マルチアリス調教師、ドーピング疑惑で2025年4月まで業務停止処分(フランス)[その他]
フランスギャロの裁決委員たちは、"重大な薬物ルール違反"から"調教事業の違法運営"にいたる5つの個別事案について、アンドレア・マルチアリス調教師に対する裁定を下した。これにより、同調教師は4年以上競馬界から追放される見通しに直面している。
懲罰委員会が"計画的なドーピング行為"と呼ぶ事案において、ある調教師はマルチアリス調教師が2020年8月にサンクルー競馬場に向かう途中に注射器を所持しているのを目撃していた。
マルチアリス調教師はすでに、6ヵ月間の業務停止処分に服している。それは同調教師が姉のエリザベッタ氏に監視させて、南フランスを拠点とするある調教師の名義で自身の厩舎の数頭の馬を走らせるという企みに関わったためである。
当初の取調べとは別に実施された一連の調査の結果、同調教師は現在、2025年4月まで馬の管理も所有も禁じられようとしている。
ミラノを拠点とするアントニオ・マルチアリス調教師の息子である同調教師は、昨年6月にサンクルー大賞(G1)をウェイトゥパリスで制し、G1初優勝を達成していた(訳注:ウェイトゥパリスは昨年11月に海外からの唯一の遠征馬としてジャパンカップに出走して10着となった)。
しかし4つの業務停止処分を立続けに言い渡され、その合計が3年9ヵ月にもなることで、マルチアリス調教師のキャリアは今や破滅に向かっているようだ。フランスギャロの裁決委員たちはこれらの事案について、"同調教師は競馬施行規程に違反しているだけでなく、いくつかの事例で管理馬の福祉に反した行動を取っている"と主張した。
新たに業務停止処分が裁定された事案の1つ目は、獣医師による事前診療も処方もなく、注射を打たれた6頭の馬に関するものである。この事案は、グヴィユー(シャンティイ)の馬診療所のフェルナンド・カノニチ(Fernando Canonici)所長が懸念を提起したことで判明した。
マルチアリス調教師はカノニチ所長の主張に反論したが、フランスギャロの獣医部門が指揮した調査の結果、6頭への競走の72時間前から48時間前のあいだの注射行為を示す措置が行われていたことが分かった。
2つ目の事案は、さらに4頭へのコルチコステロイド投与をめぐるものである。2020年10月に実施されたマルチアリス厩舎の敷地内への立入検査で押収された領収書に、これらの馬に競走前3日以内に再び注射が打たれたことが示されていた。
この立入検査により、大量のベトネゾール(Betnesol ステロイド系薬物ベタメゾンの商品名)と非ステロイド系抗炎症薬メロキシカム(meloxicam)を異なる獣医師から購入したことを示す領収書が合計26件発見された。
これら4頭の中で、牝馬ブラックモーニング(Black Morning)はサンクルーでのレース中に故障を発症していた。マルチアリス調教師は「ブラックモーニングはレース中に躓いたために跛行を発症しました」と主張していたが、同馬は獣医師が「2週間は出走不可」という明確な指示を付けてベトネゾールの注射を処方した2日後に出走していた。
裁決委員たちはこの事案について12ヵ月間の業務停止処分を言い渡す際に、「競走馬に繰返しもしくは反射的な方法で医療措置を施すべきではありません」と指摘した。
3つ目の事案は間違いなく最も衝撃的である。それは、ある調教師が"マルチアリス調教師が駐車場で透明な液体が入った注射器を所持していたのを見た"と8月31日にサンクルー競馬場の職員に報告したものである。マルチアリス調教師はその時に注射器をズボンの中に隠したと報告されている。
その日に出走した同調教師の管理馬2頭はいずれも、競走前と競走後に薬物検査を受けていた。そのうちの1頭である牡馬ボジオ(Bosioh)は競走前に尿検体が禁止薬物の陽性反応を示したとされたが、競走後検査では陰性とされていた。
マルチアリス調教師は新型コロナウイルス感染予防策の一環として使用したハンドジェルによる"偽陽性"だと主張したが、この事案を担当した裁決委員たちは「競馬場で"計画的ドーピング行為"が行われたことを立証し、そう見なすのに十分な出来事です」と指摘した。
残る2つの事案は次のとおりである。
・ 昨年9月、リヨン-パリイ競馬場で管理馬への薬物検査の要請に従うことを拒否。4,000ユーロ(約52万円)の制裁金を科された。
・ さらにシャンティイを拠点にするロシア人の調教師免許保有者イーゴリ・エンドタルセフ(Igor Endaltsev)氏と協力し、2つ目の調教事業の違法運営を行った。9ヵ月間の業務停止処分を科された。
マルチアリス調教師はこれらすべての事案、もしくはいくつかの事案について上訴するかもしれない。
By Scott Burton
(1ユーロ=約130円)
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