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海外競馬ニュース
2013年05月16日  - No.20 - 2

中国人のサラブレッド購買は生産者にとって歓迎すべき後押しとなる(オーストラリア)[生産]


 2013年シドニー・イースター・イヤリングセールは将来、サラブレッド史において重要な出来事であったと判明するだろう。チャイナホースクラブ(China Horse Club)の名は、現在までノーマークであったかもしれないが、ジョン・ウォレン(John Warren)氏をはじめとするエージェントを通じてトップクラスの1歳馬を数頭購入し、また2〜3頭の有望な一流種牡馬の所有でクールモア牧場(Coolmore)と提携したことで、豪州のサラブレッド市場で影響力のある地位をしっかりと確立した。これは、アラブ人購買者による競馬支配が非難を浴びた年の再来なのだろうか?

 イングリス社(Inglis)のセールにおけるいくつかの激戦の取引から判断すると、アラブ人投資家は今すぐには白旗を上げないようだ。観察するのにとても興味深い1週間であったが、豪州のセリで上位落札馬の関係者が大きな利益を得たことは確かである。このセールにおいて、シャドウェル牧場(Shadwell)は21頭を購買し最大顧客となったが、同牧場のレーシングマネージャーであるアンガス・ゴールド(Angus Gold)氏はハムダン殿下(Sheikh Hamdan)の豪州と南アフリカの牧場向けに購買を行っていた。

 カタールの影響力はやや弱まっていたが、デヴィッド・レドヴァーズ(David Redvers)氏はそれでもファハド殿下(Sheikh Fahad)に随行して、セリにおいて9つの電撃的な落札を行った。またダーレーはあまり目立たずに4頭を購買したのに対し、モハメド・ビン・カリファ殿下(Sheikh Mohammed Bin Khalifa モハメド殿下のいとこ)は、自身の購買だけでなく、同じUAEのルータハ殿下(Sheikh Lootah)と共同で2番目に高額の牡馬をエミレーツスタッド(Emirates Stud)名で行った購買においても目立っていた。

 有名なジョン&ジェイク・ウォレン(John and Jake Warren)チームは別として、このセリにおいて他のヨーロッパ人購買者も積極的であった。ダーモット・ファリントン(Dermot Farrington)氏は4頭購買し、もっとも精力的に購買を行ったヨーロッパ人購買者であるが、BBA Ireland(BBAアイルランド)のエイドリアン・ニコール(Adrian Nicoll)氏、ハビー・ド・バーグ(Hubie de Burgh)氏、アンソニー・ペンフォルド(Anthony Penfold)氏、スティーヴン・ヒレン(Stephen Hillen)氏、およびブランドフォードブラッドストック社(Blandford Bloodstock)のスチュアート・ボーマン(Stuart Boman)氏もセリ購買者リストにおいて目立っていた。

 バジャーズブラッドストック社(Badgers Bloodstock)も国際投資家のために3頭購買した。

 香港勢は豪州のセリにおいて常に強い影響力を持っている。香港ジョッキークラブ(Hong Kong Jockey Club)が5頭を購買してトップで、ジョージ・ムーア(George Moore)氏が僅差で迫り、その他少なくとも8人の目立った購買者が続いた。

 これは間違っているかもしれないが、今回豪州の有力調教師の購買活動はここ数年ほど積極的でなかったように感じられた。おそらく海外勢に押されているためか、強い豪州経済における何らかのほころびの発生を示しているのかもしれない。

 しかし、現地の競馬産業の力強さは疑いようがない。それは、3週間のシドニーオータムカーニバルで提供される高額賞金が羨望とともに注目されたことや、さらに国全体の驚異的な賞金額をみれば明らかである。

 イングリス社はカタログの体裁に関してもまた各顧客のニーズに合う馬の提供においても、非常に強力なカタログを作成したという点で大半の見方が一致した。市場はどのような欠点にも手厳しいという現実を嘆く売り手ももちろんおり、落札されなかった馬の数は例年よりも多かったように思われる。しかし、中間価格と平均価格が大きく上がったことから、統計は市場の強さを裏付けた。

 有力オーナーブリーダーのジョン・メサーラ(John Messara)氏は、セールの結果を次のような簡潔な言葉で総括した。「このセールは、5年前の財政危機以来経験した中で最も堅調な市場でした」。

 上場馬の売れ行きがあまり良くなかった生産者の中にはこれに同意しない人もいるかもしれないが、笑顔を浮かべて帰る生産者が何人もいた。もしこれが中国人の投資の第一波であれば、世界中のサラブレッド市場に対して非常に歓迎すべき後押しとなる可能性がある。

By Grant Pritchard-Gordon

[Racing Post 2013年4月12日「Chinese investment could be a welcome boost for breeders」]


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