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海外競馬ニュース
2012年08月30日  - No.36 - 2

一部の有力馬主、競走当日に薬物を使用せず2歳馬を出走させることを誓約(アメリカ)[獣医・診療]


 サラブレッド競馬界で著名な馬主の一部が2歳馬を運動誘発性肺出血の治療効果があるフロセミド(furosemide)と抗出血薬の補助的薬剤を投与せずに出走させることを誓約した、と7月19日にサラブレッド馬主・生産者協会(Thoroughbred Owners and Breeders’ Association:TOBA)は発表した。

 ブリーダーズカップ社(Breeders’ Cup Ltd.)は2011年、サンタアニタ競馬場で施行される2012年ブリーダーズカップの2歳馬限定レースでサリックス(Salix)やラシックス(Lasix)として知られるフロセミドの使用は認められないと発表していた。またTOBAの支配下にあるアメリカグレードステークス委員会(American Graded Stakes Committee)は、2歳馬への競走当日のサリックス使用を禁止するよう競馬統轄団体に要請していた。

 TOBAのピーター・ウィルモット(Peter Willmott)会長は、「競走当日の薬物使用実態は、どの出走馬にも装鞍所に入るわずか数時間に薬物治療行為が行われるに至りました。この治療行為は、馬にとって長期的に有益ではなく、競馬人気を高めようと思っているのであれば、競馬ファンに伝えるべき適切な行為とはなり得ません」と語った。

 そして、「私たちは競走当日の薬物使用を根絶するためにあらゆる措置を講じなければならず、現段階では、薬物使用なしで2歳馬を出走させるという志を同じくする馬主を奨励することが一番良い方法です」と付け足した。

 TOBAの役員は、「共同で所有されている馬は、事前の合意により除かれるかもしれない」と語った。

 サリックスを投与せず所有馬を出走させてきたビル・カスナー(Bill Casner)氏は、次のように語った。「競走当日の薬物使用を許容した当初の目的は、明らかな鼻出血馬の治療と、競馬が急速に成長していた時期に出走できる馬の数を増やすことでした。調教師と獣医師はその後間もなくして、フロセミドを投与された馬は競走で優位性があることに気付き、今ではほとんどの馬に抗出血薬として投与しています。競馬統轄団体は、この有利さを取り除いて出走条件を同じにするためにルールを緩和し、どの馬にもフロセミドを使用することを認めました」。

 そして次のように続けた。「広範囲にわたるフロセミドの使用とそれに伴う脱水ストレスは、馬が回復するのにより長い時間を必要とさせるため出走回数減少を引き起こしており、競走馬に薬物を投与することは虐待的で非道であるという大衆の考えを煽りました。競馬は国際的な産業ですが、私たちは世界の他の国々と歩調を合わせていません。競走当日の薬物使用は誤った実験であったといえ、今や馬と競馬産業にとって正しいことを行うときです」。

 TOBAのダン・メツガー(Dan Metzger)理事長は、“競走当日に薬物を使用せず2歳馬を出走させる馬主”のリストが増え続けることを望んでいると述べた。若馬にサリックスや抗出血薬の補助薬を投与せずに出走させる馬主や調教師は、以前は少なかった。

 ケンタッキー州競馬委員会(Kentucky Horse Racing Commission)は6月、2014年から重賞および準重賞レースでのサリックス使用を段階的に排除することを決定した。

 

競走当日に薬物を使用せず2歳馬を出走させる馬主のリスト
ロイ&グレッチェン・ジャクソン夫妻
(Roy and Gretchen Jackson)
ネルソン・クレメンス氏
(Nelson Clemmens)
マグダリナレーシング社
(Magdalena Racing)
ジョセフィン・アバクロンビー氏
(Josephine Abercrombie)
デニス・デール氏
(Dennis Dale)
ヘレン・マセック氏
(Helen Masek)
ビル・カスナー氏
(Bill Casner)
ショウン・デイヴィス氏
(Shawn Davis)
レイリー・マクドナルド氏
(Reiley McDonald)
ロバート・クレイ氏
(Robert Clay)
アデル・ディルシェナイダー氏
(Adele Dilscheneider)
マイケル・J・マクマホン氏
(Michael J. McMahon)
ウィリアム・S・ファリッシュ氏
(William S. Farish)
カール&アンドレア・ドナフィー夫妻
(Karl and Andrea Donaghy)
ロー・パラ氏
(Ro Parra)
バリー・アーウィン氏&チームヴェイラー・インターナショナル社
(Barry Irwin and Team Valor International)
ジョン・D・ギュンター氏
(John D. Gunther)
ジョン・W・フィリップス氏
(John W. Phillips)
アーサー・ハンコック氏
(Arther Hancock ?)
オグデン・ミルズ・フィップス氏
(Ogden Mills Phipps)
ダーレー牧場&シャドウェル牧場
(Darley and Shadwell Stables)
セス・ハンコック氏
(Seth Hancock)
J・デイヴィッド・リチャードソン博士
(Dr. J. David Richardson)
フランク・ストロナック氏
(Frank Stronach)
スチュアート・S・ジャニー氏
(Stuart S. Janney ?)
フレッド・セイツ氏
(Fred Seitz)
ピーター・ウィルモット氏
(Peter Willmot)
コーリー・ジョンセン氏
(Corey Johnsen)
ビル・シヴリー氏
(Bill Shively)
アントニー・ベック氏
(Antony Beck)
ジャドモント牧場
(Juddmonte Farm)
ジョージ・ストローブリッジ氏
(George Strawbridge Jr. )
ゲイリー・ビスザンツ氏
(Gary Biszantz)
ジョン&サラ・ケリー夫妻
(Jon and Sarah Kelly)
ウォーターフォールズ牧場
(Waterfalls Stable)
ジェームズ・ブライアント氏
(James Bryant)
ウィリアム・コースター氏
(William Koester)
ウッドフォードレーシング社
(Woodford Racing) 

  

By Tom LaMarra

[The Blood-Horse 2012年7月28日「Owners Pledge to Race 2-Year-Olds Without Race-Day Medications]


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