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2021年05月27日  - No.19 - 1

ボルジャー調教師が愛2000ギニーでワンツーフィニッシュの快挙(アイルランド)[その他]


 理にかなわないことだが、よく考えてみるとジム・ボルジャー調教師についてはずいぶん前からこうしたことが起きている。

 彼が80歳を目前としているようにはとうてい思えなかった。英2000ギニー(G1)優勝馬ポエティックフレアが6日前の仏2000ギニー(G1)で6着に終わったのに愛2000ギニー(G1)に出走させるなんて思えなかった。そして、つい13日前に愛ダービートライアルS(G3)で残念な4着に終わり、その後鼻汁排出が確認されたマックスウィニーで愛2000ギニーを制覇するなんて思えなかった。

 しかし、79歳のボルジャー調教師は愛2000ギニーで、手塩にかけた牡駒2頭が他の有力馬に歴然とした差をつけゴールして勝負をつける瞬間を見ていた。それは、60年以上の調教生活で彼が真骨頂とする"理屈を無視した離れ業"であった。

 今年最初のアイルランドのクラシック競走のクライマックスはスリル満点だった。グランドスタンドに観客が詰めかけていたならば屋根が吹き飛んでいたかもしれないようなゴールの瞬間だった。そして正直なところ、そうなっても悪いことではなかっただろう。というのは、金切り声が再び私たちの感覚を刺激し、私たちをミソフォニア(音嫌悪症候群)に陥れていたからだ。

 カラ競馬場の人望が厚く革新的なCEOパット・キーオ氏によれば、この問題は愛チャンピオンズウィークエンド(9月11日・12日)までには解消されるようだ。というのは、その頃までにボルジャー調教師は英2000ギニーと愛2000ギニー、英ダービー(G1)と愛ダービー(G1)、セントジェームズパレスS(G1)などを制してしまうだろうから。

 ボルジャー調教師にとって不可能なことはない。彼には、平地シーズン全体の物語を描くことができるマックスウィニーとポエティックフレアという2頭の3歳馬がいるのだから。最初の数章はとにかく1人の男についての話となった。

 ローリー・クリアリー騎手は騎手生活において最高の勝利を収めた後、ボルジャー調教師について、「彼は真の伝説であり紳士です。あのような馬の騎乗を私に任せるなんて、本当に特別な人です」と語った。

 おそらく、他の調教師たちは違うところに目を向けたかもしれない。フランキー・デットーリ騎手はニューマーケットのありふれた開催で騎乗していたし、ビリー・リー、デクラン・マクドノー、ロナン・ウィーランなどの騎手もこのレースで騎乗していなかった。

 しかしボルジャー調教師は自分のやり方で臨み、気に入った騎手とコンビを組んだ。その結果、完璧な先行逃げ切り勝ちを決めることができた。クリアリー騎手はラップタイムを正確に読み、戦闘的な同厩舎馬を撃退するのに十分な力を蓄えたのだ。

 マックスウィニーが昨年の7月にカラ競馬場で初勝利を挙げたとき、筆者はその場にいた。彼は単勝1倍台のウェンブリーを撃退するために、驚くべきと言うよりも職人のようなパフォーマンスを見せた。しかしボルジャー調教師の娘であるウナ・マニング氏は競走後に記者に囲まれたとき、興味深いことを話してくれた。

 「ボスはマックスウィニーのパフォーマンスを見て喜んでいます。彼のダービー馬ですからね」。筆者がこの話をちゃんと聞いていれば、現在パディパワー社がダービーでこの馬につけている単勝8倍よりもずっと有利なオッズで馬券を買えたに違いない。

 さらにマニング氏はこう続けた。「彼はパリッシュホール(2011年デューハーストS優勝馬)のファミリー(牝系)に属しています。前走では、他馬の騎手の鞭が鼻に当たってしまい、それが原因で身をかわしてしまったのです。私たちは彼にとても満足しています。ボスはまだ彼の今後の進路を決めていませんが、1つの競走に2頭を走らせようとは本来考えていないので、当然彼とポエティックフレアは別々のレースに出走させるでしょう」。

 ボルジャー調教師は今回2頭を同じレースに出走させたが、このレースのように人気薄の馬が先着し"馬単"が利益をもたらすようなことはほとんどない。

 ボルジャー調教師の愛2000ギニー初制覇は、無観客で達成された最後の勝利だったと言えるだろう。カラ競馬場は私たちが最後に目にして以来、今や花盛りとなっており、すべての競馬ファンをふたたび迎えるのが待ち遠しそうである。

 その瞬間は9月の愛チャンピオンズウィークエンドとなるかもしれない。そこで、ボルジャー調教師がまだ優勝していない唯一のアイルランドのクラシック競走である愛セントレジャーS(G1)の制覇を目指す可能性もある。彼は伝統的なクラシック競走を全て制しているが、3歳以上を対象とする愛セントレジャーSはまだ制覇できていない。

 今回の勝利は、ボルジャー調教師の真骨頂と言えるだろう。自らのやり方、馬、騎手で、それを成し遂げた。これこそクラシックなジムである。

By David Jennings

[Racing Post 2021年5月22日「Irrepressible Bolger does it his way again」]


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