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海外競馬ニュース
2011年05月12日  - No.19 - 3

真のスポーツマンで情熱的な生産者であったジャクソン氏を偲ぶ(アメリカ)[その他]


 近年プリークネスS(G1)を優勝し年度代表馬を受賞したことで私たちに拭いきれない記憶を残したジェス・ストーンストリート・ジャクソン(Jess Stonestreet Jackson)氏は4月21日、カリフォルニア州ガイザービルの自宅で息を引き取った。

 ジャクソン・ファミリー・ワイン社(Jackson Family Wines)、ケンダル・ジャクソン・ワイナリー社(Kendall-Jackson Winery)、その他数えきれないほどのワイン事業、そしてストーンストリートステーブルズ(Stonestreet Stables)の創始者であるジャクソン氏は81歳であった。

 ジャクソン氏は、シービスケット(Seabiscuit)の快挙などを含む1930年代に成長期にあった競馬を回想しているだろう。彼はワイン界の有力者としてのキャリアを歩むと同時にサラブレッド競馬にずっと関わってきたが、キングオブスポーツである競馬に没頭する21世紀初頭までその努力が報われることはなかった。

 サラブレッドの購買、出走、売却、生産という事業は、当初のアドバイザーであるブラッド・マーチン(Brad Martin)氏、エマニュエル・ド・スルー(Emmanuel de Seroux)氏およびブルース・ヘッドリー(Bruce Headley)氏が馬の取引において秘密手数料を受け取ったとしてジャクソン氏が告訴したことで、前途多難なスタートとなった。

 ジャクソン氏は2005年春にジョン・モイニハン(John Moynihan)氏とのパートナーシップを結び、スマートストライク(Smart Strike)の牡馬カーリン(Curlin)が2007年2月のデビュー戦で勝利したことをうけて、同馬を共同で購買する。ジャクソン氏は数年間セリで数百万ドルを費やし生産施設で数百万ドルを投資していたにも拘わらず、競馬場での成功はカーリンが巡ってくるまではその投資額に見合うものではなかった。

 2007年三冠競走の解説書には次のように記されていた。「ジャクソン氏はレースにおいて目覚ましい成功を収めたことはないが、近い将来それが達成される可能性はある」。

 実際にカーリンはその年のプリークネスSを優勝し、年度代表馬を受賞した。ジャクソン氏はカーリンを4歳シーズンも出走させるために共同馬主からカーリンを買い取り、ドバイワールドカップ(G1)も制し再度年度代表馬に輝いた。ジャクソン氏は2009年にプリークネスSをはじめ三度にわたり牡馬を打ち負かした3歳牝馬レイチェルアレクサンドラ(Rachel Alexandra)を個人購買し、3回目の年度代表馬を獲得した。レイチェルアレクサンドラはウッドウォードS(G1)においても牡の古馬を打ち負かしている。

 カーリンとレイチェルアレクサンドラの管理調教師スティーブ・アスムッセンの助手スコット・ブラジ(Scott Blasi)氏は次のように語った。「ジャクソン氏は私がこれまで一緒に働いたなかで一番の馬主です。彼がそばにいると何でもできるよう気がしました。彼はそれを実行できる立場においてくれるのです。彼は真のスポーツマンらしく、負けた時も勝った時と同じように接してくれました」。

「ジャクソン氏は他のだれも望まないようなリスクを負いました。私たちは彼がもしカーリンをブリーダーズカップの後に引退させていたら、4歳シーズンで同馬が成し遂げたことを見ることはなかったでしょう。彼は可能性を見極めるのに本当に長けていました。もしジャクソン氏がレイチェルアレクサンドラを購買するために資金を融通してくれなかったら、私たちは3歳牝馬として行った歴史的なキャンペーンで彼女の可能性が最大限に発揮されるのを見ることができなかったでしょう。私はおそらくこのようなことを二度と経験することはできないでしょうし、これはジャクソン氏が私たちの味方でいてくれたからできたことです」。

 競馬産業はジャクソン氏の競馬への貢献を素早く回顧した。

 NTRA(全米サラブレッド競馬協会)のアレックス・ウォルドロップ(Alex Waldrop)理事長は、「ジェス・ジャクソン氏は比較的短期間でサラブレッド競馬において忘れられない記憶を残しました。同氏は競馬と競馬産業における公正確保の高い基準を要求することにおいて積極的に発言しました。しかし、同氏はおそらく、2年連続で年度代表馬に輝いたカーリンや歴史上最も素晴らしい牝馬の1頭であるレイチェルアレクサンドラを含む多くの傑出馬を出走させたストーンストリートステーブルズのトップとしての快挙で最もよく思い出されることでしょう」と語った。

 同理事長は次のように付け足した。「ジャクソン氏は彼の世代において最もスポーツ精神に満ちた馬主の1人であり、2008年にカーリンを、引退させ種牡馬にする金銭的魅力があったときに、同馬を4歳シーズンも競走させるよう主張しました。印象的な2008年のカーリンのキャンペーンは、彼が知識と情熱を組合わせて成し遂げた、思い出されるもう1つの成功例です。彼がいなくなってさびしくなるでしょう。ストーンストリートステーブルズの成功に大いに貢献した彼の妻でありパートナーであるバーバラ・バンク(Barbara Banke)氏とジャクソン氏のご家族全員に私たちの心からのお悔みを申し上げます」。

 ジャクソン氏所有の他のトップホースの中には、ステークス競走勝馬であるアストロロジー(Astrology)、フォレストミュージック(Forest Music)、カンサロス(Kantharos)、ケンセイ(Kensei)、ティズワンダフル(Tiz Wonderful)がいる。ティズワンダフルはレキシントンのB・ウェイン・ヒューズ(B. Wayne Hughes)氏のスペンドスリフト牧場(Spendthrift Farm)に繋養されている。ヒューズ氏はストーンストリート牧場およびジョージ・ボルトン(George Bolton)氏と共にクリフズエッジダービートライアルS(G3)での優勝が期待されるドミナス(Dominus)を共同所有しており、ジャクソン氏とともにカーリンを所有するパートナーの1人でもあった。

 また、 ジャクソン氏の所有サラブレッドで種牡馬となったのは、アフリートアレックス(Afleet Alex)、オーサムアゲイン(Awesome Again)、エスケンデレヤ(Eskendereya)、ゴーストザッパー(Ghostzapper)およびケンセイがいる。

By Jeff Lowe and Ed DeRosa

[thoroughbredtimes.com 2011年4月21日「Jackson remembered as sportsman, passionate breeder」]
 


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