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2018年03月22日  - No.11 - 3

国際的な種牡馬イルーシヴクオリティ、老衰により25歳で死亡(アメリカ)[生産]


 北米の一流種牡馬イルーシヴクオリティ(Elusive Quality 父ゴーンウエスト)は、老衰のために安楽死措置が取られた。同馬は昨年種牡馬生活から引退していた。

 25歳だったイルーシヴクオリティは、血統に大きな影響を残している。優秀な種牡馬であるイルーシヴシティ(Elusive City)、イベイシブ(Evasive)、クオリティロード(Quality Road)、レイヴンズパス(Raven's Pass)、セポイ(Sepoy)を送り出している。また、G1馬のブルードメアサイアー(母父)としても影響力を発揮している。

 種牡馬生活の大半をケンタッキーのジョナベル牧場(Jonabell Farm ダーレー所有)で過ごしたイルーシヴクオリティについて、ゴドルフィンUS社のCOO(最高執行責任者)ダン・プライド(Dan Pride)氏はこう語った。「多くの人々がイルーシヴクオリティにさまざまな思い出を持っています。モハメド殿下が米国競馬界で成功し始めた頃の優良馬の1頭です。引退後は、殿下が米国で供用した2頭目の種牡馬となりました(1頭目はクワイエットアメリカン)。産駒のスマーティジョーンズ(Smarty Jones)はケンタッキーダービー(G1)を制し、全米を夢中にさせました。イルーシヴクオリティはジョナベル牧場のチームにとって、そこにいるだけで幸せな気分にさせてくれるような馬でした。彼がいなくなると本当に寂しくなります」。

 モハメド殿下の所有馬イルーシヴクオリティは、ビル・モット(Bill Mott)調教師に管理された。1999年にケンタッキーのゲインズボロー牧場(Gainsborough Farm)で種牡馬入りした。しかし、2006年に同牧場を所有するマクツーム殿下(モハメド殿下の兄)が逝去したことを受け、ジョナベル牧場でクワイエットアメリカンと一緒に供用されることとなった。

 イルーシヴクオリティは、ベルモントパーク競馬場のデビュー戦で11½馬身差の驚くべき勝利を収めた。G1優勝を果たすことはなかったが、印象に残る数々の勝利を挙げた。4歳のときには、ガルフストリームパーク競馬場でダート7ハロン(1400m)のトラックレコードを出した。そして芝レース2戦目となるポーカーH(G3 ベルモントパーク競馬場)では、芝1600mの世界最速タイムを更新した。

 イルーシヴクオリティは他にジャイプールS(G3)など7レースで優勝し、キングスビショップS(G2)で2着、トムフールH(G2)で3着となった。

 初年度種付料はわずか1万ドル(約105万円)だったが、初年度産駒のイルーシヴシティがモルニー賞(G1)を制したことで、種付料はその後高騰する。2年目の産駒には、ケンタッキーダービーとプリークネスS(G1)を制した人気馬スマーティジョーンズがいた。同馬は三冠達成に挑んだが、ベルモントS(G1)で惜しくもバードストーン(Birdstone)の1馬身差の2着に敗れた。

 スマーティジョーンズがクラシック勝馬となったこともあり、イルーシヴクオリティは2004年に北米リーディングサイアーとなり、2005年から2007年まで同馬の種付料は10万ドル(約1,050万円)の大台に達していた。しかし、種牡馬生活から引退する直前の昨年の種付料は3万ドル(約315万円)にまで落ちていた。

 他に北半球で活躍したイルーシヴクオリティ産駒には、G1馬であるサーティファイ(Certify)、イルーシヴケイト(Elusive Kate)、メアリーフィールド(Maryfield)、クオリティロード、ジョン・ゴスデン厩舎のBCクラシック優勝馬レイヴンズパスなどがいる。

 イルーシヴクオリティは2003年~2008年、豪州にシャトルされ、最優秀馬セポイ、ATCサイアーズプロデュースS(G1)優勝馬カマリラ(Camarilla)を送り出した。また2009年~2011年にはブラジルにシャトルされ、G1馬アヴェンジャーオブライト(Avenger Of Light)、バーキンバッグ(Birkin Bag)、ボナパルト(Bonaparte)、コロラドガール(Colorado Girl)、ラストキス(Last Kiss)などのG1馬を送り出した。

 イルーシヴクオリティはブルードメアサイアー(母父)としても、世界中にG1馬を送り出した。それはゲルフ(Guelph 母カマリラ)をはじめ、ゴモ(Gomo)、ノーネイネヴァー(No Nay Never)、ロイエイチ(Roy H)、ショウナンアデラ(阪神ジュベナイルF優勝)、シューティングトゥウィン(Shooting To Win)などである。

 プライド氏はこう語った。「これからも、イルーシヴクオリティの影響力を感じ続けるでしょう。クオリティロードは種牡馬として活躍していますし、繁殖牝馬となりステークス勝馬を送り出している牝駒もいます」。

 レーンズエンド牧場(Lane's End Farm)で供用されるクオリティロードは、米国で最も有望な若い種牡馬の1頭であり、6頭のG1優勝産駒を出している。それは、アベルタスマン(Abel Tasman)、カレドニアロード(Caledonia Road)、シティオブライト(City Of Light)、フーテナニー(Hootenanny)、イルミナント(Illuminant)、クリムト(Klimt)である。

 イルーシヴクオリティは、これまで世界中でステークス勝馬242頭、ブラックタイプ勝馬130頭、重賞勝馬52頭(うちG1馬は14頭)を送り出している。

By Martin Stevens

(1ドル=約105円)

(関連記事)海外競馬ニュース 2017年No.25「国際的影響力を持つイルーシヴクオリティが種牡馬生活から引退(アメリカ)

[Racing Post 2018年3月14日「'He was so many things to so many people' - Elusive Quality dies aged 25」]


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