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TOPページ > 海外競馬情報 > 10年後の競馬の姿はどのようなものになるか?(アメリカ)【その他】
海外競馬情報
2011年02月10日  - No.3 - 5

10年後の競馬の姿はどのようなものになるか?(アメリカ)【その他】


 10年後の競馬産業はどのようなものなのだろうか?それに関して何人かの競馬産業の役員は、少なくとも根拠のある考え方を持っている。しかし、2010年のアリゾナ大学の“競馬およびゲーミングに関するシンポジウム”(University of Arizona Symposium on Racing and Gaming)において明らかになったように、その将来像に関して自信を持って予測を行うには変数が多すぎるようだ。

 2010年12月6日から9日までアリゾナ州ツーソンで開催されたこのシンポジウムは、競馬の将来に関するものであったが、過去についても議論を行った。たとえば、会員制賭事(advance deposit wagering: ADW)はパリミューチュエル賭事の将来の姿として位置づけられているが、パネリストたちは時折、ADWが今後向かう方向に疑問を呈し、ライブ競馬の経験に改めて焦点を当てるよう求めた。

2020年においてはサラブレッド競馬はスリム化されたものになるだろうと一般的に受け止められているが、収入の観点からはより収益力のあるものになることを多くの人々が望んでいる。

 チャーチルダウンズ社(Churchill Downs Inc.: CDI)の会長兼CEOであるボブ・エヴァンス(Bob Evans)氏は12月7日、競馬の将来について楽観的になる要素はあるが、それには競馬産業が事業を行う方法に大変革がもたらされなければならないと述べた。

 シンポジウムで基調演説を行ったエヴァンス氏は、前向きな面として、代替ゲーミング、改善されたバランスシート、技術、質の高い競馬の市場そして顧客指向の改革を挙げた。そして、重要なことは需給変化に対応することであると述べた。

 エヴァンス氏は、近年のサラブレッドの年間生産頭数の減少、セリ価格の低下および競馬産業全体で2003年以来の7億5,000万ドル(約750億円)の収入減少について指摘し、2014年までに3歳の米国産馬の頭数は28%減少すると見込まれており、課題は明らかであると述べた。

 そして、「レースの出走頭数を満たすことはますます難しくなるでしょう。困難に違いありませんが、多くの楽観的な余地も残されています」と付け加えた。

 エヴァンス氏は自身の2020年における展望を“数学の問題”と表現し、競馬産業では動力学が作用しているので予測とか予想を行っているのではないという点を明確にした。

 同氏の展望ではいったいどうなる見込みなのであろうか?10年のうちには、パリミューチュエル賭事の年間売上げは約155億ドル(約1兆5,500億ドル)まで成長するとされている。年間総賞金額は約17億ドル(約1,700億円)に増加し、年間競走数は2010年の5万6,000レースから3万1,000レースに減少し、年間開催日数は現在の6,600日から3,100日に減少する。競馬場の数は55場から26場に減少し、1レースにおける平均売上げは23万ドル(約2,300万円)から49万5,000ドル(約4,950万円)に増加する。さらに、1レースにおける平均賞金総額は2万2,000ドル(約220万円)から5万5,000ドル(約550万円)に増加する。年間の延べ出走頭数は7万4,000頭から5万6,000頭に減少し、1レース平均の出走頭数は8.2頭から12頭に増加するとされている。

 しかしエヴァンス氏は、「仮定が間違っているので、自身のモデルも間違っている」と述べた。そして同氏は、競馬場運営者がよりコンパクトで健全で、経済的に持続可能な事業を作り出すことのできる合理的な方法で対応することができるかどうかを問題とした。

 この経済モデルは、ゲーミング収入を織り込まずに競馬場が5%の資本収益率で採算をとれるという前提に基づいている。しかしゲーミング収入は、2010年から2020年までの賞金増加額の70%を占めるだろうと同氏は述べた。

 そして、「私たちは是が非でもゲーミングからの資金を必要としており、競馬の経済を改善するために必要な変化をもたらすための時間はあります。競馬の将来の姿を確立した上ではじめて実行可能なビジネスモデルが生まれるのです」と語った。

ADWの影響

 エヴァンス氏は、ADWが2020年までにすべての賭事売上げに占める割合は現在の13%から23%に増加するかもしれないと述べた。12月9日のADWに関するパネルディスカッションで、パネリストたちは、ADWを通じた賭金は増大するだろうがベッティングショップにおけるADWの出現と顧客サービスが重要視されるようになるという見解を示した。

 CDIは、ツインスパイアーズ・コム社(TwinSpires.com)およびユーベット・コム社(Youbet.com)と提携し、米国最大のADWを運営している。パネリストたちは、地域のADW業者の重要性および他のサービスの提供に焦点を当てる重要性を競馬産業に納得させるよう努めた。

 欧州賭事サービス社(European Wagering Services: EWS)のCEOであるエド・カミンズ(Ed Comins)氏は、「私たちはツインスパイアーズ・コム社から2〜3人のスパイがやって来るだろうと予想していました」と冗談を言いながら自身のプレゼンを始め、「私たちはADWが若い市場であると見なしています」と述べた。EWSは最近、ダコタ州北部で賭事運営免許を取得しているウォッチ&ウェイジャー・コム社(WatchandWagers.com)を買収した。

 EWSは2011年に米国で存在感を得ることを計画しているとカミンズ氏は述べ、パリミューチュエル賭事は英国のブックメーカーが提供する固定オッズ賭事と比べるとかなりの販売利益をもたらすと述べた。しかし同氏は、パリミューチュエル賭事事業には危険な兆候があると付け足した。

 カミンズ氏は、もしベッティング・エクスチェンジのような他の形式の賭事が大々的に合法化されれば、パリミューチュエル賭事は生きていけなくなるので、競馬産業は“価格決定を十分検討する”必要があると述べた。同氏は、顧客への払戻しのやり方は重要なテーマであり、“自由に販売促進しつつ革新的である”やり方を法令が可能にする必要があると述べた。

 カミンズ氏はまた、ここ数年にわたって議論されてきた問題である競馬産業所有のADW運営は、今後進むべき方向ではないと確信していると語った。

 そして、「個人的にはそのような方向には行かないと確信しています。それは競馬賭事提供者にとって脅威です」と述べた。

 同氏はこの問題への回答において、EWSは自身を賭事提供者としか見なしていないと述べ、「私たちは決して人々を競馬場から引き離そうと思っているのではありません」と語った。

 競馬場が所有する約10の小規模なADW業者にシステムを提供しているイーベットテクノロジーズ社(eBet Technologies)の競馬研究所の所長兼CEOであるマーク・グレゴリー(Mark Gregory)氏は、ADWにより競馬場が顧客を管理下に置くことの優位性を宣伝した。ペンナショナル競馬場のハリウッドカジノは、初めて同社のADWシステムを利用した顧客であった。

 グレゴリー氏は、競馬場とホースマンにとって、流通経路をコントロールし、顧客との関係を所有し、収入を増加させることが重要であると述べた。同氏はもし競馬場が地元のADW市場の25%を確保したなら、彼らの収入は5%増加するだろうと述べた。

 グレゴリー氏は、「自分の地域で有しているゲーミングのための機会をいかに活用できるかに掛かっています。そうしなければ、顧客は他のサービス提供者のもとに行ってしまうでしょう。そして賭事を提供できなければ、賭事の元はとれないでしょう」と語った。

「自身が管理する賭事提供ではより多くの収入を得ることができますが、全国的なADW提供者を通じたコンテンツでは、利益を得ることができません」。

 全国的なADW業者は競馬場が他の市場へアクセスすることを支援しているが、競馬場の近くの顧客にとって、地元の競馬場がより多くの収入を得るために収入につながる賭事提供を最大化することは意味のあることであるとグレゴリー氏は語った。

 ダークホースベット・コム(Darkhorsebet.com)を運営するアバターベンチャーズ社(Avatar Ventures)の会長であるブルース・ソールズビー(Bruce Soulsby)氏は、賭事客に与えられるリベートに焦点を当てた。パリミューチュエル賭事で馬券を的中させた人だけは、自動的に賭金の一定割合を取り戻していると同氏は述べた。

 ニュージーランド出身のプロゴルファーで現在はオハイオ州に住むソールズビー氏は、「私はリベートなしでは勝ち組になることは絶対になかったでしょう。勝ち組は利益を上げるために回転売買の仕組みを作り出します。2002年以来私が提供する賭事の規模は、約10倍に拡大しています。リベートなしでやっていたならば私はおそらく5ドルから10ドルしか賭けない勝負師になっていたでしょう」と語った。
 
 同氏は次のように付言した。「これはゲームにとって不可欠です。売上げ全体の12%までは何らかの報酬となっています。パリミューチュエル賭事の控除率は、賭事客に何がしかを還元する機会を私たちに与えてくれます」。

カリフォルニア州の問題

 カリフォルニア競馬を悩ましている問題についての12月9日に行われたディスカッションにおいて、カリフォルニア州競馬委員会(California Horse Racing Board: CHRB)の副委員長であるデヴィッド・イスラエル(David Israel)氏はADWに言及した。同氏は、ADWはとりわけ飲食物の販売のような“付随的な収入”の分野でライブの競馬を蝕んでいると述べた。

 イスラエル氏は、「私たちは、ADW市場の拡大を決めるよりも競馬場に人々を惹きつける必要があります」と語った。

 デルマーサラブレッドクラブ(Del Mar Thoroughbred Club)のCEOジョー・ハーパー(Joe Harper)氏は、南カリフォルニアの競馬場は2010年の開幕日に飲食物で130万ドル(約1億3,000万円)を売上げ、また、ジギー・マーリー(Ziggy Marley)のコンサートが行われた競馬開催日も同じような売上げを記録したと述べた。

 カリフォルニア州は明らかに矛盾するような対応をしている。競馬場で代替ゲーミングを運営する目途は立っておらず、場内での全レースを対象にするサイマルキャスト賭事は限定されており、売上げも減少している一方で、ADWに頼っている。パネリストたちは、独創的に考えるというのは過去のことになってしまったと述べた。

 カリフォルニア競馬のコンサルタントであり長年競馬産業と政治についての知識でロビー活動を行っているノーム・タウン(Norm Towne)氏は、カリフォルニア州のパリミューチュエル賭事の総売上げは1990年には29億ドル(約2,900億円)であったが、2009年には19億ドル(約1,900億円)に減少した、すなわち、カリフォルニア州の人口は増加し現在3,750万人に達しているにもかかわらず競馬賭事売上げの3分の1が失われたと述べた。

 そして次のように続けた。「私たちは現在商業マーケットに足を踏み入れていません。私たちはこの現状から脱し、人々を惹きつけるためにマーケティングの専門家を探さなければなりません。付随的な収入を失えば、苦しむことになるでしょう」。

 タウン氏は、カリフォルニア州の先住民が運営するカジノに非常に多くのスロットマシンが設置されているので、競馬場がスロットマシン運営の承認を得るチャンスはほとんどないだろうと述べた。同氏は、競馬産業が住民投票を通してスロットマシンを得ようとしたが投票で敗北を喫した数年前に、“井戸は毒に汚染されて”スロットマシン運営は不可能になってしまったと語った。

 そして、「このことは先住民側に後味の悪いものを残しました。このため現在では先住民と良い関係を築くのが困難です」と付言した。

 残るもう1つの問題について、イスラエル氏とハーパー氏は、12月26日のサンタアニタ開催の開幕日から実施される控除率の引上げは回避することができない、また、この引上げを実施したとしてもカリフォルニアの控除率は他の大半の競馬が行われている州よりも低いと述べた。

 賭事客たちはインターネットで不満を表明し、カリフォルニア競馬のボイコットを呼びかけていたが、12月9日のパネルディスカッションには現れなかった。

 ハーパー氏は控除率の引上げに関して、「私たちの誰もこれを実施したくはなかったのです。これは物価上昇です。しかし、根っからの賭事客の圧倒的多数はそれを理解してくれていると思います。彼らは私たちと同じように競馬を理解しています」と語った。

 控除率引上げから創出される収入は、すべて下級条件競走の賞金に拠出される。サンタアニタ競馬場は、次回の開催の1日平均賞金額は42万5,000ドル(約4,250万円)であると発表している。競馬統轄機関の役員たちは、反発を受けることを認識しながらも、競走馬を惹きつけ、より多頭数の競走を作り出すのにより高額な賞金は必須であると述べた。

 サンタアニタ競馬場の人工馬場をダート馬場に戻した同競馬場オーナーのフランク・ストロナック(Frank Stronach)氏は、アルカディアにある同競馬場に厩舎を設置するつもりであると述べた。イスラエル氏は、ストロナック氏にこの約束を守らせるつもりであると述べた。

 将来のカリフォルニア競馬のスケジュールは流動的であるが、イスラエル氏は、同州すべての競馬場の5ヵ年計画を把握したいと述べた。一方ハーパー氏は、デルマー競馬場はその看板である夏開催を補完するために、春と秋に短期開催を施行する方向で修正可能であると述べた。
 

スリム化されて収益力のあるものになる?
チャーチルダウンズ社の会長兼CEOであるボブ・エヴァンス(Bob Evans)氏は、今後10年間で妥当な事業決定がなされるなら、サラブレッド競馬が2020年にはどのようなものになるかという見解を発表した。エヴァンス氏は、以下のことが現実のものになれば、競馬は“よりコンパクトで、健全で持続可能な事業となる”と述べた。
  2010 2020
パリミューチュエル賭事売上げ 138億ドル(13,800億円) 155億ドル(15,500億円)
年間総賞金額 10億ドル(1,000億円) 17億ドル(1,700億円)
年間競走数 56,000レース 31,000レース
年間開催日数 6,600 3,100
競 馬 場 数 55 26
1レース平均売上げ 23万ドル(2,300万円) 495,000ドル(4,950万円)
1レース平均賞金総額 22,000ドル(220万円) 55,000ドル(550万円)
年間延べ出走頭 74,000 56,000
1レース平均出走頭数 8.2 12


By Tom Lamarra
(1ドル=約100円)

[The Blood-Horse 2010年12月18日「Future Shock」]
 


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