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海外競馬ニュース
2009年03月19日  - No.11 - 1

競走馬の治療記録一元化の効用 (アメリカ)[獣医・診療]


 有名なサラブレッドのオーナーブリーダーが、「あなたが入院患者であるとして、病室に入ってきた医師がバッグの中から小瓶を取り出し、あなたに注射をしたり、あなたが服用する薬剤を処方することを想像してみて下さい」とたとえ話しをした。

 もちろん、このようなことは起こりえない。患者は、検査を受ける時や投薬される時は必ず本人証明用ブレスレットで確認される。最も重要なことは、医師が 薬物を手元に所持しないことである。それどころか、すべての薬剤は正確に記録され、病院薬剤部で渡される。看護士はいつでも患者の記録を取り出すことがで き、その患者に投与された薬剤、その投薬量および医師の指示を確認できる。

 このことが病院で機能するのであれば、競馬場でも同じことが言えるだろう。

 各競馬場が薬物を保管し調合する薬剤部を持ってみるのはどうだろう。この薬剤部は、競馬場が所有し、その運営費と人件費を賄うのに最低限必要な料金で運営する。

 獣医師であろうと誰であろうと、競馬場内では薬剤部で入手したものを除き薬物を所持することは禁止され、馬運車と馬具室の定期検査および抜き打ち検査の受検が義務付けられる。馬房借受け申込書と貸付け承諾書にはこれらが条件として明記される。

 指定獣医師たちは、罹患馬や故障馬が受けたすべての検査、治療および薬剤について正確に記録することが全体の利益のために重要であると十分理解した上で、このルールに則って業務を遂行することになる。

 人間は1〜2日で特定の病院を出たり入ったりすることが多い。競走馬の場合、1〜2日の間に同じ獣医師により診察されることもあるが、競馬場から次の競馬場に移動した場合、複数の獣医師によって診察されることもある。

 獣医師と調教師が自ら治療記録を管理し、馬とともに移動させることは可能だろう。しかし、競馬場の薬剤部にいつでも閲覧できる詳細な治療記録があれば、 処方された薬物を追跡するのが容易になるだろう。さらに、すべての競馬場の薬剤部が同じコンピュータソフトを利用すれば、開催の終了時、馬の購買時、馬に 譲渡要求がなされた時および馬が移動する時に、記録を他の競馬場と共有できるだろう。

 馬主が馬を購買する際に、馬に投与された薬物のリストの閲覧を要求できれば、これがどれだけ役立つか考えてみてほしい。

 馬に多くの薬物が投与されていることと、それを調査するために莫大な費用が掛かることに多くの馬主が憤慨している。競馬場の薬剤部は、そのような費用を抑制する一助となり、禁止薬物が馬体内に残留する場合、それが競馬場以外の場所で投与されたかどうか確認できる。

 牧場や調教センターから競馬場に輸送されてきた馬については治療記録が入手できないという問題がある。しかし、競走前薬物検査の実施によりその懸念は容易に軽減されるだろう。

 誠実な調教師や獣医師なら、この競馬場の薬剤部というアイデアを、安全と公正を確保するための予防策の1つであり、競馬産業の努力に対する一助となると評価し、きっと喜んで受け入れるだろう。

By Dan Liebman

[bloodhorse.com 2009年2月24日「What’s Going On Here―Track Medicine」]


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