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2021年04月01日  - No.12 - 1

米国調教馬ミスティックガイド、ドバイワールドカップ制覇(ドバイ)[その他]


 総賞金1,200万ドル(約13億2,000万円)のドバイワールドカップ(G1)が創設されて25年が経つが、このレースの主催者を打ち負かすことは依然として難しい。

 ドバイワールドカップの創設者であり、アラブ首長国連邦(UAE)の副大統領兼首相を務め、ドバイの首長でもあるモハメド殿下は、ミスティックガイド(牡4歳 父ゴーストザッパー)が2021年ドバイワールドカップ(3月27日 メイダン)で3¾馬身差の勝利を果たしたことで、このレースで最多の9勝を達成した。ケンタッキー州産のミスティックガイドは、殿下の競馬・生産事業体ゴドルフィンの自家生産馬である。

 ミスティックガイドはドバイのゴドルフィンチームだけでなく米国にも勝利をもたらした。なぜなら、同馬は米国のマイク・スティッドハム調教師に管理され、米国を拠点とするルイス・サエス騎手が鞍上を務めたからだ。ミスティックガイドは、このレースを制した12頭目の米国調教馬となった。

 サエス騎手は、昨年の第1回サウジカップ[総賞金2,000万ドル(約22億円)]でマキシマムセキュリティに騎乗して先頭でゴールしており、中東のビッグレースでの勝利を経験していないわけではない。

 ドバイワールドカップでは、人気薄のハイポセティカル(Hypothetical)とキャッペッザーノ(Cappezano)が先行して道を示す中、サエス騎手はミスティックガイドに完璧な位置を取らせることができた。そしてその後は同馬が残りの仕事をやり遂げた。

 ミスティックガイドは3コーナーを回ったあたりで2番手に進出し、最終コーナーを回って直線に向かったときにハイポセティカルをとらえて引き離して先頭でゴールした。2000mのこのレースの勝ち時計は2分1秒61だった。

 先行馬を追走していた日本のチュウワウィザードは2着を確保し、もう1頭のゴドルフィンの自家生産馬(ケンタッキー州産)でフランス調教馬のマニークール(Magny Cours)がそれに続いた。ハイポセティカルは勢いを失い4着となった。

 他の3頭の米国調教馬は、いずれも脅威的存在にはならなかった。ヘスースチーム(Jesus' Team)は6着、スリーピーアイズトッド(Sleepy Eyes Todd)は10着、タイトルレディ(Title Ready)は11着に終わった。

 今回のドバイワールドカップ制覇が、ミスティックガイドにとってG1初優勝となった。同馬は昨秋、G1初挑戦となるジョッキークラブゴールドカップS(G1 ベルモントパーク)で2着となっていた。その後、4歳初戦のレイザーバックH(G3 2月27日 オークローンパーク)で圧勝を決めたことで、サエス騎手はミスティックガイドがドバイワールドカップでも実力を発揮できると確信していた。

 同騎手は、「彼は今日、自らがチャンピオンであることを証明しました。彼はこれからもますます力をつけていくでしょう」と語った。

 ミスティックガイドを信じていたのはサエス騎手だけではない。米国のパリミューチュエル賭事で同馬は1番人気となり、その払戻金は2ドル(約220円)につき5.50ドル(約605円)だった。

 サウジカップ(2月20日 リヤド・キングアブドゥルアジーズ競馬場)の上位4頭が出走しなかったことも、ミスティックガイドの人気に拍車をかけた。

 その4頭のうちの1頭、サウジカップ3着馬グレートスコット(Great Scot)は出走予定だったが、返し馬で騎手を振り落として疾走するという失態を犯し、最終的に競走除外となった。またミリタリーロー(Military Law)も発走直前にゲートを突き破って放馬状態で走り、数分後に捕らえられたものの結局除外となった。

 ミリタリーローの放馬により、各馬は一旦ゲートから出され、再びゲート入りした。先にグレートスコットの放馬もあったためにかなりの遅延が生じ、ドバイワールドカップは約15分遅れで発走した。

 サエス騎手はこの遅れで少し不安になったことを認めたが、ミスティックガイドは冷静だったと述べた。「ええ、私は少し心配していたのですが、彼はリラックスしていましたよ。 あのとき内側のゲートにいた馬が少し神経質になっていたので、彼のことを少し心配したのですが、素晴らしい仕事をしてくれました」。

 レース後のテレビのインタビューで、世界最大級のレースであるドバイワールドカップを制した感想を聞かれたサエス騎手は、「子供の頃の夢だったんです。今、自分がここにいることが信じられません。これは私にとって最も素晴らしい快挙です」と答えた。

 ミスティックガイドのドバイワールドカップ制覇は、1979年に調教活動を開始したマイク・スティッドハム調教師にとって、初めての海外でのG1勝利だった。また、管理馬を北米以外に遠征させたのはミスティックガイドが初めてだった。

 同調教師は米国でG1・4勝を挙げている。直近では2017年ファーストレディS(芝G1 キーンランド)でのジペッサ(Zipessa)の勝利が挙げられる。

 スティッドハム調教師は、「モハメド殿下のドバイワールドカップの25周年の記念日にここにいることをとても誇りに思います。この馬の才能には限度がありません。来年もぜひ戻ってきたいと思います」と語った。

 ケンタッキー州で生産されたミスティックガイドは、複数のG1を制した牝馬ミュージックノート(父エーピーインディ)を母とする。ミュージックノートが送り出した仔8頭のうち5頭が出走し、ミスティックガイドを含む4頭が勝馬になっている。ジーナ(Gina)という未出走の2歳牝馬(父マクレーンズミュージック)もいる。

 ドバイワールドカップは、ドバイにおいても海外においても、引続き2021年をゴドルフィンにとって記憶に残るものにした。2020年にエクリプス賞の最優秀馬主に選出されたゴドルフィンの米国の拠点には、マックスフィールドやケンタッキーダービー(G1 5月1日 チャーチルダウンズ)の現時点での1番人気であるエッセンシャルクオリティなどのG1馬がいる。

 今年のドバイワールドカップナイトは、新型コロナウイルスの感染予防措置として無観客で開催されたことで、幸福感と同時に悲壮感に包まれた。

 ミスティックガイドのドバイワールドカップ優勝の前には、ミシュリフがサウジカップでの勝利に続き、総賞金500万ドル(約5億5,000万円)のドバイシーマクラシック(G1)で輝きを放っていた。その数時間前には、ドバイゴールデンシャヒーン (G1)でゼンデンが1着でゴールした後に故障して安楽死措置が取られたことで、勝利は悲劇に変わっていた。

 昨年のドバイワールドカップナイトは、コロナの感染拡大により中止となっていた。

 ドバイワールドカップナイトは、ドバイの副首長でありUAEの財務大臣である故ハムダン殿下への追悼で締めくくられた。ハムダン殿下はシャドウェルステーブルとシャドウェルスタッドを率いて、競馬界・生産界のために長年貢献した。

By Byron King

(1ドル=約110円)

[bloodhorse.com 2021年3月27日「American Shipper Mystic Guide Wins Dubai World Cup」]


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