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2020年06月04日  - No.22 - 2

北米最高賞金獲得馬アロゲートが7歳で死亡(アメリカ)[生産]


 ジャドモントファームの優秀な競走馬で前途有望な種牡馬、アロゲート(7歳 父アンブライドルズソング)は神経疾患のような症状が見られた1週間後の6月2日に安楽死措置が取られた。病名はまだはっきりとしていない。

 アロゲートが3年目の種付シーズン終盤の5月最終週に首痛の症状を見せたため、ジャドモントファームは同馬の種付けを停止した。その週の後半、馬房にいたアロゲートは地面に倒れ込み、立ち上がることができなくなった。同馬はハギャード馬診療センター(Hagyard Equine Medical Institute)に搬送され、ボブ・ハント(Bob Hunt)博士とネイサン・スロヴィス(Nathan Slovis)博士の治療を受けた。

 ハギャード馬診療センターのスタッフは、確認できる症状の原因を取り除き、脊椎穿刺・レントゲン・超音波・CTなどあらゆる検査を行い、血液検査も何度も行った。アロゲートは4日にわたって献身的な治療を受けたものの、依然として立ち上がれなかった。そして深刻な機能障害が生じ始めたために、安楽死措置の判断を下すことを余儀なくされた。

 芦毛のアロゲートは今年、種付料5万ドル(約550万円)で供用されていた。現役時代には1,742万2,600ドル(約19億1,649万円)の賞金を獲得し、北米最高賞金獲得馬に輝いた。母はステークス勝馬バブラー(Bubbler 父ディストーテッドヒューマー)で、クリアスカイファーム(Clearsky Farms)により生産された。2014年キーンランド9月1歳セールにおいて、エージェント(馬売買仲介者)のドナート・ラニー(Donato Lanni)氏がカリド・アブドゥラ殿下(ジャドモントファームのオーナー)の代理でアロゲートを56万ドル(約6,160万円)で落札した。

 アロゲートは3歳シーズンの4月にようやくデビューしたが、すぐにその世代において圧倒的な強さを見せた。トラヴァースS(G1 ダート約2000m)では36年間破られていなかったコースレコードを塗り替え13½馬身差の勝利を決め、BCクラシック(G1)では後に2016年米国年度代表馬となるカリフォルニアクロームを下した。5連勝を果たしたアロゲートは、2016年最優秀3歳牡馬に選ばれた。

 アロゲートは、総賞金1,200万ドル(約13億2,000万円)の第1回ペガサスワールカップ招待S(G1 ダート約1800m)をコースレコードで制し、4歳シーズンを順調に始動した。そして総賞金1,000万ドル(約11億円)のドバイワールドカップ(G1)では、最後方から追い上げ先頭に立つという信じ難いスタイルで勝利を手にした。アロゲートは通算成績11戦7勝(2着1回、3着1回)で引退した。

 ジャドモントファームのギャレット・オールーク(Garrett O'Rourke)場長はこう語った。「驚くべきスタイルで果たしたG1・4勝が、アロゲートの"現代の最強馬"という地位を確立しました。2つの競馬場でコースレコードを打ち立て、BCクラシックではカリフォルニアクロームとの世代間対決を制し、さらにドバイでは最高のパフォーマンスでガンランナーを抜き去りました。まだ若い彼を失い、心を痛めています。彼の産駒の活躍を見ることによって、この悲しみがいくらか癒されるかもしれません」。

 アロゲートを管理したボブ・バファート調教師は、ジル夫人とともに悲んでいると述べた。「これまで手掛けた中で最も優秀な馬の1頭でした。ドバイワールドカップでのレースぶりは、私の管理馬が達成した最高のパフォーマンスの1つに数えられるでしょう。トラヴァースSでの快挙。偉大なカリフォルニアクロームを破って手にしたBCクラシックでの勝利。ペガサスワールドカップで他馬を撃退して成し遂げた勝利。最後方から上がって行ってガンランナーを抜き去ったドバイワールドカップでの勝利。これらの魔法のようなパフォーマンスを成し遂げるような馬には二度と出会えないでしょう」。

 バファート調教師は、アロゲートの抜群の運動能力は大きなストライドと驚くべきスタミナによりもたらされたと述べた。「彼はレース後に大きく呼吸を乱すことはありませんでした。ドバイワールドカップの後も疲れ知らずで、何のダメージもありませんでした。セクレタリアトのような心臓を持っていたに違いありません。どの馬もドバイであのようなレースを勝つことはできなかったでしょう。アロゲートはスペキュタクラービッドのように純粋に偉大な馬です」。

 アロゲートの全11戦のうち7戦でコンビを組み、驚くべきG1・4勝を果たした殿堂入りジョッキーのマイク・スミス騎手は、この快速の芦毛馬に乗るのがどのようなものだったかを振り返った。「坂を下る電車のようでした。進めば進むほど速くなり、加速し続けました。彼に乗るのはとても楽しく、そのストライドとスタミナは素晴らしいものでした。それでいてとても戦術的で、その戦術を成し遂げるスピードを持っていました。これまで乗った馬の中で2000mでは最速の馬でした。トラヴァースSで優勝してコースレコードを打ち立てたときは、目を見張りました」。

 「アロゲートの死は本当に悲しいです。長い生涯ではなく、若くして死んでしまいました。彼のキャリアは瞬く間に過ぎ去り、その生涯も同じでした。しかし短い生涯でも、競馬界に途方もない影響をもたらしました」。

 アロゲートの初年度産駒は昨秋の当歳セールに上場され、上々の評判を得た。ファシグティプトン11月繁殖セールとキーンランド11月繁殖セールを終え、アロゲート産駒の平均価格は31万1,250ドル(約3,424万円)。最高価格馬は、キーンランドにおいて42万5,000ドル(約4,675万円)で落札された産駒である。

 アロゲートを支持する数人の生産者は、2020年の1歳セールに上場するために、同馬の初年度産駒の多くを手元に置いていると述べた。そのため、今年のセリでは大きな利益を上げることが見込まれている。

By Eric Mitchell

(1ドル=約110円)

[bloodhorse.com 2020年6月2日[Juddmonte's Champion Arrogate Dies at 7]]


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