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TOPページ > 海外競馬情報 > 騎手の過酷な減量の現状と対応方向(イギリス)【その他】
海外競馬情報
2013年03月20日  - No.3 - 5

騎手の過酷な減量の現状と対応方向(イギリス)【その他】


 騎手免許に署名するとき、騎手は通常の世界から境界線を越えて、強迫観念や非常に強い仲間意識、そして過酷な自己犠牲に動かされる世界に入る。

 それが誇張だと言う人々には、その度合いがどれくらいかを経験してみてほしい。あなたは月曜日に、水曜日までに5ポンド(約2.3 kg)落とすよう騎乗依頼主から要求され、それができなければ、その任務は同じデスクの同僚に行ってしまい、同僚は上機嫌でそのチャンスを活用するということになる。

 一方、飲食を渇望している体が渇ききった上、激しい運動または発汗、あるいはその両方での減量を48時間強いられ、体重5ポンド(約2.3 kg)の減量に成功した場面を想像してみてほしい。しかしそのあと、肉体的衰弱の結果として騎乗依頼主をがっかりさせることになる。

 これは、騎手の人生にとって時々起こる残酷な出来事である。すべての騎手に起こるわけではないし、いつも起こることではないが、“この長年の減量法はもっと良い方法に取って代わられるべき時期である”と問うには十分なほど起こっている出来事である。

 騎手がきつい減量をやり過ぎているかどうかは、複雑な方程式である。エリートスポーツ選手としては、それが彼ら自身の求めているものであり、また我々が期待していることかもしれない。しかし普通の人間として見ると、それは、騎手がプライドの表現である“能力の指標としての試練”ととらえるものは何かを分からなくしてしまう。

 一方これらの例が違った結末を辿ることも想像できる。騎手は5ポンド(約2.3 kg)減量し、騎乗依頼主と顧客を満足させる任務を完了する。そして得意になり、尊敬もされる。真剣に努力し、苦しんだ上で、称賛に近いものを勝ち取って、怖いものなしになる。


競馬統轄機関は騎手の減量に関して行動を起こすことを決定

 幸いにも競馬統轄機関はこうした状況に介入する権限を持っており、行動を起こすことを決定した。

 見習い騎手であるアダム・カーター(Adam Carter)騎手に先週科された10日間の騎乗停止処分は、同騎手が後に主張したところによれば、減量後の衰弱で騎乗不可能であったことが原因の1つであった。同騎手は2日間で5ポンド(約2.3 kg)も落とすよう依頼されていた。

 一方、障害のトニー・マッコイ(Tony McCoy)騎手は土曜日、この2年以上の間で一番軽い負担重量である10ストーン3ポンド(約64.9 kg)まで体重を落とすこととなったが、しくじることはなかった。ありふれた例として挙げられるとしても、マッコイ騎手が手厳しい非難を浴びることはほとんどなかった。賭事客たちは事情を理解し、彼の献身的努力を称賛した。

 これらの対応に違いがあるとすれば、カーター騎手のような若い騎手を守ろうとしている一方、マッコイ騎手のようなベテラン騎手には熟慮の決断を認めている点である。もしルールを変更するのならば、減量を“美化された挑戦”というよりも、珍しいこととするために、長年の習慣と実践から抜け出さなければならない。凝り固まった考え方は、競馬統轄機関の立場にさえ影響を与え得る。

 騎手協会(Professional Jockeys Association: PJA)の理事であるデール・ギブソン(Dale Gibson)氏は、「私たちは普通の生活を送っている一般人についてではなく、ルール上体重が問われるスポーツの選手について話をしています」と語った。

 24年間騎手であったギブソン氏の見解は、そしておそらく彼と同世代の騎手たちの見解も、若い騎手は男らしさが強い影響力を発揮する世界で生き抜くためすぐに成長する必要があるというものである。

 ギブソン氏は、「彼らはそれを望んだはずです。90%しか確信できないのであれば、騎手になろうと考えるべきではありません。100%確信してなければ、騎手免許に署名すべきではありません。これはほとんど自己犠牲なのです」と語った。

 通過儀礼としての減量は、風変わりで荒々しい儀式に見えるかもしれないが、検量室は臆病者のための場所ではない。「くよくよ思い悩むぐらいならやってみろ」が検量室の標語かもしれない。

 しかし、減量が過去のものとなり、あまり称えられるものでなくなれば、検量室がより和やかな場所にならないだろうか?

 スポーツ・パフォーマンス心理学者のマイケル・コーフィルド(Michael Caulfield)氏は、「実際の生活で、減量に伴う結果は生活を惨めなものにします」と語った。

 その気持ちがあるのであれば、今行動を起こすべきである。BHA(英国競馬統轄機構)の首席医学アドバイザーであるマイケル・ターナー(Michael Turner)博士は、見習い騎手や条件付き騎手が騎乗する際に負担重量を割り当てられていることとなるよう、下限負担重量(minimum riding weight: MRW)の導入を考えている。

 MRWは、骨格スキャンおよび2つの国立競馬学校で実施される測定が基になる。ターフクラブ(Turf Club)のエイドリアン・マクゴールドリック(Adrian McGoldrick)医師が行ったアイルランドにおける現役騎手の脱水症状の警報レベルを示す研究を受けて、見習いおよび条件付き騎手は全員、1月1日〜7月31日に骨格スキャンを撮られることになる。

 騎手は、MRWまで体重を落とすために次第に極端な方法を取らざるを得なくなり、度重なる脱水症状、不十分な脂肪量と骨密度、そして骨粗しょう症のリスク増加に苦しむことになる、とコーフールド氏は書いている。

 同氏は、減量中に騎手が経験する重度の疲労は、競馬場まで数百マイル運転してくる間に彼らの身体を危険な状態にするとしている。そして全体として、負担重量まで落とすことから来る不安な気分は、騎手の精神面と肉体面に深刻な悪影響を与えると書いている。

 ルールの改正はベテラン騎手にも影響を与えることになる。過去1年間に50回以上騎乗したすべての騎手に対し、彼らの騎乗データを基にした最低騎乗重量(Lowest riding weight: LRW)が公表され、騎手が騎手免許へ署名する際に行なう現行の自己申告システムに取って替るだろう。


重量超過には制裁

 騎手はMRWとLRWを下回っていても騎乗することができるが、重量超過には必ず制裁が伴うことになるだろう。

 ギブソン氏は次のように述べた。「例えば8ストーン2ポンド(約51.7 kg)のMRWを与えられているとして、彼らが8ストーン3ポンド(約52.2 kg)で騎乗すれば警告を受けます。そして2回目には、食事療法士のところへ行かなければならなくなります」。

 MRWとLRWは主に重量超過を抑制するが、騎手とその騎乗依頼主に対して水準を下回りすぎないようメッセージを送ることで、重量不足になり過ぎることも抑制する。

 ギブソン氏は、「この方法は、適切な体重管理を実践させ、消耗を防ぐことについては100%確実です。しばらく前からフランスで功を奏しています」と語った。

 ギブソン氏が平地競走の軽量騎手として騎乗していた時、ダイエットと運動に関する一つのやり方を実践していたが、他にも多くのやり方が実践されているのを目の当たりにした。

 同氏は次のように述べた。「どうしたら減量できるかについて述べた本はなく、人によってやり方は異なります」。

 「今やより多くの騎手は責任感があります。トム・イーヴス(Tom Eaves)やポール・マルレナン(Paul Mulrennan)は背の高い騎手ですが、彼らの体重はシーズンを通じて最後まで変化がありません」。

 「適切な体重管理の考え方は、調教師まで影響するかもしれません。アダム・カーター騎手がいつファファ(Faffa)に騎乗するよう依頼されたのか知りませんが、同馬に騎乗し優勝したときに、おそらくまた騎乗依頼するとそれとなく言われていたと思います。もし4日前に騎乗依頼を受けていたならば、5ポンド(約2.3 kg)落とすのに大変な努力を払わなければなりませんが、あらかじめ言われていればうまく減量を行うことが可能になります」。

 一方コーフィールド氏は、若い騎手が最も適切な体重管理の方法を見つけ出すには、試行錯誤しなければならないと考えている。

 しかし、かつてPJAを運営していたコーフィールド氏の慎重な助言でさえ、何かを得ようとすれば傷みが伴うものだと戒めている。

 そして同氏は次のように語った。「現実は厳しく、騎手は競馬で活躍しなければ生活する上で犠牲を払わなければならないことになり、話はおしまいです。だから自身の体を肉体的、精神的に受け入れ可能である限り多くの苦痛に晒すことになります。そういう取引なのです」。

 「そうした状況を上手くこなせなければ、頂点に到達できる十分な見込みはありません」。

By Tony Smurthwaite and Tom Karr


『勝者となるための食事と減量法』―騎手のための手引書

 PJAメンバーにとって、騎手が体重を健康的かつ安全に管理できる栄養情報および合理的な減量計画が利用できるようになった。

 小冊子『勝者になるための食事と減量法(Fuelling Winners)』の第1版が好評であった後、PJAは健康的な食事と簡単な料理法の手引書の改訂版を発行し、騎手に配布した。

 この冊子は騎手に対し、内容の乏しい騎乗実績といくつかの健康問題を招く結果となる極端な減量法を採らないよう助言している。最善策は、騎手が前もって計画を練ることであり、それにより急激な措置を採る必要がなくなる。騎手は、普段の騎乗体重の約0.5〜0.9 kg増以内に体重を維持するようアドバイスされており、そうすればレース騎乗のために2ポンドほど減量するだけで済むことになる。

 また騎手に対して、軽量での騎乗を突然依頼された場合に最も望ましい対応法を助言している。減量のため制限した水分をレース後に出来る限り補給することの重要性のほか、すぐに体重を落とすのに役立つ減量法の中で最も害の少ないものとして、レース騎乗前の24時間に塩と食物繊維の摂取方法の変更が強調されている。すなわち、塩は体内の水分保持に密接に関連するため塩分の摂取を減らすことが体内水分の減少につながり、また腸の内容物は約1〜2kgの重さがあるので、食物繊維の少ない食物を食べて腸内に留まっているものが減れば一時的に体重が減ることになるとしており、これら2つの方法は、ほとんど害はなく一時的に効果のある減量法として例示されている。

By Paul Eacott

[Racing Post 2013年1月30日「Will rule change be worth the wait or will it weigh too heavy?」]


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