TOPページ > 海外競馬ニュース > 出走が危ぶまれたハーザンドが英ダービーを制覇(イギリス)[その他]
海外競馬ニュース
2016年06月09日  - No.23 - 1

出走が危ぶまれたハーザンドが英ダービーを制覇(イギリス)[その他]


英ダービー(G1・6月4日エプソム競馬場)1m4f(約2400m)3歳牡馬・牝馬

 英ダービーの数時間前、ハーザンド(Harzand)は落鉄して蹄に不具合を生じていたため、出走が危ぶまれていた。しかし深刻な損傷が認められなかったことから、陣営は一か八かの勝負に出て、結果、ダービー制覇を成し遂げた。

 アガ・カーン殿下が所有するハーザンドが1番人気のユーエスアーミーレンジャー(US Army Ranger)を撃退したことで、ダーモット・ウェルド(Dermot Weld)調教師とパット・スマレン(Pat Smullen)騎手は英ダービー初優勝を果たした。なお、アイダホ(Idaho)は3着となった。

 1着~3着はすべてアイルランド調教馬である。ウィングスオブディザイア(Wings Of Desire)が英国調教馬として最高の4着だったが、上位3頭に大きく引き離されていた。

 スマレン騎手は決勝線を越えたときにガッツポーズを取った。同騎手は当初、ダービーではハーザンドではなくミッドターム(Midterm)に騎乗するだろうと考えていたが、ミッドタームは故障のために出走が不可能となっていた。

 スマレン騎手はこう語った。「信じられません。私にとって、師匠のために勝ったということが、夢を叶えたということになります。私はただ、師匠のために勝てたことを喜んでいます。ダーモットは世界一の調教師です」。

 「今朝になって不具合があり、ハーザンドに騎乗できるとは思っていませんでした。いつも言っていますが、この勝利はチームワークのおかげです。ライアン(・ムーア騎手)が来ていることに気付いており、ユーエスアーミーレンジャーの白い顔が見えました。ずっと追いかけてくることは分かっていました」。

 「これまでの成り行きは不思議なものです。ミッドタームに乗った時、その後ダービーで乗ることになるだろうと考えていました。しかしミッドタームに故障が生じてしまい、私たちは何とかしてチャンスをつかまなければならないと考えていた時に、ハーザンドが急成長しました」。

 ウェルド調教師はこう続けた。「見事です。今朝、ハーザンドの蹄に不具合が生じた時、私たちは非常に心配しました。発走時刻まで1時間となっても、出走するかどうかまだ疑わしかったのです。しかし多大な協力があったおかげで、参戦することができました」。

 「ハーザンドは素晴らしい馬で、ダービーではすべてが上手く行きました。その前までは何も上手く行かず、パットには"発走地点に行く途中で状態が良くないのであれば、除外にしよう"と言っていました。私たちはお湯と温湿布を使い、その後4時間氷の中に肢をつけ、再び蹄鉄をつけました」。


経験の差

 オッズ13-2(7.5倍)で支持されたハーザンドにとってダービーは4戦目であり、1番人気馬よりも1レース多く経験していた。オッズ7-2(4.5倍)のユーエスアーミーレンジャーは道中で未熟さを見せていた。

 ハーザンドが先頭に立ち、ゴールまで1ハロン(約200m)を切った時、ムーア騎手はハーザンドをとらえようとしたが、ユーエスアーミーレンジャーは坂を上がるのに苦労してよれていた。

 しかし、たとえユーエスアーミーレンジャーが完全に真っ直ぐ走っていたとしても、ハーザンドに迫るには四苦八苦していただろう。結局、同馬は1馬身1/2差で敗れた。オッズ14-1(15倍)のアイダホは、シーミー・へファーナン(Seamie Heffernan)騎手を背に3着となった。

 エイダン・オブライエン(Aidan O'Brien)調教師は、ユーエスアーミーレンジャーにはまだ経験が不足していると感じており、こう語った。「これまでのレースでは上手く走ったと考えていましたが、今回はレース序盤で少し幼いところを見せました。ライアンも同じように感じたようですが、言い訳はしません。ユーエスアーミーレンジャーがどういう馬かは今後明らかになってくるでしょうが、この馬が再び出走するのをとても楽しみにしています」。

 「アイダホもよく健闘しました。彼も成長するだろうと考えています」。


凱旋門賞でのオッズ

 エプソム競馬場では、ダービーの1時間前に、ポストポンド(Postponed ロジャー・ヴァリアン厩舎)がコロネーションカップ(G1)で優勝し、凱旋門賞(G1)の最有力馬に浮上した。ハーザンドにもベットヴィクター社(BetVictor)で、ポストポンドと同様のオッズ6-1(7倍)がつけられた。

 ただコーラル社(Coral)とパディパワー社(Paddy Power)は、ハーザンドが10月にシャンティイ競馬場で優勝するオッズを10-1(11倍)とした。


レース展開

 チェスターヴァーズ(G3)2着のポートダグラス(Port Douglas)がレース序盤に先頭を走り、クロスオブスターズ(Cloth Of Stars)とアイダホも前に出ていた。

 ムーア騎手は、馬群の後方につけており、フランキー・デットーリ(Frankie Dettori)騎手を背にしたウィングスオブディザイアも同じ位置にいた。

 馬群がタッテナムコーナーに差し掛かった時、数頭がごちゃつき、ユリシーズ(Ulysses)とショーグン(Shogun)が内柵に沿って回るときにぶつかった。

 最後の直線で、ポートダグラスはクロスオブスターズに道を譲り、その後クロスオブスターズは調子よく走っていたが、ハーザンドにとらえられた。今度はハーザンドがユーエスアーミーレンジャーに迫られるが、屈服することなくゴール板を駆け抜けた。

By David Baxter

[Racing Post 2016年6月4日「Harzand shrugs off injury scare to win Derby」]


上に戻る