レース前データの使用問題でBHB勝訴を受け和解へ(イギリス)[その他]
英国競馬公社 (British Horse Racing Board: BHB)はレース前データの販売に際して市場支配的地位を濫用していないとする2月の控訴院(court of appeal)の判決を受けて、BHBとアット・ザ・レーシズ社(At The Races: ATR)の間で和解が成立した。これによって英国競馬統括機構(British Horseracing Authority: BHA)の創設はかなり円滑に進められることとなった。
3月5日の共同声明で、ATRが上院(House of Lords−最高司法機関の機能も合わせ持つ)に上訴しないことと、BHBとATRが両者間の問題解決に合意したことを明らかにした。
もしATRが上訴していたら、事案解決までにおそらく1年はかかり、BHA創設にあたり深刻な経営上・財務上の影響をもたらし、法的不確実性のゆえにBHAは別個の企業として設立せざるをえなかっただろう。
しかし、控訴院の判決により、BHAは比較的少ない費用でBHBと競馬監理機構(Horseracing Regulatory Authority)の業務をスムーズに引き継ぐことになった。
BHBとATRの合意のニュースは、両者が訴訟費用問題の解決のために控訴院に出頭する予定日の前日に発表された。
両者の弁護士は、3月6日の午前に控訴院に出頭するが、特に議論はせずに、合意の詳細を発表することになるだろう。この合意により、ATRは訴訟費用として約120万ポンド(約2億4,000万円)を負担する。
イサートン(Etherton)裁判官がATRに勝訴の裁定を下した原審(高等法院)の判決では、BHBは訴訟費用70万ポンド(約1億4,000万円)の納付を命じられていた。
レース前データの使用に対して使用料を請求することについてBHBの権利を認める控訴院の判決(マメリー(Mummery)、セドリー (Sedley)、ロイド(Lloyd)裁判官が全員一致で決定)が最終的に確認されたことによって、ATRは追加訴訟費用のおそらく半額の支払に加え、 70万ポンドをBHBに払い戻さなければならないことを意味する。
ATRはアリーナ・レジャー社(Arena Leisure)とブリティッシュ・スカイ・ブロードキャスティング社(BSkyB)によってそれぞれ47.5%ずつ所有されているほか、アスコット (Ascot)競馬場もその株主である。衛星放送事業者であるATRに近い筋は、ATRはこの状況を認めており、合意条件を履行するだろうと述べた。
ATRが2004年6月以降支払わなかったデータ使用料は50万ポンド(約1億円)を超えると言われているが、この問題については、合意の中で明確に解決された。
3月5日の共同声明では、「BHBは、ATRがレース前データへのアクセスと使用を引き続き認めるものとする。両者は、問題解決に満足しており、今後はイギリス競馬界の利益のために協力する所存である」と述べている。
By Howard Wright
〔Racing Post 2007年3月6日「BHB-ATR accord eases the way for new authority」〕