情報技術の発達と競馬場の閑散化(フランス)[その他]
今週本紙において、数人の平地競走の関係者が競馬開催日程と各競馬場の競馬番組について見解を述べた。経済状況、あちこちの競馬場に人工馬場を敷設することの正当性や不当性、事業費、人件費、そしてロンシャン競馬場の改築のような投資について素晴らしい議論が展開された。いずれにしても、“平地競走の聖地”がどうなるのかというような問題だけに強い関心を寄せるのではなく、競馬場の利用率が随分前から競馬の現状をきちんと反映する基準ではなくなっていることをやや時間を掛けて考え直さなければならない。20年前から、パリであろうと地方であろうと、繋駕競走であろうと平地競走であろうと、競馬場は稀なケースを除いて閑散化が止まらない。しかし、この現象を食い止めるための特効薬(入場料無料、活気あるイベント、パーティースペースの提供、レストランの充実など)を見つけるために先頭に立つ競馬統轄機関の会長はいない。この問題に対して何の努力もなされていない。映像商品が多様化しライブの競馬が月並みなものになっていくのと並行して、観客は競馬場を去っている。一方エキディア(Equidia: 競馬チャンネル)は魔法のような競馬観戦方法を提案している。それは、15分ごとに発走する各競走を質の高い中継映像で観戦し、自宅でくつろいで賭事を行うことである。
PMU(フランス場外馬券発売公社)が馬券発売を行うレース数の大幅増加、競馬チャンネルの優勢、そしてインターネット技術の向上は、競馬場の閑散化に拍車を掛けた。レースのライブ映像を携帯電話で見て観戦できるとは、なんと贅沢で画期的なことなのだろうか。それどころか、競馬場にいる賭事客は、関係者専用スペースには立ち入ることができず、あふれんばかりの情報(インタビュー、迫力のあるレース映像、パドックの映像、オッズの推移など)を提供してくれるテレビの前にいるほうがメリットは多い。したがって、競馬場はほとんど競馬を開催する側の競馬関係者で占められている。それは、馬主、エキディアに頼るようになり出入りが少なくなっている調教師、厩舎関係者、そしてパリ地域競馬場技術団体(Groupe Technique des Hippodromes Parisiens)および競馬統轄機関の職員である。
したがってPMUが馬券を発売する競馬開催は、圧倒的大多数の顧客にスポーツとして競馬を選択させ関心を持たせるという効力を持たなくなった。それらは、商業的な意味で最大限の賭事を提供するものになり下がってしまった。
経済に再び話を戻せば、現在の経済状況もまた競馬というスポーツ、喜び、共感、優勝したときの感情の分かち合いに影を落としている。それを残念に思うことはできる。しかし、情報技術を発達させることは、現時点でそれぞれの競馬統轄機関が収入を増加させるために見つけた唯一の解決策である。10年間で賞金は3億1,000万ユーロ(約372億円)から5億200万ユーロ(約602億4,000万円)に増加した。競馬場の閑散化を食い止めるには思い切った決断をしなければ結果は生まれない。
By François Hallopé
(1ユーロ=約120円)
[Paris Turf 2011年2月11日「Le Point de Vue−Une grosse omelette」]