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海外競馬ニュース
2009年09月17日  - No.37 - 2

サリスカの敗北、発情治療について議論を呼ぶか(イギリス)[獣医・診療]


 クラシック競走2勝を含む5戦4勝のサリスカ(Sariska)は、8月18日に施行されたヨークシャーオークス(G1)ではその素晴らしい走りを見せ ることができず、レース後に発情期に入っていることが判明した。馬術競技では牝馬にホルモン剤であるレギュメート(Regumate 人間用の経口避妊薬 ピルに相当する)を使う治療が許されているが、競馬でも同様にすべきかどうかという議論に拍車がかかるだろう。

 英・愛オークスを制したサリスカは、ヨークシャーオークスで、オッズ約1.36倍の1番人気ダーレミ(Dar Re Mi)に負け、ヨーロッパオークス3冠制覇の夢は潰えた。マイケル・ベル(Michael Bell)調教師は、サリスカがベストの状態よりも約10ポンド(4.53 kg)少ない馬体重で走っていたと見ている。同調教師は、「レースの直後に脱鞍所でサリスカを見て、発情期に入っていたことがはっきりと分かりました」と 語った。

 「レースによって発情が誘発されるかどうかは私には分かりません。レースの前にはサリスカには外見的な徴候はありませんでした。馬が発情期に入っているかどうかを知るすべは、身体的徴候を見るしかありません」。

 同調教師は次のように付言した。「獣医師が直腸に手を入れて卵巣を触診すれば発情期にあるかどうかが分かります。しかし、すべてのレースの前にすべての牝馬を検査することはできません。まったく実行不可能です。検査は容易ではなく、牝馬も嫌がります」。

 ジェニー・ホール(Jenny Hall ランボーンを拠点、2012年ロンドンオリンピックの獣医サービスマネージャー)獣医師は、「総合馬術、障害飛越、エンデュランスなど大半の馬術競技において、牝馬へのレギュメートによる治療が認められています」と語った。

 同獣医師は次のように続けた。「競馬以外の馬のイベントにおいては、レギュメートは能力を向上させるものではなく、牝馬が平等な条件で競技できるようにする治療とされています」。

 「人間の女性と同じように、牝馬も月経周期による体調変化に大きなばらつきがあります。発情によって競走能力にほとんど影響を受けない牝馬もいますが、多くの牝馬は影響を受けます」。

 英国競馬統括機構(British Horseracing Authority)の馬科学・福祉担当理事ティム・モリス(Tim Morris)氏は、発情期をコントロールする合成薬であるレギュメートはステロイドのカテゴリーに入り、それゆえ禁止薬物のリストに入っていると述べ た。

 同氏は、「レギュメートが競走能力に影響を与え得ることは疑いようがありません」と述べて、方針の変更は考えられないと付言した。

 同氏は次のように語った。「一般的な競馬、とりわけ平地競走の短距離競走は、総合馬術競技やドレサージュのような馬術競技とはまったく異なるスポーツです」。

 「それに競馬には賭事という要素があります。賭事客は牝馬に賭ける場合には、その牝馬が発情期であるリスクがあることは認識しています」。

 ベル調教師はサリスカについて次のように付け足した。「発情期であれば絶対的に影響をうけます。サリスカの競走能力に影響があったかどうかは、時間がたてば分かるでしょう」。

 「馬運車に乗せるために後躯にロープをまわしたときに、サリスカは厩務員を蹴ろうとしました。それは普段の振る舞いとはまったく違っていました。このことでも発情が不利な影響をもたらすことが分かります」。

 ベル調教師はサリスカがヨークシャーオークスで勝利を収めれば、凱旋門賞に出走させることを考えていた。凱旋門賞はまだ選択肢に入っているが、現在はオペラ賞への出走も考慮中だ。

 同調教師は次のように付言した。「サリスカは血統の良い優良馬です。ヨークシャーオークスで2着となったことは大失敗ではありません。昨夜厩舎に着いたときは普通の状態に戻っていました」。

By Rodney Masters

[Racing Post 2009年8月22日「Sariska loss may open hormonal treatment debate」]


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