ローレンス、仏オークスを制して調教師・馬主・騎手の夢を叶える(フランス)[その他]
偉大な競走馬生産者アレック・ヘッド(Alec Head)氏は"馬は強い心を持って走れば勝つ"と好んで言うが、ローレンス(Laurens)が現役馬の中で最も強い心を持つ馬であることにはほとんど疑いの余地がない。
P・J・マクドナルド(PJ McDonald)騎手に首の後ろを掴まれて合図を送られたローレンスは、残り2ハロン(約400m)でかなりペースを上げ、勇敢な抵抗を試みた末に、スリリングな僅差の勝利を収めた。
ミュージスアミカ(Musis Amica)はほぼ不可能な任務を自らに課していた。前半での遅れを取り戻すために外側を回って激しい勢いで追い上げ、信じられないような状況で2着を確保したのだ。オメリック(Homerique)、ハッピリー(Happily)、ウィズユー(With You)もゴール手前で死闘を繰り広げていた。
しかしローレンスは、マクドナルド騎手と馬主のジョン・ダンス(John Dance)氏とカール・バーク(Karl Burke)調教師にとって一生に一度の牝馬である。勝負を諦めず走り抜いただけでなく、ゴール板を過ぎてもまた走り出すのではないかという印象を騎手に与え、凱旋門賞(G1 芝2400m)での栄光を夢見させるほどだった。
現時点でローレンスの凱旋門賞優勝には17倍のオッズがつけられている。過去10年間で、3歳牝馬が凱旋門賞を4回制していることを考えれば、気前の良いオッズである。
バーク調教師は今回初めてクラシック競走で優勝したが、9年前にロードシャナキル(Lord Shanakill)でG1初勝利を挙げたのもシャンティイ競馬場においてであった。同調教師はこう語った。「厳しい勝ち方だったために、ローレンスはふさわしい評価を得られていないと感じます」。
「ローレンスは、5~6馬身差の圧勝を収めるエネイブル(Enable)のような馬ではありません。しかし、高い能力、大きなストライド(完歩)、抜群のスピードを持っていて、次から次に任務をこなしています」。
凱旋門賞(10月7日 パリロンシャン競馬場)への挑戦は確実に考慮に入れているが、バーク調教師とダンス氏はまず、調教拠点から近い競馬場での2レースを検討している。
バーク調教師はこう語った。「凱旋門賞に挑まない理由などありません。しかし、少なくとも1回は出走させてから、凱旋門賞に向かわせるべきです」。
「ローレンスをノースヨークシャーに連れて帰って、サンタラリー賞(G1)の後のように、彼女がレースの疲れから早く回復することを望んでいます。次は4週間後の愛オークス(G1 カラ競馬場)を目指すつもりです。サンタラリー賞から仏オークスまでよりも、1週間長い間隔です。また、ジョンと私はローレンスを地元のヨークシャーオークス(G1)でも走らせたいと考えています」。
ローレンスは大きなストライドで走るので、マクドナルド騎手は彼女を先行させる以外にほとんど選択肢がなかった。それでも、フランキー・デットーリ騎手が騎乗したリュミネート(Luminate)がこのレースでペースメーカーのような役目を果たしたことに満足していた。
クラシック競走初騎乗のマクドナルド騎手はこう語った。「ローレンスはとても素直なレースをします。先頭に立って勝てることを証明しました。しかし目の前に1頭いるときは、ずっと素早く加速するようです。一方、先頭に立っている時はトップギアに切り替えるのに少々時間が掛かります。しかし1頭を追いかけているときは抜群の力を出すので、今日は脇目もふらず必死に走っているのを確認できたはずです」。
寡黙で優秀なマクドナルド騎手は、障害騎手から平地のクラシック優勝騎手へと変身を遂げた。同騎手はローレンスの完璧な引き立て役に徹していた。
同騎手はこう続けた。「自分にいくらか才能があることは分かっていましたが、競馬においては適切な人々と優良馬に巡り会わなければなりません」。
「この2年間カールの厩舎に所属することができ、ジョンに会えてとても幸運でした。そこからいろいろな展開がありました」。
クラシック優勝は、ダンス氏が夢見ていたよりもずっと早く訪れた。同氏がニューキャッスルの地元スポンサーから馬主の世界に足を踏み入れて、たった5年しか経っていない。
これから勝利の祝杯のために多額の飲み物代を支払うことになるダンス氏はこう語った。「私たちはまさにローレンスを購買した日に、仏オークスについて話していました。だから、このレースに実際出走し優勝できたなんて、信じられないことです」。
「私たちはこの2週間、フィリーズマイル(G1)の優勝祝賀会を開催しようと調整してきましたが、その余裕がありませんでした。しかし、その祝賀会の規模は大きくなり続けています。実際に開催されるときにはものすごく盛大なものとなるでしょう」。
愛オークスでミュージスアミカと再戦
ミカエル・バルザローナ騎手が、G1競走の序盤で意気消沈してしまうのは珍しいことだ。ミュージスアミカは乾いた馬場でどうしようもないほど取り残され、バルザローナ騎手は残り2ハロン(約400m)の地点から死にもの狂いでその遅れを取り戻そうとした。
それでも結果的に2着となったミュージスアミカのゴール直前の猛追は、1½マイルへの距離延長に期待を持たせるものだった。同馬の次走も愛オークス(約2400m)になりそうだ。
達観したアンドレ・ファーブル調教師はこう語った。「ミュージスアミカは道中ずっと後方となってしまいました。明らかに柔らかい馬場のほうが相性は良いようです。それでも彼女の最後の猛追には満足しています。彼女はこういう走り方をします。それを変えることはできません。次は愛オークスに向かうかもしれません」。
今回がキャリア3戦目だったオメリックは、レースの数日前に追加登録されたが、陣営のその判断が正しかったことを証明した。誇りと失望が入り混じった心境のフランシス・グラファール(Francis Graffard)調教師はこう語った。
「仏オークスで3着以内に入るのは、オメリックにとって快挙です。私たちは馬群が最後の直線に入ってから、叫び続けていました。絶対に勝ちたかったのでがっかりしていますが、同時に安心しています。なぜなら、ほとんど経験のない牝馬がこのようなレースで走れるようになるのは難しいことだからです」。
ライアン・ムーア騎手が騎乗したハッピリー(Happily)は、抜け出すのに少し時間がかかってしまったために4着となった。エイダン・オブライエン調教師のシャンティイでのクラシック勝利への探求は続くことになる。
オブライエン調教師は、「ハッピリーが健闘したので、満足しています。彼女は元気を取り戻していますので、今後多くの選択肢があります」と語った。
By Scott Burton
[Racing Post 2018年6月17日「Laurens the magnificent puts Burke, Dance and McDonald in dreamland」]