騎手の負傷が、情報収集の必要性を促す(アメリカ)[その他]
最近の脳と脊髄の損傷に関する会合において、騎手組合(Jockeys’ Guild)のテリー・ミックス(Terry Meyocks)事務長は、カリフォルニア大学のある医学博士が競馬界における騎手の負傷に関するデータ不足に驚嘆していると述べた。
8月にジョッキークラブのサラブレッド安全委員会(Thoroughbred Safety Committee)から勧告されたことをうけて、競馬界は、騎手の負傷事故に関するデータベースの立上げを計画することでこの問題に取り組んでいる。最近発生した2件の騎手の負傷事故は、この必要性に対する最新の催促状となった。
9月12日にゴールデンゲートフィールズ競馬場において、24歳のマイケル・マルチネス(Michael Martinez)騎手は、騎乗馬が他の馬と接触したときに落馬し、重度の脊髄損傷、3箇所の椎骨骨折、脳出血および肋骨骨折を受けた。同騎手は、カリフォルニア州オークランドのハイランド病院(Highland Hospital)で治療を受けた。
この事故は、繋駕競走のタッド・レゲット(Tad Leggett)騎手が6月30日にトゥルサのフェアメドウズ競馬場で落馬した際に負った脊髄損傷に続くものである。ミックス事務長は、レゲット騎手はトゥルサの病院でその脊髄損傷を治療するために2回の外科手術を受け、手足を動かすまで回復していると述べた。
2006年ケンタッキーダービーの勝馬バーバロ(Barbaro)と2008年ケンタッキーダービーの2着馬エイトベルズ(Eight Bells)の悲劇的な事故を受けて、競馬界は、予後不良事故をより良く把握するために馬の故障に関するデータベースを設立した。そして馬の故障に関するデータ収集がきっかけとなって、騎手と調教騎乗者の負傷に対するデータ収集が行われることとなった。
ミックス事務長は、「私たちはこれらの負傷に関するデータを収集し、騎手が身につけていたヘルメット、保護ベストなどの用具のタイプを追跡するよう努めています。情報を収集することは非常に重要です」と語った。
同事務長は、医療プライバシーの問題が明らかに懸念事項の1つであるが、データを収集する手段はあるだろうと考えている。同事務長は、そのような情報はヘルメットやジャケットのような安全用具のデザインを改善させるだろうと述べた。ジョッキークラブのスポークスマンであるボブ・カラン(Bob Curran)氏は、安全委員会の勧告はデータベースを設けることを優先事項とするだろうと述べた。ジョッキークラブは、データベース化するために競馬界のリーダーと一緒に取り組んでいる。
2009年5月以降競馬界において4件の広く報道された脊髄損傷事故が、懸念を引き起こしている。ルネ・ダグラス(Rene Douglas)騎手は、5月23日にアーリントンパーク競馬場のポリトラック馬場で落馬し、脚を麻痺している。マイケル・ストレート(Michael Straight)騎手は、2009年8月にアーリントンパーク競馬場で落馬して6週間昏睡状態に陥り、脚を麻痺している。ジュリア・ブリモ(Julia Brimo)騎手は、2009年10月にキーンランド競馬場のポリトラック馬場で落馬し脊髄損傷を負ったが、かなりの回復を遂げた。ルイビルのクーリエジャーナル(Courier-Journal)によれば、同騎手は自身の脚を90%使う事ができるまでになった。マルチネス騎手の事故は、ゴールデンゲートフィールズ競馬場のタペタ馬場で発生した。
アーリントンパーク競馬場を拠点とする数人の騎手は12月に、人工馬場での重度の負傷は、人工馬場がダート馬場よりクッション性が良くないことから発生するとの仮説を立てた。ダグラス騎手とストレート騎手は、ポリトラック馬場の製造業者、キーンランド協会(Keeneland Association)およびマーティンコリンズ・サーフィシーズ&フッティングス社(Martin Collins Surfaces and Footings)を相手に訴訟を起こしている。
人工馬場におけるこれらの騎手の負傷はいずれも、馬が予後不良となるような重大な事故によってもたらされたものではない。それよりもむしろ、他の馬と接触したときなど、つまりどの馬場でも発生し得る事故で起きている。
By Frank Angst
[Thoroughbred Times 2010年9月25日「Jockey injuries serve as reminder of need for information」]