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海外競馬ニュース
2008年04月10日  - No.14 - 3

ヤーマス競馬場での調教師のボイコット運動に不協和音(イギリス)[その他]


 3月22日、イングランド東海岸のヤーマス競馬場で、賞金の削減を不満とする調教師たちが、開催のボイコット運動を起こした。ウィリアム・ハガス(William Haggas)調教師は、同競馬場の3月24日開催のボイコット運動において、クリスティーン・ダネット(Christine Dunnett)調教師が結束を乱したことを非難し、不満をあらわにした。

 このボイコット運動は、イギリスのいくつかの優秀な厩舎の支持を得ており、6レースへの出走馬がわずか34頭となった。そのうち、最終レースの1,600 m未勝利競走は、ダネット調教師のサザクニュースボーイ(Southwark Newsboy)が楽勝できそうであった。

 それらのレースにおける主催者側負担の本賞金額は、馬主がボイコットした前年の開催日よりも合計で5,000ポンド(約120万円)以上少ない1万8,600ポンド(約446万4,000円)であった。多くの調教師は開催への支持をやめ、出馬投票を行わないことによって、ノーザンレーシング社(Northern Racing)の競馬場経営陣への抗議の意志を示した。

 ダービー馬を育てたハガス調教師は、次のように語った。「多くの調教師がヤーマス競馬場のやり方に失望しています。ニューマーケットにいる私の友人の多くもこの開催を支持していません。残念ながら、数人の弱小調教師が管理馬を走らせようとしており、大半の調教師はそのことに落胆しています。賞金は、馬主と調教師にとって大きな問題です。ニューマーケットはヤーマスを入門的な競馬場と見なしています。私たちはヤーマス競馬場の競馬環境と競走に気を配りたいのですが、競走番組の質は落ちていくばかりです。皆が出馬投票しないだろうと言っていたのに、未勝利競走に出馬投票した人など数人が結束を乱したことに失望しています。ダネット調教師は1頭でも多くの勝馬を出したいのでしょう」。

 ハガス調教師は、次のように付言した。「競馬場は、ますます権力を持つようになりました。調教師の経費はかさむ一方で、馬主も経費増大には調教師以上に憤慨していており、私たちのレースによる収入は減少傾向にあります。どこかで、この状況を打開しなければなりません。数人の調教師に電話したところ、彼らは支援を惜しみませんでした。多くの不信感があり、特にノーザンレーシング社は、彼らがなんと言い訳しようと、賞金を出し渋っているように見えます。今回の行動はボイコットではありません。議論する代わりに、数名が協力し、行動をおこしたのです」。

 開催5日間の未勝利競走への出走見込みは当初22頭であった。その中には、エド・ダンロップ(Ed Dunlop)、マーク・ジョンストン(Mark Johnston)、ピーター・チャップルハイム(Peter Chapple-Hyam)、クライヴ・ブリテン(Clive Brittain)、ジョン・ゴスデン(John Gosden)、マイケル・ジャーヴィス(Michael Jarvis)およびジェームズ・ファンショー(James Fanshawe)の各調教師の馬が含まれていた。しかし、出馬投票では、ダネット調教師だけが前走・前々走とも最下位だった馬を投票した。

 ノリッジ市ヒンガムで活動しているダネット調教師は、次のように語った。「私は仲間から圧力を感じ、よく考えましたが、馬主たちは出馬投票することを希望しました。地元の競馬場を支持しないのは良くないと思います。ニューマーケットの調教師たちが正しいとは思えません。彼らが出馬投票日より前に会合を開いていたのであれば、私も支持していたでしょうが、私たちのような弱小調教師はすでに計画を立てていたのです。誰も恨みを抱かないことを望みます。自分がスト破りをしてしまったように感じますし、ヤーマス競馬場に行けば汚名を着せられ、侮辱されるでしょう。しかし、私は賞金問題という競馬産業界の政治問題のために出走を取り消したりしません。私は馬主の利益になるように行動しました」。

 ブリテン調教師は、「復活祭の月曜日の開催日程をこのような低い賞金額で開催するのは信じられません。私たちの厩舎スタッフには倍の賃金が支払われていますし、厩務員たちも祝日に働いているので、総賞金2,000ポンド(約48万円)のレースを支持するのは不可能です」と述べた。

 ノーザンレーシング社は競馬賭事賦課公社(Levy Board:賦課公社)からヤーマス競馬場への賞金補助金(基本額)43.6%削減の埋め合わせのために、2008年の賞金として14万5,000ポンド(約3億4,800万円)を拠出したが、それは他の開催日を対象にしたものである。

 今後の調教師たちによるさらなるボイコットはない模様だが、全国調教師連合会(National Trainers’ Federation: NTF)のクリス・ウォール(Chris Wall)会長は、競馬場に注意を喚起した。同会長は、「NTFは何もできませんが、多くの調教師はこの成り行きに非常に落胆しています。今回は例外的な事件だと思いたいのですが、十分に役割を果たさなければどこの競馬場でも、同様の運動が起きるでしょう」と述べた。

 ノーザンレーシング社の財務担当理事のトニー・ケリー(Tony Kelly)氏は、次のように語った。「調教師たちは、競馬統括機関の注意を喚起するために、この開催を格好の標的としました。天候による出馬投票の取りやめと競馬場への客足の減少を心配している状況の中で、このボイコット運動は本当にいら立たしいことです」。

 「彼らのボイコット運動は競馬に損害を与えます。つまり、賭事客の競馬への出費が減り、ひいてはブックメーカーから賦課公社への納付額が減少することにもなります」。

 「当社では、賦課公社からの賞金補助の不足分を埋め合わせるために2008年の賞金に多額の資金を投入しました。ヤーマス競馬場の2008年の番組は、この日がボイコットの標的にされたことで、資金投入の努力がないがしろにされつつあります」。

 「当社はボイコット運動は物事を進めるには適切な方法ではないと考えているので、来週には関与した調教師、NTFおよびホースメンズグループ(Horsemen’s Group)と連絡をとります。天候に問題がなければ競馬は施行されるでしょうし、私たちは競馬観戦者や出走馬関係者が来場することに尽力します」。

By John Lees
(1ポンド=約240円)

[Racing Post 2008年3月23日「Trainers at war over Yarmouth boycott」]


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