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海外競馬ニュース
2014年02月27日  - No.8 - 3

調教師数が減少する一方、騎手の負傷件数は増加(アイルランド)[その他]


 ターフクラブ(Turf Club)のCEOデニス・イーガン(Denis Egan)氏は、アイルランドで開業する調教師の数が2013年にさらに減少したことについてコメントし、調教師の生計維持がますます難しくなっていることを認めた。

 ターフクラブが2月3日に発表した統計によると、免許を付与された現役調教師数は2009年436人、2010年427人、2011年422人と徐々に減少し、2013年は2012年の396人を3.5%下回る382人であった。騎手への免許付与件数も減少しており、イーガン氏はこれらの数字に底が見えないことを懸念している。

 同氏は次のように語った。「調教師は深刻な状況にあります。最近多くの調査を実施しましたが、調教師が直接的に不況の影響を受けているという結果が出ました。以前は1厩舎につき預託馬は50頭でしたが、今や5頭です。調教師は経済的にやっていけない段階に来ています」。

 アイルランド調教師協会(Irish Racehorse Trainers’ Association: IRTA)のマイケル・グラシック(Michael Grassick)氏は、イーガン氏の懸念に同調した。「この4〜5年、状況は変化しておらず、実際悪化しています。調教師の可処分所得が増えるよう、金回りを良くする必要があります」。

 「調教師が十分な頭数を管理できないことでそれが難しくなっています。管理頭数が減っても費用は削れません。100頭でも10頭でも、ギャロップ走路、馬房およびその他の設備を維持しなければなりません」。

 一方肯定的な面としては、2013年に前年の4倍の調教中薬物検査が実施されたが、これらの抜き打ち検査で陽性反応はなく、競馬場で採られた3,207件のサンプル(検体)からは陽性反応はたった1件しかなかった。

 イーガン氏は今年馬法医テストの強化資金を確保するとともに、アイルランド競馬の薬物に関して汚点のない履歴を今後も継続するよう昨日調教師に対して指示した。

 同氏は次のように語った。「出走時の馬体内に禁止薬物が存在すれば、検出可能です。この2年間のように汚点なしで切り抜けられるかどうかは、まったく調教師次第です。管理馬をきちんと管理することが責任なのです」。

 グラシック氏は、アイルランド調教師協会のメンバーがターフクラブの方針を支持していることを強調し、その効果を統計により証明した。

 そして次のように語った。「支持すべきです。誰もがルールを遵守し、アイルランド競馬の潔白を保たなければなりません。薬物検査が増加したのに陽性反応が増えていないことは前向きなニュースです」。

 「汚染した飼料袋のようなものからもたらされる非常に稀な陽性反応も、調教師の過失です」。

 また統計によれば、不注意騎乗と鞭使用ルール違反の著しい減少が見られたが、“馬の全能力を発揮させるルール”に基づいて出走停止となった馬は1頭から6頭へ増加し、騎手の薬物検査での陽性反応は2012年よりも1件増加した。

 イーガン氏は次のように付け足した。「不注意騎乗への処分が近年で最低レベルに達したことに大変満足しています。2012年の新ルール採用により鞭使用ルール違反の件数も減少しました。科された罰則の件数は2004年以来最低レベルです」。

 同氏はまた前検量や後検量において負担重量が適切ではない騎手に対する処分が9倍に達したことは、新しいルールが採用されたためのものだと説明した。
 

騎手の負傷は増加

 ターフクラブの首席担当医のエイドリアン・マクゴールドリック(Adrian McGoldrick)氏は、堅い馬場のために負傷する平地騎手が続出した昨年の暑い夏はもう御免であると考えている。

 アイルランドは2013年、約20年ぶりの暑い夏に見舞われ、7月は猛暑で6月には日照り続きの状態で気温は30度に達した。馬場状態は通常より堅く、平地騎手の負傷率は倍以上となった。

 落馬騎手48人のうち22人が記録される負傷で、落馬による負傷率は2012年の20%に対し42%に上った。

 マクゴールドリック氏は次のように語った。「馬場が堅くなると、負傷者が出始めます。これは最も大きな要因です」。

 「年々変化が大きくなっていますが、過去数年の馬場状態は大体においてひどいものでした」。

 障害騎手の負傷もわずかに増加したが、マクゴールドリック氏は脳震盪の割合が減ったことには勇気づけられた。

 そして次のように語った。「ジョン・トーマス・マクナマラ(John Thomas McNamara)騎手とジョンジョ・ブライト(Jonjo Bright)騎手の深刻な負傷で衝撃を受けた年でした。良かった面では、脳震盪の割合がさらに下がりました」。

 「しかし、脳震盪後には厳しく復帰要件が定められているため、ある騎手は今なお病気休暇を認められています。競馬界におけるこの脳震盪後の復帰ルールは現在最高の基準であることに満足しています」。

 しかし、騎手という職業の人気も減少しているようである。ターフクラブのCEOイーガン氏は、「これは本当に心配です。見習い騎手の数は初めて減少して11人となり、その数字は2006年以来最少です。2013年に競馬学校を卒業した生徒の誰もまだ見習い騎手の契約書にサインしていません」。

 マクゴールドリック氏とそのメディカルチームは、2013年に見習い騎手が健康的に体重を管理できるよう予備計画を導入し2月末に見直す予定である。

 同氏は、「現時点では予備計画であり、今年どのように続けていくか決定する前に、現在騎手、調教師、ターフクラブおよびホースレーシングアイルランド(Horse Racing Ireland)からの意見を聞いています」と説明した。
 

薬物検査
・2013年:競走当日に3,207頭、調教中に283頭が薬物検査を受け、陽性反応は1件
(2012年:競走当日に3,092頭、調教中に 70頭が薬物検査を受け、陽性反応は1件)
・騎手165人が薬物検査を受け、陽性反応は4件
・騎手900人がアルコール検査を受け、アルコール反応は0件


罰則
・不注意騎乗への処分 46%の減少(2012年の151件に対して2013年は81件)
・鞭使用ルールへの処分 40%の減少(2012年の235件に対して2013年は140件)
・負担重量違反への処分 9.6倍に増加(2012年の5件に対して2013年は48件)


負傷
平地競走の落馬騎手の42%が記録される負傷であった(2012年は20%)


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By Jessica Lamb

[Racing Post 2014年2月4日「It’s getting to stage where it’s not viable to train―Egan」]


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