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海外競馬ニュース
2008年02月28日  - No.8 - 3

トート社の買収をめぐる構想(イギリス)[開催・運営]


 馬主協会(Racehorse Owners’ Association)の理事長ポール・ディクソン(Paul Dixon)氏の構想が実を結んだ場合には、厩務員、調教師そして競馬ジャーナリストまでも含め、イギリス競馬に関係しているあらゆる人々は、トート社(Tote)に出資することができるようになる。

 同氏は1月17日、ゲリー・サトクリフ(Gerry Sutcliffe)スポーツ担当大臣に提出する報告書“競馬界がトート社を買収する方法”を作成中であり、政府の財務アドバイザーであるNMロスチャイルド社(NM Rothschild)との会合を1月21日から26日の間に開くよう手配したと述べた。

 同氏は、「馬主、競馬場およびトート社の経営幹部だけでなく、あらゆる人々がトート社に出資できるようになることを望んでいます。そうすれば、公正な価格を決めて、馬券発売の独占的免許の期間中にトート社の残りの株を購入できるようになります」と述べた。

「競馬界がトート社の支配持分を取得するまで、政府はトート社に関与し続けるでしょう。競馬界はトート社を分割払い購入するようなものですが、これはむしろ競馬界の決意の表れになるでしょう」。

「政府はなぜトート社をブックメーカーに売却しなければならないのでしょう。トート社は、競馬界のものです。私たちは議論し続けることが必要です。なぜならば、いったんトート社を手放してしまうと、私たちは利益のすべてを失ってしまうからです」。

 トート社を管轄する政府機関である文化・メディア・スポーツ省(Department for Culture, Media and Sport: DCMS)およびトート社の売却価格に関して最終的な決定権を持っている財務省(Treasury)からは、現状に関して検討中であるという以外の公式コメントは聞かれない。

 ディクソン氏は、競馬コンソーシアム(racing consortium)のメンバーである。競馬コンソーシアムは、トート社の経営首脳とともに、トート社の買収額として、当初4億ポンド(約960億円)を申し出たが、現在の金融市場の状況にかんがみ、最近約3億2,000万ポンド(約768億円)の入札価格を再提示した。

 “競馬メディアも含む可能性がある”とディクソン氏が述べている関係者全員が株を購入する仕組みは、同氏の個人的構想であり、トート社の売却に関係するすべての当事者と今後十分に協議されなければならない。

 同氏は、トート社をブックメーカーから影響を受けないようにすると述べ、「トート社は眠れる巨人です。同社をすばらしい企業にすることができます。トート社は、競馬場側のブックメーカーとなるべきです」と付け加えた。

 退任することになっているトート社のピーター・ジョーンズ(Peter Jones)会長が先週、レーシング・ポスト紙に「政府はトート社の売却の取り扱いに関して“はなはだしい無能力ぶり”を示した」と述べたことに触れて、ディクソン氏は、「私はそれほど極論しませんが、政府はかなり不公平であったと思います」と述べた。

「競馬コンソーシアムが2007年1月にトート社の買収額として4億ポンド、つまり政府が望んだ金額を提示したことが忘れ去られています」。

「この申し出は、政府が資金調達方法が不適当という理由で政府に拒絶されました。私たちが3億2,000万ポンドで再度トート社の買収を申し出たとき、金融界の人々はこの金額はトート社の価値をはるかに上回っていると言いました」。

 同氏は、「政府は、政府の意向に従うよう競馬コンソーシアムに要求しました。私たちはそのとおりにしましたが、政府はブラックホールにはまり込んでしまったのです。政府から我々に一言もありません。このようなことは、ビジネスの世界ではありえません」と付言している。

 競馬界のほかの首脳たちは、厳しい言い方ではないが、ジョーンズ氏の政府に対する不満に同情を示している。

 非公式な立場からトート社の売却プロセスに関係してきた英国競馬統括機構(British Horseracing Authority)の専務理事ニック・カワード(Nic Coward)氏は、次のように述べている。「政府、競馬界およびトート社が互いに立場を主張しあっていますが、それには多くの根拠があります。さまざまな事柄と人物が関係しているように思えます。感情や経緯というものがあります。政治とビジネスが絡まってくると、議論が容易にまとまらず、すべての当事者に不満がたまるのは歴史が教えるところなのです」。

 競馬賭事賦課公社(Levy Board: 賦課公社)は、DCMSを上部機関としており、公社の将来に関してトート問題と同様に長い議論に巻き込まれており、賦課公社のロブ・ヒューズ(Rob Hughes)会長は、ジョーンズ氏の苦悩を理解できると述べている。

 ヒューズ会長は、政府職員の定期的な異動によって問題の解決がはかどっていないと述べ、「問題が速やかに解決されなかったことは恥ずべきことですが、これらの問題は非常に複雑でかつ困難です。政党は、法律、とりわけ欧州連合(EU)の関係法令を検討せずに約束しがちです。多くの構造的な問題が時の流れの中で解決方向を見失ってしまいました。トート社は、1つの例です。そして賦課公社はもう1つの例です。というのは賦課公社の法律的構造は、状況が非常に異なっていた40年以上も前に作られたものだからです。競争法は当時、存在していませんでした」と付け加えた。

By Howard Wright
(1ポンド=約240円)

[Racing Post 1月18日「Dixon plan would see all in racing get a stake in Tote」]


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