ニューヨーク競馬協会、セキュリティー馬房を撤廃(アメリカ)[開催・運営]
NYTA(ニューヨーク競馬協会)の経費節減策において、7月23日に開始されるサラトガ競馬場の開催の開幕時からNYRAの3競馬場のセキュリティー馬房が撤廃される。
サラトガ、ベルモントパークおよびアケダクト競馬場のセキュリティー馬房撤廃を発表するにあたり代案として、NYRAは競走能力を高める禁止薬物を見つける競馬場内薬物検査を拡大および強化するプログラムを発表した。NYRAはこれを最先端プログラムと呼び、導入から5年が経過したセキュリティー馬房を時代遅れなものとしている。
NYRAのチャールズ・ヘイワード(Charles Hayward)理事長は、「不正者に力を与えていた技術は2005年以来変化しており、今回新しく適用される薬物検査手順は、NYRAの競馬の公正確保のための対抗手段が時代遅れにならないようにすることを確実にします」と語った。
NYRAは、収入の減少が見込まれる現状において、セキュリティー馬房の運用に経費が掛かっていると認めた。セキュリティー馬房は競馬場の監視下に置かれ、出走馬は少なくとも競走の6時間前までにセキュリティー馬房に入るよう求められていた。セキュリティー馬房は、馬へのフロセミド(furosemide)投与がNYRAの獣医師のみによって行われることを確実にするとともに、重炭酸ガスの検査を実施するために使用されていた。
NYRAは、ニューヨーク州会計監査官による会計検査報告書に対応して、年間約120万ドル(約1億2,000万円)の経費節減のためにアケダクト競馬場のセキュリティー馬房の閉鎖を7月に計画していると述べた。NYRAは2010年2月、すべてのセキュリティー馬房のプログラムを終了させることを検討していた。この提案にともない、アケダクト競馬場における調教活動はなくなり、ベルモントパーク競馬場のセキュリティー馬房もより多くの厩舎スペースを作るために撤廃されるだろう。
ヘイワード理事長はまた、ホースマンに不評であるセキュリティー馬房が出走馬を減らし、NYRAの収入に痛手を与えかねないと考えている。パリミューチュエル賭事は一般的に、出走頭数が多いときに増加する。
ヘイワード理事長は、「セキュリティー馬房がNYRAの3競馬場の出走登録数に影響を与えてきたのは疑いようもありません」と述べ、よそからNYRAの競馬場へ出走する馬が不足していることを指摘したあとで、新政策が安全性を維持することを確信していると付け加えた。同理事長は「経済状況が問題なのではなく、競馬の公正確保が問題であり、NYRAの経営陣は検査手順と他の公正確保の問題がセキュリティー馬房の趣旨に取って代わると信じています」と語った。
NYRAは今後、24時間以内に出走するすべての馬を識別する“当日検査手順”を頼りにするでしょう。馬が馬房にいる間、NYRAの警備担当は、警官と獣医師の存在を通してレースまでその馬を監視することができる。競走に登録したすべての馬は、“集合馬房”を通らなければならず、そこではパドックに移る前の二酸化炭素の検査が実施される。
計画はまた、エリスロポエチン(erythropoietin: EPO)のような血液ドーピング物質、気管支拡張薬(bronchodilator)およびその他の新しい脅威的な物質を防止するため、無作為の調教中薬物検査の拡大を要求している。調教中薬物検査は、クレーミング競走への出走馬、NYRAの競馬場に輸送される馬とNYRAの競馬場から輸送される馬およびステークス競走への出走馬に的が絞られるだろう。
ニューヨークホースメン協会(New York Thoroughbred Horsemen’s Association)のリック・ヴァイオレット(Rick Violette)理事長は2010年2月、セキュリティー馬房の撤廃により公正確保が犠牲にされることはないだろうと語っていた。同理事長は、セキュリティー馬房の検査手順がホースマンに年間200万ドル(約2億円)の追加費用を負担させていると見積もっていた。ヘイワード理事長は新しい手続きに自信を持っている。
ヘイワード理事長は、「調教中薬物検査プログラムは、新しい集合馬房と“当日検査手順”と組み合わせることで、今やNYRAは競走能力向上物質を見つけ出すための有力な手段を与えられ、私たちが不正を行う可能性のある者よりも一歩先に行くことを可能にします」と付言した。
By Frank Angst
(1ドル=約100円)
(関連記事)海外競馬情報2010年No.6「ニューヨーク競馬協会、セキュリティー馬房撤廃の可能性(アメリカ)」
[thoroughbredtimes.com 2010年7月14日「NYRA to eliminate security barns」]