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海外競馬ニュース
2014年04月24日  - No.16 - 1

ジョッキークラブ会長、三冠出走馬の診療記録公表を要求(アメリカ)[獣医・診療]


 米国ジョッキークラブの会長は4月14日、今年の三冠競走の登録馬全頭の診療記録を公表するよう要求し、競馬産業は薬物規制の改革を円滑にするために、米国反ドーピング機関(United States Anti-Doping Agency:USADA)と共に取り組むべきだと語った。

 オグデン・ミルズ“ディニー”フィップス(Ogden Mills "Dinny" Phipps)会長は長い声明において、次のように語った。「診療記録を公表することで、競馬の象徴でもある三冠競走は数百万が観戦する中でその信頼性をいっそう高いものにします。香港ジョッキークラブ(Hong Kong Jockey Club)はそれを実行し、最高額の発売金を誇る競馬統轄機関となっています」。

 「今年の三冠競走の登録馬全頭の診療記録を速やかに閲覧可能とすることを提案します。ニューヨーク州ゲーミング委員会(New York State Gaming Commission)はそれを実行していますが、レース前の3日間の記録に限られています。もっと長い14日間の記録の公表を提案します」。

 「実際これは、ジョッキークラブのサラブレッド安全委員会(Thoroughbred Safety Committee)が2013年に勧告した“調教中の全ての治療行為と薬物使用に関する集中データベースの作成”の理念でした。大半の州はこの種の報告をすでに義務付けていますが、ほとんど例外なくわずかな情報公開しかなされておらず、その順守のされ具合にはむらがあります」。

 4月8日にケンタッキー州レキシントンで開催された北中米競馬委員会協会(Association of Racing Commissioners International:RCI)の会議を基にすれば、情報公開は複雑なものになり得る。ジョッキークラブはこの会議で、馬の治療記録を残す電子記録のモデルルールを提案したが、競馬統轄機関の代表者たちは書かれた専門用語に困惑していた。

 RCIの役員たちは、競馬統轄機関が情報を手に入れることは問題ではなく、州ごとの“公的記録開示に関する法律”と“獣医診療記録を隠す規制”のほうがずっと問題であると語った。

 RCIのモデルルール委員会の会長でありサウスダコタ州ゲーミング委員会(South Dakota Commission on Gaming)の事務総長であるラリー・イライズン(Larry Eliason)会長は、「記録を残すことが問題ではなく、公的記録開示に関する法律でも要求されている記録の保管場所が問題です。これは州ごとにばらつきがあります」と語った。

 ジョッキークラブはデータベースを設立し管理することを申し出た。

 のデイヴ・バスラー(Dave Basler)専務理事は、ホースマンは調教師が責任を持つべきルールに獣医用語で記された報告を加える提案について懸念を持っていると語った。そして、オハイオ州において獣医診療記録は一般に公開されていないと付け足した。

 バスラー専務理事は、「もしこれが一般に公開されるのであれば、大きなルール変更となるのは確かでしょう。全米ホースマン共済協会(National Benevolent and Protective Association)は競馬統轄機関が記録にアクセスすることを何とも思わないでしょうが、一般の人々がこれにアクセスすることを懸念しています」と語った。

 RCIのエド・マーティン(Ed Martin)理事長は、競馬開催州のうち13州が診療記録の提出を要求しており、12州がそれを主に文書で保管していると語った。そして、提案されているデータベースは、“RCIの記録検討とプロセスの能率化を容易にする試みである”とし、各馬の記録が入力されれば利用者はどの獣医師が関わったか関係なしにすべての治療を追跡することができるだろうと述べた。

 マーティン理事長は、「これまでどの治療が適切であるかという点から獣医診療記録が議論になってきましたが、私たちは獣医師が馬に行なっている治療内容を深く理解したいという望みを抱いています」と語った。

 フィップス会長は3月、ジョッキークラブは全米統一薬物プログラム(National Uniform Medication Program)の適用に具体的な進展がすぐに見られないのであれば、連邦当局の競馬監督を支持する構えであると述べていた。そして4月14日には、ジョッキークラブは2012年に導入された“競馬の公正と安全に関する法律(Horseracing Integrity and Safety Act)”の提出者に情報を提供したと述べた。この措置は、米国反ドーピング機関(USADA)に競馬の薬物方針を担当させるだろう。

 「全米統一薬物プログラムが提案する不可欠な改革をもたらすために、ジョッキークラブがさまざまな競馬団体とどのようにして取り組むべきかを詳しく調査するために、USADAとも接触しました」とフィップス会長は語った。

 PETA(動物の倫理的扱いを求める人々の会)による2013年にスティーヴ・アスムッセン(Steve Asmussen)調教師の厩舎での活動を記録した隠しビデオの映像公開を念頭に、今回の進展がなされた。フィップス会長はその声明において、「三冠競走シーズンに“黒い雲”が競馬界を包み込み、アスムッセン調教師に、“競馬の利益のためにケンタッキーダービー(G1)とケンタッキーオークス(G1)に参戦しないでほしい”と言うほど事態は深刻化しています」と付言した。

By Tom LaMarra

[bloodhorse.com 2014年4月14日「Phipps: Make Public Triple Crown Vet Records」]


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