。

 スプリエット博士は、6月9日の1日だけでゴールデンゲートで11頭の34の球節がスキャンされたとツイートしている。

 PETスキャナーの導入が実現したのは、カリフォルニア大学デービス校の馬健康センター(Center for Equine Health)とカリフォルニア州のゴールデンゲート競馬場とサンタアニタ競馬場のオーナーであるストロナックグループの支援のおかげであると、リリースは述べている。馬健康センターは2015年にデービス校で実施されたまったく初めての馬用PETスキャンの原点であり、それ以来、いくつかの研究プロジェクトや臨床プログラムに資金を提供することで、この撮像方式の開発をサポートしている。ストロナックグループはこの2年間、競走馬の予後不良事故を防止するために、起立する馬を撮像できる最初のスキャナーの開発を部分的にサポートすることで、重要な役割を果たしてきた。

 南カリフォルニア馬事財団(Southern California Equine Foundation)が所有し、ストロナックグループの支援を受けていた最初のMILEPETは、2019年12月からサンタアニタパークで使用されている。1年半で200頭以上がスキャナーで撮像され、そのうち数頭は複数回撮像されている。グレイソン・ジョッキークラブ研究財団(Grayson-Jockey Club Research Foundation)とドリーグリーン研究財団(Dolly Green Research Foundations)の支援を受けた研究プロジェクトは、競走馬のためのPETスキャンの価値の特質を明らかにするのに貢献している。PET スキャナーは、競走馬の予後不良事故を生じさせる最も一般的な部位、球節を撮像するのに最適である。

 カリフォルニア州競馬委員会(CHRB)の統計によると、2020年にゴールデンゲートフィールズのレースや調教で生じた予後不良事故により19頭が命を落とした。今年はレース中や調教中に7頭が命を落とした。

 3月4日には、競馬場で死にいたる馬の多さに憤慨した4人の反競馬デモ参加者がゴールデンゲートの本馬場で人間の鎖をつくったために、1レースが中止となり、他のレースの発走が数時間遅延した。

 カリフォルニア大学デービス校によると、サンタアニタでのPETの利用は、MRIの利用と薬物使用ルールの変更と相まって、2019年から2020年の間に予後不良事故を減少させたファクターの1つである。CHRBは、2019年前半の冬/春開催のわずか6ヵ月間に発生した予後不良事故30件に対し、2020年に入ってからサンタアニタのレース中や調教中に生じた予後不良事故が25件であったと報告している。

By Blood-Horse Staff

[bloodhorse.com 2021年6月10日「Standing Equine PET Scanner Now in Use at Golden Gate」]

上に戻る