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海外競馬ニュース
2008年04月03日  - No.13 - 2

競馬産業の代表者、薬物の取締りについて議論する(アメリカ)[獣医・診療]


 競馬産業の利害関係者は、少なくとも不正行為に対する認識を改善することの必要性については全員一致で賛成している。しかし、認識が正しいかどうかとか、最終的な責任はだれに帰属するかという問題については、意見はまちまちである。

 2月20日フロリダ州セントピーターズバーグで開催されたサラブレッド競馬場協会(Thoroughbred Racing Association)とアメリカ繁駕競馬場協会(Harness Tracks of America)の年次合同会議で、上述のような議論が展開された。

 馬主・調教師協会(Thoroughbred Horsemen's Association)の会長で薬物規制標準化委員会(Racing Medication and Testing Consortium: RMTC)の副会長であるアラン・フォアマン(Alan Foreman)氏は、「競馬産業では薬物問題の罰則は厳しすぎるほどです。検査において1%の陽性反応があれば、抑止効果としてはそれで十分だと思います。私たちの罰則は厳格です。厳格でないと言う人もいますが、2度陽性反応を出した人はめったにいません」と述べた。

 また同氏は、「その一方で競馬産業には不正を働く者がおり、決して完璧な業界とはなりえませんが、私たちが薬物検査をさらに強化すれば、より多くの人々が競馬に信頼をよせるでしょう」と付言した。

 ニュージャージー州スポーツ・博覧会委員会(New Jersey Sports and Exposition Authority)の競走担当上席副理事長デニス・ダウド(Dennis Dowd)氏は、楽観的ではない。ダウド氏は、「馬房の片隅に1匹のネズミを見かければ、壁の中には100匹のネズミがいます。1%という数字をそのまま喧伝することは本当に正しいことなのでしょうか?」と述べた。

 繋駕速歩競走のレーシノ(競馬場+カジノ)の所有者ジェフ・グラル(Jeff Gural)氏は、「マリオン・ジョーンズ(Marion Jones)選手は、非常に多くの金メダルを獲得しましたが、オリンピックまでのどの薬物検査でも陽性反応を示しませんでした」と指摘し、「オリンピックが膨大な予算を費やしてやっとマリオン・ジョーンズ選手を摘発することができたことを考えれば、1%という数字を喧伝して良いのか分りません。ホースマンは競馬場所有者とともに薬物の取締まりに取組むべきです。協力することはホースマンの義務です。この1%の数字が続くようであれば競馬ファンの信頼を失い、彼らも仕事を続けていくことはできないでしょう」と述べた。

 競馬統括機関が不正を働く者をすべて摘発する努力を怠っているというわけではない。統括機関は薬物検査に年間3,000万〜4,000万ドル(約33億〜44億円)を出費しており、より良い検査を実施するためにさらなる費用を要請している。どこからその費用を出すかあるいは出すべきかは、複雑な問題である。

 北中米競馬委員会協会(Association of Racing Commissioners International)のエド・マーティン(Ed Martin)会長は、「私たちは競馬関係者と賭事客のために薬物の取締まりを強化する義務があります。オンタリオ州の馬主兼調教師が私にこんな話をしました。厩舎地区で獣医師に呼び止められ、“爆弾”を買わないか尋ねられので、その中に何が入っているのか聞くと、彼は何でしょうと答えたそうです」と述べた。

 マーティン氏は、「いつから獣医師はこんなに偉くなったのですかネ」と付言した。

 RMTCの専務理事スコット・ウォーターマン(Scot Waterman)博士は、次のように語った。「理想的なシナリオは、全ての出走に対して、馬にあらゆる物質を対象とした出走前の薬物検査を行うことです。しかし政府は、私たちに公正であることを求めているのに、その作業を実施するための費用を出しません。アメリカ競馬の薬物問題に対する出費は他のスポーツや他の国と比べてかなり上回っていますが、17年間その金額は変わっていません」。

By Ed DeRosa
(1ドル=約110円)

[Racing Post 2008年2月20日「Industry reps argue prevalence of cheating in racing」]


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