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海外競馬ニュース
2014年09月18日  - No.37 - 3

ダート馬場へ回帰するも忘れてはならない最初の約束(アメリカ)[その他]


 人工馬場を採用した目的は、予後不良事故をごくわずかなレベルに減らすという崇高なものであった。

 適切に敷設されたオールウェザー馬場は、大部分においてその目的を達成した。キーンランド競馬場の本馬場での予後不良事故率は、2009年から2013年までの期間では出走頭数1,000頭あたり0.97頭に減少した。同じ5年間において、すべての馬場の全体的な予後不良事故率は出走頭数1,000頭につき1.91頭であり、ダート馬場では出走頭数1,000頭につき2.08頭であった。キーンランド競馬場が人工馬場に転換したとき、勝馬予想ができないと不平を言っていた賭事客もいたが、この馬場が彼らの賭事を妨げることはなく、多くの人々はその当時主張していたキーンランド競馬場の古いダート馬場へ偏った考えをすべて忘れてしまったようだ。

 人工馬場は多くの希望を与えたが、一方で多くの頭痛の種ももたらした。その最も大きいものは、人口馬場のメインテナンスに関する知識不足と、特定の種類の人工馬場をその競馬場の気候に適合させるために必要な様々な調整に関する知識の不足であった。それに、全ての人工馬場が適切な方法で敷設されたわけではなかった。サンタアニタ競馬場は2007年から2010年の間に2種類の人工馬場を敷設し(訳注:2007年にクッショントラック馬場、2009年にプロライド馬場)、同場にふさわしい人工馬場にするべく試みたが、最終的にはあきらめて再びダート馬場に戻した。どうやらオールウェザー馬場は南カリフォルニアのひときわ陽の強い気候に一番向いている馬場ではなさそうだ。この馬場は、ウッドバインプレスクアイルダウンズターフウェイパークや北カリフォルニアのゴールデンゲートフィールズの各競馬場で明らかなように、より涼しく湿気の多い気候で成功するようである。

 しかし馬場をダートに戻すときには、競馬産業が初期の目標、すなわち“競馬場での予後不良事故を低下させ、悪化させない馬場を作り上げる”という目標を思い出すことを祈ろう。競走馬場試験研究所(Racing Surfaces Testing Laboratory)の専務理事ミック・ピーターソン(Mick Peterson)氏が実施した調査は大変役立つものであり、今後もこの目標に向かって我々は前進していくはずである。メインテナンスの手順、土の配合、散水、素材の撹拌をモニターするために精巧な装置の利用を増やすことは、非常に有益な手段である。現在私たちが持つ知識を総動員すれば、キーンランド競馬場とデルマー競馬場に新たに敷設されたダート馬場は、撤去された人工馬場と同様に安全なものとなるだろう。

 元調教師でタペタ馬場(Tapeta)の開発者マイケル・ディキンソン(Michael Dickinson)氏は、今後10年以内に人工馬場がまた戻ってくることを予測している。その可能性はあるが、おそらく高齢の競走馬がかなりの頻度で出走する庶民的な競馬場で再敷設が行われることになると思われる。私たちは2007年以降人工馬場のメインテナンスの方法について多くを学んだので、当初期待していたように、競馬場はより廉価でより高い安全性を手に入れることができ、競馬の屋台骨である競走馬をより高いレベルで保護することが可能となるだろう。

 サラブレッドを世話する者として、私たちは生まれてきたサラブレッドに対して、できる限り細心の注意を払って飼育することを約束する。その後、競馬年齢に達したとき、恵まれた馬格を最大限に生かすために人道的な方法で、育成と調教を行い、そして競走に向けて仕上げを行う。多くはスター馬にはなれないが、彼らはベストを尽くすだろう。そして彼らが出走するとき、私たちは安全性を最優先にした環境で競走させたいと思う。すべての馬場がそうなることはできないが、私たちが常に向かって取り組み続けなければならない目標であり、決して忘れてはならない約束の1つである。

By Eric Mitchell

[The Blood-Horse 2014年7月26日「What’s Going On Here―Keeping the Promise」]


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