名種牡馬ジャイアンツコーズウェイが21歳で死亡(アメリカ)[生産]
クールモア牧場によれば、才能豊かな競走馬で優良種牡馬として長年アシュフォードスタッド(Ashford Stud)の大黒柱だったジャイアンツコーズウェイ(Giant's Causeway 21歳)は4月16日、病気のために死んだ。
クールモア米国のマネージャーであるダーモット・ライアン(Dermot Ryan)氏はこう語った。「ジャイアンツコーズウェイのような優れた馬を生産・育成し出走させることは、すべての馬主と生産者の夢です。故郷の牧場で種牡馬として供用され、リーディングサイアーに3回輝くことは、驚くべきことにほかなりません。ジャイアンツコーズウェイは一生に一度出会えるかどうかの馬です。彼の種牡馬としてのキャリアを私たちに委ねてくださったマグニア家やテイバー家の方々に感謝したいと思います」。
「これまでジャイアンツコーズウェイに最善のケアをしてくれたアシュフォードスタッドの種牡馬マネージャーであるブレーズ・ベンジャミン(Blaise Benjamin)氏やリチャード・バリー(Richard Barry)氏をはじめ、スタッフの皆様にお礼を言いたいと思います。ジャイアンツコーズウェイがいなくなり、私たちだけでなく競馬産業全体がさびしい思いをするでしょう」。
ジャイアンツコーズウェイは、北アイルランドにある4万もの石柱群が連なる独特な海岸線にちなんで名づけられた。たくましい栗毛の同馬は、マリアズストーム(Mariah's Storm 父ラーイ)の初仔である。マリアズストームはアーリントンワシントンラッシーS(G2)、ターフウェイブリーダーズカップS(G2)など重賞を6勝し、スプリンターS(G1)で3着となった。馬主はビル&マギー・ピーターズ(Bill and Margie Peters)夫妻だったが、1996年キーンランド11月繁殖セールにジャイアンツコーズウェイ(父ストームキャット)を身ごもっている状態で上場され、クールモアの総帥ジョン・マグニア(John Magnier)氏により260万ドル(約2億7,300万円)で購買された。
オーバーブルックファーム(Overbrook Farm)のストームキャットは1996年、種付料12万5,000ドル(約1,313万円)で供用されていた。その後、ジャイアンツコーズウェイの活躍もあり、種付料は最終的に50万ドル(約5,250万円)まで跳ね上がる。
ジャイアンツコーズウェイは、アイルランドのエイダン・オブライエン調教師のもとに送られ、すぐに才能を見せつけた。デビューから4戦4勝で、2歳シーズンにサラマンドル賞(G1 ロンシャン)を制した。3歳シーズンには、11週間のあいだに英国とアイルランドでG1・5連勝を果たし、"アイアンホース"の異名をとった。その凄まじい連勝は、セントジェームズパレスS(G1 ロイヤルアスコット開催)から始まり、エクリプスS(G1)、サセックスS(G1)、英インターナショナルS(G1)、愛チャンピオンS(G1)と続いた。
しかし、その次に出走したクイーンエリザベス2世S(G1 アスコット)では2着となり連勝は途絶えてしまう。その後の舞台は米国のチャーチルダウンズ競馬場に移り、ジャイアンツコーズウェイは2000年BCクラシック(G1)に出走したが、そこでティズナウ(Tiznow)とBCクラシックの歴史上で最もスリリングなゴール前の競り合いを演じることとなる。この勝負を制したのは、クビ差で先着したティズナウだった(同馬は翌年も優勝)。ジャイアンツコーズウェイはそのレースを最後に通算成績13戦9勝(2着4回)、獲得賞金307万8,989ドル(約3億2,329万円)で引退した。
同馬はアイルランドのクールモア牧場で種牡馬入りし、約11万5,000ドル(約1,208万円)で供用された。そして2年目には同馬にとってとても重要な場所となるケンタッキーのアシュフォードスタッドに移った
ジャイアンツコーズウェイの初年度産駒からは、G1馬シャマルダル(Shamardal)など重賞馬3頭が輩出した。若い種牡馬の影響力は徐々に強くなり、セカンドクロップ(供用2年目の産駒)からはG1馬4頭を含む重賞馬8頭が出た。欧州ではシャマルダルがG1・3勝(セントジェームズパレスS、仏ダービー、仏2000ギニー)を果たした。一方、北米ではファーストサムライ(First Samurai)が最も活躍し、シャンペンS(G1)とホープフルS(G1)を制し、BCジュベナイル(G1)で3着となった。
アシュフォードスタッドで供用されていたジャイアンツコーズウェイは、2005年にセカンドクロップの獲得賞金が総額648万4,673ドル(約6億8,089万円)に上ったことで、リーディングセカンドクロップサイアーとなった。なお、2位はセカンドクロップの獲得賞金が総額408万6,404ドル(約4億2,907万円)となったフサイチペガサス(Fusaichi Pegasus)。
ジャイアンツコーズウェイは、サードクロップ(供用3年目の産駒)が競走年齢に達した2006年に、北米リーディングサイアーランキング(総合)の5位以内に初めて入った。そして、2009年・2010年・2012年に北米リーディングサイアーに輝き、2014年まで5位内に入っていた。同馬は、種牡馬生活の初期である2002年と2004年に豪州へ、2008年にアルゼンチンへシャトルされたが、2009年以降は米国にとどまっていた。
今年4月16日までに、ジャイアンツコーズウェイは重賞勝馬104頭を含むブラックタイプ勝馬178頭を送り出した。ブラックタイプ勝馬をダート・人工馬場で77頭、芝で113頭を送り出すという同馬の適応性は、"ジャイアンツコーズウェイ産駒はいつも勝利を挙げる"という期待を高めていた。
同馬の産駒のうち8頭が最優秀馬に選ばれている。それは、シャマルダル、テイクチャージブランディ(Take Charge Brandi)、アイリッシュミッション(Irish Mission)、ショウコーズ(Showcause)、ジャイアンツステップス(Giant's Steps)、ステップインタイム(Step In Time)、カンフーマンボ(Kung Fu Mambo)、バンビーナミア(Bambina Mia)である。 ジャイアンツコーズウェイ産駒は、獲得賞金が総額1億6,500万ドル(約173億2,500万円)に上り、2歳馬だけでも1,785万ドル(約18億7,425万円)を獲得している。
もちろん、ジャイアンツコーズウェイはセリにおいても大いに注目を集めた。1歳セールに上場されたジャイアンツコーズウェイ産駒の購買額は、2017年までで総額およそ1億6,400万ドル(約172億2,000万円)となり、平均価格は23万4,932ドル(約2,467万円)。100万ドル以上で取引されたジャイアンツコーズウェイ産駒20頭の中で最高価格がついたのは、2006年キーンランド9月セールにおいて260万ドル(約2億7,300万円)で購買された勝馬ジャイアントアマングメン(Giant Among Men)である。同馬の母は、ルロワデザニモー(Leroidesanimaux)の母ディッセンブル(Dissemble)である。ルロワデザニモーはG1を複数回制し、ケンタッキーダービー優勝馬アニマルキングダム(Animal Kingdom)を送り出している。
ジャイアンツコーズウェイが送り出した最高の牝馬は、テイクチャージブランディ(2014年 米国最優秀2歳牝馬)である。同馬は2015年キーンランド11月繁殖セールにおいて、ジョン・シクラ(John Sikura)氏のヒルンデールエクワイン社(Hill 'n' Dale Equine)により600万ドル(約6億3,000万円)で落札された。繁殖セールで購買されたジャイアンツコーズウェイの牝馬の購買総額は5,660万ドル(約59億4,300万円)弱。平均価格は14万98ドル(約1,471万円)。
ジャイアンツコーズウェイの牝馬は、ブラックタイプ勝馬86頭のほかブラックタイプ3着内馬95頭を送り出している。その中には2017年の米国年度代表馬で今年種牡馬入りしたガンランナー(Gun Runner)がいる。同馬はジャイアンツコーズウェイをブルードメアサイアー(母父)とする最高の競走馬である。また、G1馬でブルーグラスS(G2)3着となり今年のケンタッキーダービーに出走予定のフリードロップビリー(Free Drop Billy 父ユニオンラグズ)も、ジャイアンツコーズウェイを母父とする。
2018年にはストームキャットのサイアーラインに属するジャイアンツコーズウェイ産駒が種牡馬として活躍している。種牡馬となったジャイアンツコーズウェイ産駒27頭は、米国の異なる10州および米国以外の3か国で供用されている。その中の1頭であるエアドリースタッド(Airdrie Stud)のクリエイティブコーズ(Creative Cause)は、今年のケンタッキーダービーにレキシントンS(G3)優勝馬マイボーイジャック(My Boy Jack)を送り出す予定である。
By Blood-Horse Staff
(1ドル=約105円)
[bloodhorse.com 2018年4月17日「Giant's Causeway Dead at 21」]