ゴフス社ロンドンセールでフランケル産駒が上場されたことの値打ち(イギリス)[生産]
昨年愛オークス馬チキータ(Chicquita)が600万ユーロ(当時のレートで約8億4,000万円)で落札され、英オークス馬ウォズ(Was)の妹の1歳牝駒(父ガリレオ)が500万ギニー(同約8億4,000万円)で落札された時以来、我々は高額落札に麻痺してしまったようだ。
そのような状況だったので、6月16日(月)のゴフス社ロンドンセール(Goffs London Sale)で2度世界最高レーティングを獲得した無敗馬フランケル(Frankel)の初の上場産駒と、再びフランケルの仔を宿しているその母クリスタルゲーズ(Crystal Gaze)が落札された時、落札者であるクールモア牧場のマイケル・ヴィンセント・マグナイア(Michael Vincent Magnier)氏がこの3頭のパッケージ販売に付けた価格が“たったの”115万ポンド(約1億9,550万円)であったことに、ソーシャルメディアのユーザー達の間には失望感が漂った。
しかしその夜のうちに、カタールブラッドストック社(Qatar Bloodstock)が6月17日のコンヴェントリーS(G2)で2着となるカペラサンセベロ(Cappella Sansevero)を購買した価格は130万ポンド(約2億2,100万円)で、この落札額を超えることとなる。
カタールブラッドストック社の代理でフランケル産駒を上場したツイーンヒルズ社(Tweenhills)は、この取引金額でもかなりの利益をもたらしたので、意気消沈してはいないだろう。
クリスタルゲーズは、2012年のタタソールズ社12月繁殖セール(Tattersalls December Breeding-Stock Sale)において16万ギニー(約2,856万円)で購買されたが、その当時同馬の一番の仔スピリットクオーツ(Spirit Quartz)がナンソープS(G1)で2着となり、その実力を大いに発揮していた。
フランケルの2回の種付料は25万ポンド(約4,250万円)なので、飼育費を考慮したとしてもなお70万ポンド(約1億1,900万円)超の利益が出ることになる。欧州のサラブレッド馬産業において7桁(数百万ポンド)をつぎ込む団体はほとんどないことを考えると悪い数字ではない。そのような団体の1つであるカタールブラッドストック社は今回は馬を売る側であり、もう一つであるアルシャカブレーシング社(Al Shaqab Racing)が一族の上場馬の入札に参加する可能性はあまりなかった。
しかし、クリスタルゲーズとその腹にいるフランケル産駒の落札は、カタールブラッドストック社にもう1つのもっと重要な、値段を付けることができない利益をもたらした。これらの馬は、カタールの民間投資企業キプコ社(Qipco)をパートナーとして開催された第1回ゴフス社ロンドンセールで非常に大きな注目を集めたのである。
月曜夜にケンジントン宮殿のオランジェリー(Orangery )でパレードした時にこの繁殖牝馬と仔馬が繰り広げた舞台は、そこにいる多くの観衆を大喜びさせた。もしこれらの観客がこの夜に競りに参加していないとしても、将来そうする気になるかもしれない。
これに関連して、英国とアイルランドの生産界と競馬産業、そしてキプコ社が今年最初の公式パートナーとして指名されたロイヤルアスコットウィークの開催がこの舞台で大々的に紹介された。
セリに初めて上場されるフランケル産駒を報道するために世界中のカメラクルーがロンドンに集まり、月曜夜10時のBBCニュースでさえもフランケル産駒とその母馬が上場されたセリを取り上げた。
繁殖牝馬の購買額とその繁殖牝馬を2回フランケルと交配させる費用は41万8,000ポンド(約7,106万円)。ロンドンの最も有名な開催地の1つでセリを開催するゴフス社を支えることができるのか?それは未発表であるが、数万ポンドを拠出することは避けられない。世界の目が向いている1週間、英国とアイルランドの生産界に光を照らすことはどうだろう?マスターカードの古い広告を引用すると、それはお金で買えないほどの価値がある。
※1ポンド=約170円とした。
By Martin Stevens
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海外競馬情報 2013年No.12「チキータの落札額、アイルランドの記録を更新(アイルランド)」、
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[Racing Post 2014年6月18日「Presence of Frankel foal was more important than price」]