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2020年11月05日  - No.43 - 2

2000年BCクラシックで対戦したティズナウとフサイチペガサス(アメリカ)[その他]


 この季節になると、スタートから最初の2ハロンを21秒で走るように、サラブレッド事業に関する様々なニュースが目まぐるしく進行する。この2週間のあいだ、ほぼすべての種馬場から2021年の新種牡馬に関する契約、来シーズンの種付料についての知らせが殺到している。大半の種付料は、今年の1歳セールの結果を鑑みて引き下げられている。

 一方、11月6日・7日にブリーダーズカップ開催(BC競走14レースを含む)がキーンランド競馬場で施行される。いつものように、10月末は浮き浮きさせられる時期である。

 今週生産者とブリーダーズカップのファンは、マーケットリーダーであるウィンスターファームとアシュフォードスタッド(クールモアの米国の拠点)の種付料発表に添えられた2項目に注目したが、それらに気付くには少し注意して見る必要があった。ウィンスターファームの発表には最後のほうに"ティズナウ、種牡馬引退"、そしてアシュフォードスタッドの発表には"フサイチペガサス、来年は種付けを行わない"と記されていた。1997年生まれのこれら2頭は見たところ、まったく異なる道を辿ってきたようだが、いずれも傑出した競走馬となり、米国の血統書に大きな影響をもたらした。2頭は人々の記憶に残る2000年BCクラシック(G1)に出走し、その後の計り知れない20年の月日をバックミラーに残していった。

 フサイチペガサスは生まれながらのスターだった。生産者は、アーサー・ハンコック3世のストーンファームとボブ&ジャニス・マクナイア夫妻のストーナーサイド。父は血統を形成したミスタープロスペクター、母はエンジェルフィーバー(Angel Fever)である。フサイチペガサスは一世代に一度めぐってくるような馬だった。すなわち、キーンランド1歳セールで最高価格馬となり、その購買額に答えるような馬だった。同馬は1998年キーンランド7月セールで、ド派手な日本人ビジネスマン、関口房朗氏により400万ドル(約4億2,000万円)で落札されてセンセーションを巻き起こした。

 ティズナウも堅実な血統である。それでも、カリフォルニア州のセシリア・ストラウブ・ルーベンス氏の自家生産馬は1歳セールにおいて7ケタ(100万ドル以上)で落札されるとは思われていなかった。同馬の父はシーズティジー、母はシーズソング(Cee's Song)、母父シアトルソングである。

 2頭は2000年BCクラシック(チャーチルダウンズ)に向けてまったく異なる進路を辿ることになる。フサイチペガサスは当時1番人気馬が優勝することが珍しかったケンタッキーダービー(G1)を単勝3倍の1番人気で制したが、ピムリコ競馬場の良馬場で行われたプリークネスS(G1)ではレッドバレットの2着に敗れた。ニール・ドライスデール調教師は夏のあいだ、フサイチペガサスを休養させ、BCクラシックのステップレースとして9月後半に1マイルのジェロームH(G2)に出走させた。

 それに対し、ティズナウ(ジェイ・ロビンス厩舎)は5月31日まで初勝利を挙げられなかった。しかし夏以降は、9月30日のスーパーダービー(G1)、10月15日のグッドウッドブリーダーズカップH(G2)を制して、感銘を与えた。

 その年のBCクラシックの出走馬には、この2頭のほかにキャプテンスティーヴやアルバートザグレート、そして欧州の"鉄の馬"ジャイアンツコーズウェイなどの3歳強豪馬が揃っていた。ジャイアンツコーズウェイは重賞5連勝を果たしていたが、ダート初挑戦だったために、フサイチペガサス、そして単勝7倍の4歳馬レモンドロップキッドに次ぐ単勝オッズ8倍で、3番人気となっていた。

 多くのBCクラシックで見られてきたのと同様に、2000年の同レースでも最後の直線での競り合いが長々と繰り広げられた。ティズナウは、果敢なジャイアンツコーズウェイをわずか首差で破った。フサイチペガサスは全力を発揮し損ねて6着に終わった。そしてティズナウは翌年にくすぶったマンハッタン街を背景にベルモントパークで行われたBCクラシックで、より優れたパフォーマンスで劇的な勝利を果たし、同レース2勝目を挙げた。この勝利は、9.11のテロから立ち直り始めていた米国を勇気づけた。

 フサイチペガサスは報道によると6,000万ドル(約63億円)でシンジケートが組まれ、2001年にアシュフォードスタッドにおいて種付料15万ドル(約1,575万円)で供用された。その後、豪州のクールモアとチリのドンアルベルト牧場にシャトルされた。一方、ティズナウは2002年にウィンスターファームで種牡馬入りし、テイラーメイドファームとの共同所有で種付料3万ドル(約315万円)で供用された。

 フサイチペガサスは初年度産駒としてG1馬ローマンルーラーを送り出し、全体で86頭のステークス勝馬を送り出した。

 ティズナウ自身は2歳でデビューしなかったものの、種牡馬としては初年度産駒から早熟な馬を送り出した。牝駒フォークロアはBCジュベナイルフィリーズ(G1)優勝馬となり、エクリプス賞を受賞した。10月26日現在、ティズナウは90頭のステークス勝馬を送り出している。

 ティズナウはブルードメアサイアー(母父)として、ティズザロー(ベルモントS優勝馬)を送り出している。ティズザローは3歳での優勝を果たすべく、2020年BCクラシックを目指す。

By Evan Hammonds

(1ドル=約105円)

[bloodhorse.com 2020年10月28日「What's Going On Here-Now and Then」]


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