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2017年12月21日  - No.50 - 2

ターナー騎手、馬券を購入したかどで3ヵ月間の騎乗停止処分(イギリス)[その他]


 ヘイリー・ターナー(Hayley Turner)騎手は12月14日、"愚かな過ち"のために3ヵ月間の騎乗停止処分を科されたことを受け、遺憾の意を表明した。

 ロンドンのBHA(英国競馬統轄機構)本部において、懲戒委員会はターナー騎手に対し、プロの騎手でありながら馬券を購入したことについて審問を行い、3ヵ月間の騎乗停止処分を言い渡した。同騎手は、この裁定に対して不服申立てを行わない意向である。

 ターナー騎手は2015年11月に騎手を引退した。しかし、それ以降も断続的に騎乗し、最近ではより定期的に騎乗していた。そして、2015年12月から2017年7月まで騎手免許を有しているにもかかわらず賭事を行っていたことが、競馬施行規程のルール53Dに抵触していると判断された。

 ターナー騎手は、2015年12月に実名で開いたパディパワー社(Paddy Power)のアカウントを通じて馬券を購入していた。そして今年8月、このことは同社の指摘によりBHAの注意を引くこととなった。

 調査対象期間の大半においてターナー騎手は免許を有した騎手であり、それゆえ、勝馬投票やエクスチェンジ賭事は禁じられていた。しかし、ターナー騎手自身は、2つのライフスタイルを送っているように考えていた。一方は馬券を買えて、他方は買えない。

 同騎手はこう語った。「少し落胆しています。1年の4分の1にあたる3ヵ月間、収入が無くなります。それにBHAは、私の行動が競馬の公正確保を脅かすことはないと言っていました」。

 「私は最初から自らの非を認めています。盛んに騎乗していたときは、絶対に馬券を買いませんでした。騎手となって15年間、ルールを順守してきました。しかし、騎手を引退してメディアの仕事をしているときは、頭の中にはもう騎手ではないから馬券を買っても大丈夫という考えがありました」。

 「5ポンド(約750円)や10ポンド(約1,500円)程度の少額しか賭けていません。大した額ではありません。騎乗馬の馬券も、騎乗レースの馬券も買ったことがありません。ただ楽しむためだけでした。本格的ではありませんし、依存症のギャンブラーではありません」。

 「愚かな過ちであり、その報いを受けています。もう34歳ですが、あいにく人生ではまだまだ学ぶことがあります」。

 「たしかにルール違反をしましたが、大人になってからの人生をすべて競馬に捧げてきました。これは耐えなければならない試練です」。

 100ポンド(約1万5,000円)を賭けたことが2回あったが、大半はもっと少額で平均額は18.62ポンド(約2,793円)だった。騎手や調教師に関連した賭事パターンは確認されなかった。

 ターナー騎手は、それらは主に競馬評論家としてテレビに出演していたときに、競馬場でインターネット投票したときのものだろうと語った。全体では約160ポンド(約2万4,000円)のプラス収支であった。

 この事案の詳細については争点とはならず、BHAはターナー騎手が行ったような賭事は競馬の公正確保を脅かすものではないと結論づけた。

 ターナー騎手の弁護士であるロリー・マック・ネイス(Rory Mac Neice)氏は、これらの例外的な状況において騎乗停止処分や失格を言い渡すのはまったく不適切であると主張し、ターナー騎手の"2つのライフスタイル"を十分考慮した制裁を要求していた。同騎手は自らをもはや騎手ではないと考えていたので、"まだ騎手免許を有しているから騎手である"ということを認識できていなかったのだ。

 マック・ネイス弁護士は、ターナー騎手が明白な謝罪を行い、過ちを認め、深い後悔を示したことを強調した。

 同氏はこう続けた。「これは誤った裁定です。これは重大な過ちとなり得ますし、このようなことが起きてはなりませんでした。しかし、ターナー騎手は競馬界から得たことよりもはるかに多くのことを競馬界のために成し遂げてきました。そして、長年のキャリアにおいて汚点のない実績を挙げてきました」。

 裏取引や不正行為などはなかった。一方、ターナー騎手が競馬界の素晴らしい大使であり、女性に競馬への参加を促してきたことが認められている。しかし、懲戒委員会でこの審問の議長を務めたパトリック・ミルモ(Patrick Milmo)王室顧問弁護士は、ターナー騎手の競馬施行規程に対する認識の甘さと無頓着な態度を容赦しなかった。

 同氏はこう語った。「不本意ながら、基本的なルールを破った騎手に対して過怠金だけで済ますのは、適切ではないと結論づけました。私たちの見解では、3ヵ月間の騎乗停止処分が妥当です」。

 BHAの最高規制責任者であるジェイミー・スティア(Jamie Stier)氏は声明においてこう述べた。「英国の競馬施行規程の下、騎手はいかなるレースにも賭事を行ってならないと厳しく義務付けられています」。

 「騎手免許を付与されている者がたとえ騎乗しないレースであろうとも馬券を買えるとすれば、一般の人が競馬の公正性について持っているイメージにふさわしくありません。これは他の主要スポーツと同じです」。

 「ヘイリー・ターナー氏はルール違反を完全に認めて謝罪しました。BHAは、制裁を決定する上で、このことを考慮し処分は軽減されるべきという立場を取りました。この種の違反に対する制裁は、ガイドラインにおいて第一段階が18ヵ月間の失格です」。(訳注:"失格"は"騎乗停止処分"よりも重い罰則であり、BHAの許可なしで厩舎で働くことができず、馬の売買も競馬場の業務エリアに立ち入ることも許されない)。

 騎手協会(Professional Jockeys' Association)のCEOポール・ストラサーズ(Paul Struthers)氏はこう語った。「まず、この処分は残念なものであり、問題とされている違反に不相応です。そしてヘイリーにとって大変な代償を伴うものとなります」。

 「しかし、彼女は公平な審問を受け、意図的ではなかったルール違反への責任を認め、処分を受け入れています」。

 「この事案を巡る状況は独特であり、再び同じような状況に置かれることはまずありません。それにもかかわらず、ヘイリーは映画"ジョッキーマターズ"のシリーズに出演することを自発的に申し出ています。このシリーズは他の騎手、とりわけ若い騎手がルールをはっきり理解し違反しないようにするために、競馬と賭事のルールに焦点を合わせたものになるでしょう」。

 女性騎手の先駆者であるターナー騎手は、2005年にリーディング見習騎手のタイトルをサリーム・ゴラム(Saleem Golam)騎手と同時に獲得した。2008年には英国初の年間100勝女性騎手となった。2011年夏にドリームアヘッド(Dream Ahead)でジュライカップ(G1)、マーゴットディド(Margot Did)でナンソープS(G1)を制した。しかし、2015年シーズンの終わりに32歳で引退を発表した。

 その後、ターナー騎手はメディアでのキャリアを積んだ。最初はアットザレーシズ(At The Races)、その後はチャンネル4(Channel 4)を引き継いだ新しいITVレーシング(ITV Racing)のチームに参加している。

 ITVレーシングはターナー騎手を完全に支持しており、この事案がターナー騎手とITVとの関係に影響を及ぼすことはないと考えられている。

 ターナー騎手は、今年フランスで導入された女性騎手への2キロのアローワンス(減量特典)を利用するためにまず同国で騎乗を再開し、騎手復帰を果たすことを計画している。同騎手はこう語った。「冬の間はフランスで騎乗する計画でしたが、ルール違反をしたことを認めなければなりません。人々は私の失敗から学ぶでしょう。これは珍しいケースです」。

 「3月に再び騎乗するつもりです。騎手復帰した理由は、フランスで新しいルールが導入されたからですが、今また騎乗することに夢中になっていて、多くの勝利を挙げています」。

 「とても重要なのは、一旦は騎乗が楽しくなくなって引退したのですが、ふたたび楽しくなっていることです」。

By Graham Dench

(1ポンド=約150円)

[Racing Post 2017年12月14日「'It's a bitter pill to swallow': Hayley Turner upset after betting breach ban」]


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