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2017年09月28日  - No.38 - 3

G1競走の出走馬に最低レーティングを課す(イギリス)[開催・運営]


 BHA(英国競馬統轄機構)は8月14日、すべてのG1平地競走(3歳以上)の出走馬に最低レーティングを課した。これにより、勝つ見込みのない馬の出走を防ぐことができる。

 今年の英ダービー(G1)は、オッズ1001倍のディオールリア(Diore Lia)が出馬投票されたことで物議を醸した。今回の措置はそのような出来事を防ぐために講じられたものである。今後英ダービーの出走馬はすべて、レーティング80以上を獲得していなければならない。

 BHAは、馬と騎手の安全・健康を確保するほか、がっかりするような競走結果がもたらされるリスクを減らし、G1競走の評判を保つために、最低レーティングを設けたと述べた。

 障害競走でも同様のルールが発効する予定である。そのルールの下、重賞未勝利馬限定戦以外のG1チェイス競走やG1ハードル競走への出走馬にはレーティング130以上、重賞未勝利馬限定戦のG1チェイス競走への出走馬にはレーティング120以上が義務付けられる。これは、チェルトナムフェスティバルやグランドナショナル開催のG1競走ですでに取られている方針に合わせた措置である。2歳G1競走や重賞未勝利馬限定戦のG1ハードル競走に変更はなく、最低レーティングは設けられない。

 2005年~2016年の間に、来年導入されるこの最低レーティングを獲得せずにG1平地競走に出走した馬は、6頭だけだった。

 ジョン・ライアン(John Ryan)調教師は、2013年英ダービーにオーシャンアプローズ(Ocean Applause)を出走させたが、12頭中11着に敗れた。また、今年の英1000ギニー(G1)に未勝利馬ドリームスタート(Dream Start)を出走させたが、先頭から58馬身差をつけられ最下位となった。このルールが導入されていれば、ドリームスタートは出走できなかっただろう。

 ライアン調教師はこう語った。「勝つ見込みも進化する気配もないレーティング60の馬をG1競走に出走させたら、いろいろ言う人がいることは分かっています」。

 「ドリームスタートはエクシードアンドエクセル(Exceed And Excel)の牝駒で、モハメド殿下の素晴らしい繁殖牝馬を母とします。怪我のために手術の必要があり、復帰戦としてギニー競走に出走させるのが馬主の夢でした」。

 「あいにくドリームスタートには、英1000ギニーに出走するのに十分な実績はありませんでした。しかし、馬主に夢を諦めさせられるでしょうか?ドリームスタートの走りっぷりはそれほど悪くなく、走行妨害をしたわけではなく、他馬の邪魔になったわけでもありませんでした。どの馬がレースに出走するのに適切かどうかを決定する際には、注意深くならなければなりません」。

 レーシングポストレーティング52の未勝利の牝馬ディオールリアが今年の英ダービーに出馬投票されたことを受け、騎手協会(Professional Jockeys Association: PJA)はこの問題の解決策を求めていた。その時、最低レーティングの導入はすでに検討されていた。

 BHAは、見習騎手のジーナ・マンガン(Gina Mangan)氏がディオールリアに騎乗することを許可しなかった。このようなビッグレースで騎乗するには経験が足りないと裁定したのだ。その後、ディオールリアは怪我のためにダービーへの出走が取り消された。

 しかし、これまでダービーに出走した馬の中には、実績がほとんどない馬や全くない馬もいた。

 BHAの競走担当理事であるルース・クイン(Ruth Quinn)氏はこう語った。「最強馬を決定するレースにおいて、出走馬に競争力の最低基準を要求すべきかどうかについての議論は、以前にも持ち上がっていましたが、合意に至りませんでした」。

 「PJAがこの問題を再び取り上げたおかげで、平地競走パターン委員会(Flat Pattern Committee)がさらなる提案を検討しました。その後、今年のダービーで生じた問題が、それを実行に移す必要性を明確にしたのです」。

 「G1競走に最低レーティングを設けることには3つの利点があります。第一に、G1競走に参加する人馬の安全・健康の確保に役立ちます。実力が劣る馬が強豪馬相手に競走することで生じるリスクを軽減するからです」。

 「第二に、G1競走でがっかりするような競走結果がもたらされるリスクを減らすでしょう。実力が劣る馬が出走することによりレース中にこれまで起こったことのない複雑な事態が生じるのを防ぐからです」。

 「第三に、三冠競走の評判と、一般の人々が三冠競走に持つイメージを守る一助となります。これらがまさに最強馬決定戦であるということを確かにするからです」。

 英ダービー出走馬は最終の追加登録の前日までに、公式レーティング80まで到達していなければならない。あるいは、実績が十分でない場合は、ハンデキャッパーがその競走成績が公式レーティング80以上に相当するか査定する。

 平地パターン委員会は、最低レーティングを80とすることに満場一致で合意した。しかしクイン氏は、将来必要となればこのレーティングは引き上げられるかもしれないと述べた。

 PJAの専務理事であるデール・ギブソン(Dale Gibson)氏は、「BHAに対応を求めたのは、人馬の安全と健康が最優先と考えたからです」と述べ、こう語った。

 「実力が見合っていないのにG1競走に出走させられる馬は、レース展開に影響を与えるだけでなく、走行妨害や不測の事態が生じる可能性を高めます。他の主要競馬国は、出走馬に対して同様の制限を設けています。私たちはこの決定を全面的に支持します」。

 2018年英ダービーの登録馬はすでに確定している。馬主たちは、この競走条件の変更を文書で伝えられている。

By Jon Lees

[Racing Post 2017年8月15日「New rule to spell end of no-hopers in the Derby]


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