TOPページ > 海外競馬ニュース > サラブレッド引退馬基金、動物虐待の嫌疑をかけられる(アメリカ)[その他]
海外競馬ニュース
2011年04月28日  - No.17 - 4

サラブレッド引退馬基金、動物虐待の嫌疑をかけられる(アメリカ)[その他]


 米国で最大の引退馬プログラムであるサラブレッド引退馬基金(Thoroughbred Retirement Foundation: TRF)は3月18日、TRFが引退馬の管理者への支払いを滞納していることからTRFの支配下にある多数の施設において引退馬が放置されており餓死状態になっている馬さえもいる、というニューヨークタイムズ紙の記事を受けて、非難の的となっている。

 TRFのトム・ルット(Tom Ludt)会長は3月18日、この記事はTRFが管理している馬を検査した報告書の結果を間違って表現しているとし、この主張に異議を唱えた。この3月18日付のニューヨークタイムズ紙への掲載記事は、獣医であるステイシー・ハンティントン(Stacey Huntington)博士が特にオクラホマ、ケンタッキー、サウスカロライナのTRFの施設で目撃したと主張する馬の状態を中心として記されている。TRFは全米の30の施設で1,200頭以上の引退馬を管理している。

 TRFのルット会長とジョージ・グレイソン(George Grayson)理事長によれば、TRFの最大の資金提供者であるヴァージニア州の偉大なホースマンであった故ポール・メロン(Paul Mellon)氏の財団が2010年12月、ハンティントン博士にTRFの馬全頭を徹底的に調査するよう依頼し、TRFはその調査を全体的に支援した。メロン財団は2001年、TRFに500万ドル(約5億円)の寄付を行っていた。

 ルット会長は、TRFは管理馬の調査を支援したと述べたが、その調査の結果はニューヨークタイムズ紙のリポーターであるジョー・ドレイプ(Joe Drape)氏により大きく歪曲されていると主張した。

 同会長は、「発表された記事は歪曲されており、ドレイプ氏が関係する団体と管理馬の状態のついて話し合ってなかったことにがっかりしています」と語った。

 同会長は、オクラホマ州の4-H牧場から2月に馬を移動させる計画の監督者として現場にいたT・J・ローフマン(T.J. Loafman)氏は管理馬の状態を熟知している人々の1人であると語った。

 ニューヨークタイムズ紙によれば、4-H牧場に居る馬は今まで発覚した中で最も酷い虐待の事例であるとし、47頭の馬は劣悪な環境にあった。また、これらの馬のうち3頭は飢えた状態であると考えられると伝えている。

 ルット会長は、これらの馬のうちの1頭は歯のない24歳の馬であるが、TRFが世話をしている馬の多くは高齢の馬であることを指摘した。

 同会長は次のように語った。「余生を生きるために管理されている高齢の馬を扱っているが、馬の管理の質や健康状態の見方に関しては主観があると考えています。これは非常に難しいテーマです。私は専門家ではないので、第三者である獣医師に往診してもらっていますが、見解のずれが生じています」。

 ドレイプ氏は3月18日の電話会議において、ローフマン氏から入手した2月23日付電子メールには3頭の馬が“飢えている状態”にあると記されていると反論した。

 グレイソン氏は、ローフマン氏がTRFに提出した文書にはそのような表現はなく、“痩せている”ものの、目の輝きがあり綺麗な歯をしている馬が数頭いると読み取れると述べた。

 ルット会長は、TRFの理事会はニューヨークタイムズ紙が3月18日の紙面で34頭の馬が“みすぼらしく”“衰弱した”状態にあるとしたケンタッキーの牧場に関する報告書をまだ見ていないと述べた。

 同会長は次のように語った。「私たちは経済不況と競馬産業の支援の欠如のために財政的苦しい状況です。そのことはTRF傘下の牧場にも影響を与えています。私たちはこれまで継続的に牧場と一緒に取り組んできており彼らからの素晴らしい支援を得てきました」。

 ルット会長はTRFが傘下の牧場のいくつかへの支払いを延滞している事実を認識していた。

 同会長は次のように続けた。「私たちは2011年末まで支援を維持していく必要がありますが、経済的負担がのしかかっています。しかし、馬にとって最善となる方法を考えていきたいです。このことが、私たちにとっては一番重要です」。

 グレイソン氏は電話会議において、多くの人々は現在約700万ドル(約7億円)にも上るメロン財団の寄付金があるのでTRFは裕福であると考えていると語った。

 同氏は、「私たちが自由に寄付金全体を利用できるという誤解がありますが、それは事実とは異なります。寄付金の条件は、TRFの1年間で費やす金額はその時価の5%を超えてはならないと明記されています。この基金はただ馬の世話と管理のためだけに使用されます」と語った。

 TRFの定められた使命は、現役を退いたサラブレッドを放置や虐待そして殺処分から守ることである。管理馬は全体で300頭から1,200頭に増加した。TRFはニューヨークタイムズ紙の記事で挙げられた重要なポイントについて議論することになり、ルット会長はある意味ではこの記事はTRFにとって良い方向に向かうと述べた。

 同会長は、「私たちは今日多くの寄付金を現在いただいており、これは有難いことです」と付言した。

By Glenye Cain Oakford
(1ドル=約100円)

[Daily Racing Form 2011年3月20日「TRF under fire for allegedly neglecting retired horses」]
 


上に戻る