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TOPページ > 海外競馬情報 > フランケルのような馬は今後現れるのか?(イギリス)【その他】
海外競馬情報
2012年11月20日  - No.11 - 4

フランケルのような馬は今後現れるのか?(イギリス)【その他】


 10月20日に施行されるアスコット競馬場のチャンピオンS(G1)でフランケル(Frankel)がゴールラインを超えるとき、その素晴らしい競走生活に終わりが告げられる可能性が強いが、それは多くの人に失望を与えるだろう。(訳注:フランケルは10月20日のチャンピオンSで14連勝を果たして引退した。)

 2010年8月の新馬戦以来、カリド・アブドゥラ(Khalid Abdullah)殿下所有のフランケルは、それ以前の名馬と同じく、人々を感動させ、驚嘆させ、ワクワクさせた。フランケルは13連勝(10月18日現在)を果たしたことでその強さを揺るぎないものとし、競馬史に残る名馬と比較されるまでになっている。

 そして、すべての生産者、馬主、調教師および騎手は、その競走生活が終わるという悲しさや落胆もあるが、いつかフランケルのような優良馬あるいはそれ以上の馬が目の前に現れる夢と希望を抱いている。

 しかし英国とアイルランドにおいては、フランケルの前に、ジョン・オックス(John Oxx)調教師の2009年年度代表馬シーザスターズ(Sea The Stars)が破竹の活躍をし、同じような賞賛をほしいままにしていた。そして米国ではゼニヤッタ(Zenyatta)が19連勝だったし、オーストラリアの牝馬ブラックキャビア(Black Caviar)は記録的な22連勝中であり、近年世界の競馬はスーパースターに不足はない。

 そのような画期的な馬のほか、障害競走馬で忘れてはならないコートスター(Kauto Star)、デンマン(Denman)、ビッグバックス(Big Buck’s)およびマスターマインディッド(Master Minded)がこのように短い期間に現れたのは、ただの偶然の一致だろうか?あるいは、長年にわたる生産および調教によりサラブレッドはもうその頂点に達したのだろうか?

 これは決して新しい議論ではない。ナショナルスタッド(National Stud)の元場長ピーター・バレル(Peter Burrell)氏は、英国のサラブレッドは第一次世界大戦の前にはすでに頂点を極めていたと確信していると1960年のスピーチで語っていた。

 時計を100年後まで早送りし、チャンピオンの史上最高馬として育て上げられたフランケルを思い描くと、「そのあとはどのような進化があり得るのであろうか?」という疑問が浮上する。

 ニューマーケットのジェームズ・テート(James Tate)調教師は、英国獣医外科医師会(Royal College of Veterinary Surgeons)のメンバーであり、調教方法の常識をくつがえして成功したマイケル・ディキンソン(Michael Dickinson)調教師の甥であるが、サラブレッドはさらに改良されると信じている。

 同調教師は、「サラブレッドが頂点に達したということを大変疑わしく思っています。遺伝子的に頂点に達したのかどうかについては良くわかりませんが、馬のパフォーマンスが頂点に達したはずはありません」と語った。

 そして次のように続けた。「物事は発展を遂げますし、調教方法も騎乗スタイルも発展します。馬場、ギャロップ、飼養法、干草などすべてについて同じことが言えます」。

 「私たちはおそらく、馬にアルミニウムではなくカーボンファイバー(炭素繊維)の蹄鉄を履かせて出走させるようになるでしょうし、そうなればタイムの短縮などがあるかもしれません。私は今後も改善は続くだろうと考えています」。

 「競走馬から引き出し得る能力が頂点に達したはずはなく、私たちは改良を続けますので、50年〜100年後には競走馬の能力がより高まるでしょう」。

 「馬をより速く走らせる欲望がある限り、人々は常にさまざまな微調整を試み、馬の能力を改善させる方法を見つけ出すでしょう」。

 「将来誰かがフランケルと同じまたはそれ以上の能力を持つ馬を見つけ出した時、調教方法、育成方法、診療方法は改善されるでしょう。そしてそのフランケルは今日のフランケルよりも速く走るでしょう」。


科学の大きな貢献

 しかしテート調教師は、調教法の飛躍的進歩だけが馬の能力を向上させる唯一の方法であるとは思っていない。その前の段階で、馬の生産方法に科学研究が導入されることで変化がもたらされうると同調教師は言う。

 そして次のように語った。「私たちは遺伝子研究の黄金時代にいますが、フランケルのような速い馬を見たときにそれ以上の馬を生産できるとは考えにくいものです」。

 「私たちは、フランケルあるいはそれ以上の馬を見い出す可能性を高めるために、最善の遺伝子で最善の遺伝子を生産しようとしているのです」。

 「遺伝子研究の最前線にいる人々は皆、より強い馬を生産する方法を特定できると考えており、またフランケルのような傑出した馬を再び生み出せると主張するでしょう」。

 「鼻出血症や跛行に罹りやすい原因を究明する検査が開発され実行されるかどうか分かりませんが、それが開発されれば鼻出血や跛行はほとんどなくなることになります」。

 「数十年後には馬の能力レベルを高めることができると確信しています。それは実際に競馬だけではなく、ランニング、テニス、サッカーなどすべての分野で起こることであると歴史は物語っています」。

 「サー・ヘンリー・セシル(Sir Henry Cecil)調教師はフランケルに良い影響をもたらす調教を日々行ってきましたが、80年後あるいはいつであろうとも、次に出てくるフランケルの調教師はやや進化した調教をきっと施すだろうと考えずにはいられません。どのような形の進化かは分かりませんが、そうなることは間違いないでしょう」。

 テート調教師は1つの例として、遺伝子検査サービスを提供するエクイノム社(Equinome)の創設者であるエメリン・ヒル(Emmeline Hill)博士がダブリン大学で開発した“スピード遺伝子検査”を挙げた。

 “スピード遺伝子検査”は個々の馬の距離適正を予測し、筋肉量発達の原因遺伝子を調べ、馬が持っている遺伝子変異体の2つのコピーがそれぞれCタイプかTタイプかを特定する。そうすると馬は、速いスプリントタイプのC:C、速い中距離タイプのC:T、あるいはスタミナタイプのT:Tのいずれであるかが特定される。


生産における遺伝子利用

 このシステムは、テオフィロ(Teofilo)、ニューアプローチ(New Approach)および10月20日のデューハーストSの優勝馬ドーンアプローチ(Dawn Approach)などの優良馬を生産するのに役立ったが、それに至るまでには何回かの手痛い間違いがあった、とエクイノム社の共同創設者であり優秀な調教師で生産者でもあるジム・ボルジャー(Jim Bolger)氏は述べた。

 そして次のように語った。「エクイノム社は私にとって大きな前進でした。10年前にこのことが分かっていれば、私は数頭の繁殖牝馬をガリレオと交配させ高い種付料を支払うことはなかったでしょう。なぜなら、それらの繁殖牝馬がガリレオの遺伝子タイプには合わなかったからです。大失敗でした。私より走りの遅い産駒もいました」。

 「未出走の繁殖牝馬はその特徴を十分把握できないためスタミナタイプの種牡馬と交配させてしまう可能性がありますが、その場合、その産駒はマイルや中距離では走らないことが多いでしょう。このような事態はある程度防ぐことができます」。

 ボルジャー氏は、どんなタイプかを特定するため種牡馬は検査されるべきと考えており、次のように付け加えた。「私たちはドーンアプローチの母ヒムオブザドーン(Hymn Of The Dawn)がスプリントタイプ(C:C)であることも、交配させたニューアプローチ(New Approach)が中距離タイプ(C:T)であることも認識していました。ヒムオブザドーンからは当然Cタイプの遺伝子変異体を引き継ぎ、ニューアプローチからもCタイプの方が引き継がれたことから、ドーンアプローチはスプリントタイプであるC:Cとなりました」。

 ニューマーケットの有名獣医師であるジェームズ・マクベイ(James McVeigh)氏は、サラブレッドの生産において跛行などがやがてなくなる可能性があることを認める一方、馬の体型や大きさは能力に比べればほとんど重要性がないと述べている。

 ベイカー・マクベイ&クレメンツ社(Baker, McVeigh & Clements)の共同経営者であるマクベイ氏は、「今後いつでもフランケルは現われるでしょう。どの世代も驚異的な馬を生み出すのであり、フランケルは我々の世代の驚異的な馬と思われます」と語った。

 そして次のように付言した。「今後疑いなく繁殖プログラムは作られる可能性があります。そして確かに他の種においては、特定の遺伝子構造を除去することが可能になりました」。

 「ハイペリオン(Hyperion)のパフォーマンスを思い出してみてください。過去に遡ってその記録を検討すれば、この小柄な驚くべき馬がエドワード王時代の古いタイプのサラブレッドを打ち破ったことがわかるでしょう。競走馬はたった1つの目標のために生産されます。それは勝つことです」。

By James Burn

(関連記事)海外競馬ニュース 2012年No.11「スピード遺伝子の起源は一頭の英国牝馬に遡る可能性(イギリス)」

[Racing Post 2012年10月18日「As good as it gets?」]


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